庭の草むらから突如伸びてきて、見事な花をつけたユリ
そこそこには管理されているが、基本的にはいろいろの花木が生えるがままになっている我が家の庭。今月初
め辺りから一本のユリがそれらの中から頭角を現し始めた。そして一週間前辺りから花を付けるようになった。
そして見事な白ユリが老人二人の前に姿を見せた。夏に相応しい豪華にして清楚な咲きぶり。草取りをされて
いた前の家のご婦人が素晴らしいとほめてくれた。
梅雨明けと同時に当然ながら猛暑がやってきた。遠くに住む息子から冷房を使って熱中症にならんようにしろ
よとの彼なりに親を心配しての電話がかかってきた。金もかからない今のところ一番の親孝行だ。ついでに孫
の声でも聴かせてくれれば満点なのだが、そこまでは気が回らなかったようだ。しかしこの暑さの中、まった
く汗をかかない生活というのも、身体によろしくない。今この記事をあえて冷房を効かせてない部屋で書いて
いる。負け惜しみでなく流れる汗が気持ちよい。耐えられなくなったら隣の部屋に移動すれば、これまた快感
を感じる。
松岡圭祐著「8月15日に吹く風」という小説を読み終わった。昭和18年の夏本土をはるか離れたアリュー
シャン列島キスカ島に駐留する陸海軍合わせて5200名の将兵を救出する作戦の経緯を主題にした内容。こ
の直前隣のアッツ島では多数の将兵が米軍の猛攻撃で玉砕している。軍首脳は繰り返してはならない、救出だ
と命令を出す。米軍通訳として若き日のドナルド・キーン氏がリーンという名で登場する。
木村昌福という一見弱い感じの将軍が作戦の司令官に任命される。一般的には奇跡の全員救出とされているが、
そこには司令官とその部下の気象専門官による綿密な事前準備があった。濃霧に紛れて接近救出作戦が見事に
成功する。もちろん幸運もあったが蒙古襲来時のような予想もしない神風が吹いたわけではない。入念に天気
図を分析し、濃霧が5日間ほど続くと判断し決行された。
敗色濃厚になると銃剣突撃し、挙句の果て天皇陛下万歳と叫んで玉砕してしまう、米軍将兵には考えられぬ民
族と捉えれれていた。キーン氏はそれを否定した、我々と同じ知性を持った国民だと終戦間際に上層部に進言
していたという。8月15日を境にして抵抗から一転服従に変わったのも日本人の知性に現れだという。細か
な問題はあったが概ね占領政策が過激なものから穏やかなものになり、結果として今の平和なの日本に繋がっ
ているということも著者が主張したいことのようだ。暑いさ中に読む本としては最適な本だった。