ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『地下鉄(メトロ)に乗って』

2006-08-05 12:44:15 | 新作映画
----これって浅田次郎の小説の映画化なんでしょ?
「うん。でもぼくなんかは『地下鉄に乗って』というと、
すぐ70年代のフォークグループを思い出すんだけどね」

----なんていうグループなの?
「『猫』」
----嘘でしょ(笑)。
「いや、ほんとうの話。
以前、『ホテル・ルワンダ』について書いたとき、
元メンバーの方から書き込みをいただいて、
感動したことも……。
話はそれたけど、
この映画はその歌『地下鉄に乗って』の歌詞にも出てくる
赤坂見附(厳密に言うと半蔵門線の永田町)から始まる。
主人公は営業マンの長谷部真次(堤真一)。
電車が止まったことから長い地下道を銀座線のホームまで歩く途中、
彼は前方に、少年時代の兄の姿を見る。
あわてて追いかけて階段を上ると、
そこはなぜか丸ノ内線・新中野の駅。
しかも、オリンピック開催に沸きたつ昭和39年。
それも兄を亡くした運命の日だった。
初めは事態がよく飲み込めなかった真次だったが、
兄を捜し出してその命を救おうとする」

----ニャるほどね。これはオモシロそうだ。
でも、どうやって救うの?
「その日、彼の兄は、
威圧的な父(大沢たかお)とケンカして家を飛び出し、
交通事故に遭っている。
そこで絶対に家を出ないように諭すんだ」

----でもそれじゃ、歴史が変わっちゃうよね。
「うん。ここまでは喋っていいと思うんだけど、
現代に戻ってきた真次は結局、
兄の命を救えなかったことを知る。
ところが、それ以降も彼はたびたびタイムスリップしてしまう。
時代はさらに遡り、戦後の闇市へ。
しかもなぜかそこには
会社の同僚で愛人関係にある軽部みち子(岡本綾)も現れる」

----そうか、ふたりとも同じ体験をしたわけだから
これは<夢落ち>ではないわけだよね。
「うん。物語のメインは、
真次がさらに地下鉄で出征する若き日の父や、
戦場で人を助ける兵士の父と出会うことで、
彼への認識を改めていくと言う形で発展してゆく」

----浅田次郎らしいと言えばらしい話だけど、
あまりにもオーソドックスな気がするけど…。
「浅田次郎の小説って
たとえば短編集の『鉄道員(ぽっぽや)』がそうだけど、
読み進むうちに思いもよらぬ展開が待ち受けていて、
それが読者の感情を強く揺さぶる。
しかも、その新展開、新事実は
必ずと言っていいほど右ページに配置されていて
前もって読む人の視野に入らないように工夫されている(と思う)。
この物語も、
もちろんこのまま終わるわけではなく、
『これぞ浅田次郎』と言いたくなるとんでもない展開が
初めて明らかになる事実とセットで待ち受けている。
そしてそこで生じたある<問題>は
<過去の改変によって現実を変える>と言う、
タイムスリップならではの手法によって解決されるんだ」

----ニャに言っているのか、よく分からないニャあ。
「うん。あまり話すとネタバレになってくるからね。
このことについてははこれ以上は知らない方がいいと思う」

----でもストーリーばかり話しているよ。
映画としてはどうだったの?
「う~ん。この手の話で2時間越えは少し長すぎる。
それと昭和のイメージ作りが少し安直な気もした。
チンドン屋だとか、スマートボールとかね。
もちろん、こっちの目が
あの時代を描く映画に慣れてきたせいもあるかも知れないけど…。
あっ、子供たちがアーガイルやノルディック風のセーターを着ているのは、
なんだか懐かしかったけどね。
あと、よかったのは地下鉄がカーブに沿って駅に入ってくるシーン。
真っ暗な線路にライトの光が走り照らし出すその映像はとても美しい。
それと、この映画で思い出したのが
今は亡きクリストファー・リーブ」

----えっ、なぜ?
「想念で過去へタイムスリップする傑作ラブストーリー『ある日どこかで』。
これは観ていないと一生の損だよ」

                                          (byえいwithフォーン)

ある日どこかで UNPD-25584ある日どこかで UNPD-25584
※画像がないのが残念。ほんとうに素敵な映画です。

※ニャるほどこういうお話だったのね度
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