ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『サラバンド』

2006-08-03 00:21:24 | 新作映画
※注意。※映画の核に触れる部分もあります。

「いやあ。驚いたね。
まさか21世紀になって
イングマール・ベルイマンの新作が観られるとは思わなかった」

----誰よ、そのベルイマンって人?
「スウェーデンのフォール島に住む巨匠中の巨匠。
かのゴダールをして
『誰よりもオリジナリティがある作家』と
言わしめているんだから、
その偉大さは推して量るべしだ
もう88歳になるベルイマンだけど、
この映画は彼が84歳のときに
しかもHDマスターで撮った作品。
82年の『ファニーとアレクサンデル』を撮り終えて
引退宣言をしていただけに約20年ぶりということになる」

----ふうん。それでこれはどういう映画ニャの??
「81年に発表した『ある結婚の風景』の後日談となっている。
簡単に言えば、そこで離婚した夫婦が30年ぶりに再会すると言う話。
全体はプロローグとエピローグ、
そしてそれに挟まれた10章から成り立っている。
オモシロいのは、
その10章すべてが、いずれも登場人物ふたりだけという会話劇スタイル。
リヴ・ウルマン演じるマリアンとエルランド・ヨセフソンの元夫ヨハン。
そしてヨハンの息子ヘンリックと、ヘンリックの娘カーリンの4人が、
それぞれふたりずつペアとなって、
話が進んでゆく」

----で、どうだったの?映画としては?
「いやいや、これはぼくなんかが
レビューをするのはおこがましい作品。
そこで見どころだけ紹介しておこうと思う。
30年ぶりに会う元夫婦。
夫のたび重なる不倫と言う、
過去のわだかまりも溶けて
年輪を重ねた老人の穏やかな日々が綴られる……
と思いきや、『決定的瞬間』と題された第9章で
元夫の傲慢さが爆発。
そしてそれを受けた形で
感動の第10章『夜明け前』が立ち上がる」

---どういうこと??
「それでは久々に※ネタバレ注。
言いようのない不安にブルブル震える元夫を、
元妻がやさしくベッドに迎え入れる。
しかもふたりとも真っ裸だ」

---えっ、ふたりとも老人だよね??
「ヨハンは80歳を超え、マリアンもすでに63歳。
このときの映像処理の巧みさ。
日本映画『死に花』で描かれた
老齢のセックスシーンの生々しさとは大違いだ」

----それは比較しちゃ悪いよ(笑)。
でも、それって男はダメ人間ということなのかニャ。
なんとなく底に女性へのリスペクトがあるように見えるけど……。
「そうなんだね。
亡くなった妻のことを思い出し、
娘カーリンもいなくなるのではと言う不安に駆られ、
その娘に情けなく自分の心情を吐露するヘンリック、
そして、そのヘンリックが50年前に自分にした仕打ちを
いまだに根に持つ父ヨハンと、
この映画に出てくる男たちはいずれも醜い。
それに比較して女性たちの何と魅力的なことか。
ベルイマンの映画を評して批評家時代のトリュフォーはこう言っている。
『ベルイマンの映画は、まさしく、女性に捧げられた映画だ。
ベルイマンの映画の女たちは、
男の視点から一方的に見られた存在ではなく、
ベルイマンと女たちの完璧な共謀となれあいのなかで
とらえられたイメージなのである。
男の人物たちが型にはまったキャラクターばかりなのに対して、
女たちが無限のニュアンスに彩られていきいきとしているのも、
そのためだ』と。けだし名言だね」


                                           (byえいwithフォーン)

叫びとささやき BBBF-1996叫びとささやき BBBF-1996
※ベルイマンではこの映画が好きでした。

※21世紀のベルイマンだ度
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