ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『牛の鈴音』

2009-12-13 14:59:16 | 新作映画
(英題:Old Partner)

ときどき、フォーン相手には喋りにくい映画というものに出くわすことがある。
テーマが真摯すぎてという『ユナイテッド93』は、その代表的な例。
そしてもうひとつが『いぬのえいが』のように、動物との関係を描いた作品だ。
それが「命」を軸にした「別れ」の映画となると、なおさらのこと。
観ることさえも躊躇してしまう。
ところが、この『牛の鈴音』なる韓国の作品。
あまりにもその評判が高い。
「2009年1月15日にアート作品専門の7館で封切られると、
口コミによって観客が押しかけ、またたく間に全国150館に拡大。
公開7週目、8週目には大手メジャー作品を抑えて
2週連続興行成績ベスト1を獲得した」(プレスより)という。
普通は15年しか生きない牛が40年も生きた。
しかも農業を営むおじいさんと30年間も一緒に働いてきた。
映画は、その牛の最期の日々をおじいさんの視点から描いたドキュメンタリーだ。
そう、聞けば、やはり観るのがためらわれるところ。
ところがこの映画、
いわゆるヒューマンな感動ドキュメンタリーに終わらせてはいない。
おじいさんは、60年以上連れ添ってきた口うるさいおばあさんの
「耕作機械や農薬を使おう」という言葉にまったく耳を貸さない。
農薬を使うと、牛に「毒」の草を食べさせることになるからだ。
韓国では地方行政あげて有機農業(親環境農業)に取り組んでいると聞く。
だが、ここでは昔から、
無農薬を理屈ではなく自明の理として実行しているおじいさんの姿が描かれる。
「自分の大切なパートナーに毒を与えられるか…。」
その基本から、農業を、いや暮らしそのものを見直せば、
自然と、人はどう生きるべきか、その答が出てくる。
これは、その答を大上段にではなく
静かに教えてくれる、つつましくも力強い映画だ。
牛と一緒に歩くおじいさん。
ふたりの脚が揃うカットも泣ける。
首に付けた鈴の音は、生きているあかし。
それが止むとき、牛の命もとだえる。
牛と一緒に30年間聞き続けたおじいさんは、
その鈴の音をまだまだずっと聞いていたかったのだ。


                   (byえい)

※不平不満がつきないお婆さんなど、けっこうユーモアもある度

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