toboketaG の春夏秋冬 

雑文、雑感、懐古話そして少しだけ自己主張。
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256-280116小説「下山事件 暗殺者の夏」を読む

2016年01月16日 | 小説・映画・など

   陽だまりに野良猫2匹。

 

柴田哲孝著「下山事件 暗殺者の夏」を4日で読み切る。著者は念

入りにこれはフィクションと断っているが、これだけ実在した人や

団体を登場させたところを見ると、この事件が他殺であると信じて

ストーリーを作ったとしか考えられない。

 

随分前に松本清張の「日本の黒い霧」を読んで事件が実際にあった

ことは知っていた。この事件の起きた昭和24年夏には三鷹事件や

松川事件(起訴された被疑者は死刑判決を受けるも後には無罪もし

くは病死となる)が起こった。この年小生は小学校2年生。

 

暖冬でボタンの芽が動き出し、河津桜か、花芽も膨らむ。(28.1.14)

 

7月4日米国独立記念日を前にした国鉄は3万人上の首切りを発表

した。今では考えられない荒療治だが、米国占領下という特殊事情

のもとでは共産主義化に抵抗する橋頭保として日本を仕立てようと

した米国の意志には逆らえなかったのだろう。

日付が変わった翌未明、常磐線が荒川を渡り東武鉄道と交差する綾

瀬駅付近で初代国鉄総裁下山定則氏が無残な轢死体で発見された。

総裁は前日から所在が不明だった。大量の首切り指示で総裁は鬱状態

だったともいわれる。この原因が自殺か他殺かで大きな論争に発展し、

事件ははっきりしないまま時効を迎えて幕引となった。詳細はたくさ

んの著書が出ているので省く。

井野川に飛来するオシドリはつがいか?

 

松本清張、柴田哲孝両氏も断定はしていないが他殺説を前提で小説

を書いている。

下山総裁の個人的な性格、動機、時代背景や死体発見の前後の不可

解な人の動きや鑑定結果等で捜査関係者のほぼ全員が他殺と考えて

いたのにある政治的な思惑から自殺説に固まっていく過程がリアル

に描かれていた。捜査本部は上からの指示で事実との矛盾を感じな

がらも自殺として公式発表する。その後一部捜査は継続されるも次

第に手薄になり、新聞でもこの直後に起こった三鷹事件や松川事件

の報道に重点が移り、時間の経過とともに取り上げられる頻度も減

り、やがて時効とる。

井野川に沿って下るとあちこちに野鳥を見かける。これはモズ。

鳥類図鑑を見れば立派な写真が満載だが、自分で撮影した一枚は

大切にしたい。

 

警察においては、上部からの指示や方針が現場の捜査担当者の気持

ちなんぞ歯牙にもかけずに大手を振ってまかり通ることがあるよう

だ。考えようによっては凄い組織だ。横山秀夫著「64ロクヨン」

でも地方警察のそんな内情が描かれている。 小説と思いながらも

暗然とする。

それでも日夜治安の確保に励む交番や派出所のおまわりさん、微小

な事故でも駆けつけてくれるおまわりさんが警察の原点と思いたい。

終戦後の混乱の時代に政治的思惑から闇から闇に葬られた事件は他

にもあったのだろうと思わざるを得ないなと、深く考えさせられま

した。

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