ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ブラック・スワン』(アカデミー特集第三夜)

2011-02-26 22:38:32 | 新作映画
(英題:Black Swan)



----これは大興奮で帰ってきた映画だよね。
「うん。クライマックスなんて、もうただただ唖然。
ぼくなんて、こういう瞬間を味わいたいがために
映画を観ているようなものだから、
立ちあがってブラボーなんて
ガラにもないことをやりたかったくらい」

----あらあら。
まだ興奮冷めやらぬって感じだけど、
ほかの映画と、どこがどう違うの?
「簡単に言えば、
<画>と<音>で語ってくれているってこと。
物語自体は、そうたいしたものじゃないんだ。
――それは、チャイコフスキーの『白鳥の湖』のプリマをめぐってのお話。
ナタリー・ポートマン扮する主人公ニナ。
彼女は、元ダンサーの母親の寵愛の元、
人生のすべてをバレエに捧げていた。
彼女は、白鳥にふさわしい可憐なバレリーナ。
しかし、プリマの座を射止めるには、
魔性に染まった“黒鳥”にもなりきらねばならない。
芸術監督ルロイ(ヴァンサン・カッセル)から、
『君には、黒鳥を演じる激しい感情を表現できていない』との
手厳しい言葉を浴びせられ、落ち込むニナ。
そんな彼女の前に、エキゾチックな色気を発散するリリー()が現れる。
自分にはない官能的な魅力を備えたリリーに
嫉妬にも似た複雑な思いを抱くニナ。
やがて、彼女の前には不可解な出来事が次々と襲いかかる」

----不可解な出来事って?
「うん。それがこの映画の最大のポイント。
途中から、目の前で起こっていることが
現実なのか、はたまた彼女の妄想なのか、
すべて混濁して分からなくなってくる」

----そういう映画って、過去にも多いよ。
「いや。
この映画では、
そのニナの脳内混乱を観客にも同化させ、
眩暈にも似た高揚感を与えるんだ。
まるで強い劇薬でも注射されたかのように、
自分の感覚がおかしくなり、
いま見ているものに対して自信が持てなくなってしまう。
たとえば、ニナの母親。
彼女のあまりの娘への溺愛に、
観客は、それが事実かどうか疑いを抱いてしまう。
もっと言えば、その母親が存在しているのかどうかさえ分からなくなる。
彼女自体も妄想ではないかと…。
一例を出してみよう。
途中、ニナの家をリリーが訪ねるシーンがあるんだけど、
ここで、キャメラは、
もしかしてリリーの目には母親が見えていないのではないかというような
絶妙のアングルを選び取るんだ。
これは、すぐに解消はされるけどね。
この映画には、いわゆる、
こういったスリリングな、
というよりも危険な瞬間が
至るところに散りばめられている。
かくして、映画は虚実の間を浮遊しながら
驚愕のクライマックスへと突き進んでいく。
このなだれ込み方は、
監督ダーレン・アロノフスキーの傑作、
映画史上、(おそらく)もっとも観客を落ち込んだ気分にさせるた、
あの『レクイエム・フォー・ドリーム』を思い起こさせる」

----あれって、ドラッグ中毒にお散った人たちの悲惨な結末を、
これ以上、救いがない描き方をしていたよね。
「うん。ドラッグの体験がない自分でも、
うわあ、これはたまらないと…。
あれをアッパーと呼ぶのか、ダウナーと呼ぶのか知らないけど、
現実から、遠く離れたところへと連れて行かれた。
この映画は
いわば、メジャー版、エンターテイメント版の『レクイエム・フォー・ドリーム』
もし、彼の映画を『レスラー』でしか観ていなかったとしたら、
かなり戸惑うことは間違いないだろうね。
描写もリアル。目を開けられないほど痛覚を刺激するシーンもあるし」

----ツイッターでは、
『ファントム・オブ・パラダイス』
『オーケストラ!』を引き合いに出していたよね。
その二本って、まったく違う感じだけど…。
「確かに。
でも、共通点がないでもないんだ。
両作品とも、クライマックスは劇場。
さらには、チャイコフスキーの音楽とともに、
ドラマが最高潮に達してゆく。
ただ、本作がそれら二作と違うのは、
その重要なクライマックスを、
ナタリー・ポートマンひとりの演技に負わせているところ。
そのシーンを観た観客だれしも思うこと、
それは『パーフェクト』の一言。
そして、それを見透かしたかのように
この映画は、“あること”を用意するんだ。
そのとき、ぼくら観客は、
ダーレン・アロノフスキーという魔術師の手の上で
自分たちも踊らされていたことに気づく。
いやあ、まさしくこれぞ映画。
ゾクゾクする瞬間がエンディングには待ち構えているよ」




                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「アカデミー賞一押しなのニャ」身を乗り出す


※『ファントム・オブ・パラダイス』にもスワンが出てきた度

コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

こちらは噂のtwitter。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー

画像はオフィシャル(壁紙ダウンロードサイト)より。