周囲はまだまだの中で、早くも赤くなった桜の葉が一枚。
先週は雨の日が多かったが今週は曇り時々晴が続く。本来なら気温も手
ごろで外出向きだが、良き本に巡り合えてじっくりと読む。
木曜日の午後に昼食も抜いて一気に読み終えた。暫く他の本に目が向か
ないほどの感動を得た。その題名は「信長の原理」。2年ほど前に「室
町無頼」で本屋さん大賞を受賞した垣根涼介氏の作品。まだ3ヵ月余の
日数が残るが今年はこれを越す本には巡り合わないと思う。
若き信長、まだ父信秀が存命中のこと。よく知られているようにとんで
もない悪ガキだったころの話から始まる。終日蟻の行列を観察していて
ある習性に気が付く。
100匹の蟻の中でせっせと獲物の欠けらを巣に運び入れるのは優秀な20
匹、全くその使役を放棄した役だたつが20匹ほど、残りの60匹は餌を口
から離したり、立ち止まったり逆方向に進んでみたり余り使役に熱心で
ない。2:6:2という割合になることを確認した。この本を貫いている
テーマはどんな集団でもこの原則が当てはまるということ。最強の武士
団にしてもこの原理の下で動いている。天の摂理としか言いようがない。
神でも仏でもない。このことを著者自身が語っているので、参考にして
頂ければと思う。読み終わってから知ったが、この原則は何も信長だけ
が気付いたモノではなく、ビジネスの基本の一つであり、作者はこの法
則を信長に当てはめてみたという。
様々の説が飛び交う本能寺の変の真相。著者は史実に真正面から描く。
登場する信長を含めて配下の武将の心理描写がなる程と腑に落ちる。信
長に対する光秀の恐怖、屈辱の仕打ち。いずれわが身にも訪れるだろう
粛清の刃。信長が気付いた原理の下では優秀な頭の20であり続ける保
証はない。有岡城に籠城して信長に反旗を翻し、最後には無残にも一族
諸共成敗された荒木村重の悲劇は光秀の頭に深く刻み込まれていた。
この時代の本は数多く世に出ている。古くは山岡荘八、一躍国民的な人
気作家となり、私も著作の殆どを読んでいる司馬遼太郎。いずれの作品
をも抜く抜群の内容だった。作中に頻繁に出てくる松永弾正久秀の性格
が面白い。この武将についての本を探してみよう。
本を読んでいると隣家の80才前後の老女が引くピアノのメロディ~が
流れてきて少し昂った気持ちをほぐしてくれる。童謡や文部省唱歌が中
心の昔良く口ずさんだ素朴なものが多い。小学校の音楽の先生だった方
が弾いている。初心者がよく弾くショパンの下手な練習曲だったりする
と騒音と感じてしまうがこれなら歓迎。
♫ もしもピアノが弾けたなら・・ 西田敏行 歌
私のカラオケの持ち歌の一つ。