ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ヒミズ』

2011-11-29 23:11:32 | 新作映画

----この映画、観る前からかなり期待していた映画だよね。
「うん。でも最初は違ったんだ。
このニュースに触れたのは
まだ、園子音監督の前作『恋の罪』
東電OL殺人事件をモチーフにしたと話題になっていた頃。
いまじゃや、“東電”のトの字も出ないけどね。
ところが次が青春映画っぽい題材。
なんか、『愛のむきだし』の後の『ちゃんと伝える 』みたいな気がしていたんだ。
ところが、それに前後して3.11が起こる。
その頃から、漏れ伝わってくるのは、
監督が発する『東日本大震災以降の日本は、不安定であることを前提に』とか
『現地に行って希望の力に負けた』などの言葉。
つまり、この映画は、撮影準備中に3.11が起こったことで
設定を“震災後の日本”に変更し、脚本を書き直しているんだ。
ぼくは、そのことにまず敬意を表する。
『僕たちはもはや『ブレードランナー』のようなSFの世界に住んでいる』
これはけだし名言。
その自覚を持つか否か?」

----日本に住む監督を試すリトマス紙ということかニャ。
「そう。これも監督の言葉を借りれば
『ぼくらは終りなき非日常に突入した』
この、3.11以前とはまったく違う空気を
どう映画に取り込むか?
それを最初にやったのが、園子温というところが興味深い」

----そこを詳しく…。
「だって、前作『恋の罪』を観たら、
この映画のラストがこんなことになるなんて
いったい誰が想像しただろう?
これまで、闇の引力を描いてきた監督だけに、
このラストは実に強烈」

----やはり、映画は続けて観なくては…ということかニャ?
「うん。一本で決めつけちゃいけない。
ぼくだって、この監督、
『自殺サークル』を観たときは、なんだこれ?って思っていたモノ。
『エクステ』あたりから、その評価は変わっていったんだけどね。
さて、ラストばかり言ってもしょうがない。
この映画の主人公・住田祐一(染谷将太)。
借金を作り蒸発した父、中年男と駆け落ちした母親という悲惨な状況の中、
彼の願いは“普通”の大人になること。
震災を経験した彼らを励まそうとする教師の
『君たちは世界でたった一つの花』という言葉も冷ややかに見ている。
その彼を慕うのが茶沢景子(二階堂ふみ)。
そして、将太の周りには震災で家をなくした人々が
掘立小屋の生活を送っている。
このビジュアルがまるでクストリッツア『黒猫・白猫』を思わせる。
そして川の中に沈みかかっている廃屋はどこかタルコフスキー。
これだけでも、映像は危うさををはらみ、
3.11との断絶を強く感じさせずにはおかない」

----そういえば、染谷将太と二階堂ふみって
ヴェネチア国際映画祭で最優秀新人賞をW 受賞したんだよね。
「そう、どんな演技かなと思ったら、なるほど納得?
『指輪をはめたい』では、
ただきれいな人として見つめる対象にすぎなかった
二階堂ふみが、ここまで血の通った役を演じるとは…?
さて、最後になったけど、
園子温、今回もオープニングが見せてくれる。
そしてそれに続く、震災の風景。
ここで使われる効果音が身震いモノ。
これは、“今も続いている恐怖”を
改めて教えてくれるきわめて挑発的な映画だね」







                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「これは本来なら今年公開されるべき映画なのニャ」ぱっちり

※この衝撃はいつまでも忘れられない度

コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

こちらは噂のtwitter。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー