米澤穂信著"追想五断章"を読みました。
菅生芳光は父親が死んで家は破産しお金がなくなり
大学を休学しています。
古本屋をやっている叔父の家に住まわせてもらい店を
手伝っています。
叔父も仕事にやる気を失っています。
亡くなった大学教授の家から大量に本を引き取ってきます。
松本から北里可南子という女性が教授の本の中に叶黒白
という作家が書いた小説が載っている同人誌があるはず
だから探して欲しいと依頼されます。
本は見つかりました。
可南子は黒白が最近亡くなった父親だと打ち明けます。
黒白が書いた小説は5つで全部リドルストーリだと
いいます。
リドルストーリーというのは結末が書かれていない
小説だそうです。
可南子は1冊につき10万円払うから残りを探して
欲しいと依頼してきます。
芳光は学校に戻る資金になると叔父に内緒にしてもらい
仕事を引き受けます。
可南子の父の北里参吾は裕福な家に生まれ働かなくても
お金を使える人でした。
斗満子と結婚しました。
彼女は男を手玉に取るといわれる女性でした。
結婚して二人はスイスで暮らし娘が生まれました。
娘が四つの時にベルギーに旅行に出かけました。
そのホテルで斗満子は首を吊って死にました。
参吾がピストルを発射しており一時警察に呼ばれました。
しかし自殺として処理されました。
ピストルを撃ったのは縄代わりにしたシーツを切るため
と説明しました。
日本に帰ってきて参吾はマスコミの心無い付回しや
記事に傷つけられました。
松本に住んで仕事に就きその後は地域に溶け込む努力を
して普通に暮らしてきました。
可南子の元に5つの結末が残されています。
黒白の友人からたどって1冊は手に入れます。
もう1冊は可南子が出した手紙の返事が来て父の知り合いが
持っていました。
もう1冊は偶然聞いた話から手にすることが出来ました。
答えにはどの物語に対する答えなのか書いてありました。
芳光はわざと答えが入れ替えてあるのではないかと可南子に
言います。
可南子が求めているものは母が死んだ時の真実が5冊の
本に書かれているのではないかというものでした。
リドルストーリーの答えは二つ。
どう考えるかです。
可南子はこうだったんだろうという真実を見つけます。
可南子はその時4歳です。おぼろげに覚えている年齢です。
最後の1冊は亡くなった病院の看護師さんが捨ててくれ
といわれて渡されたと、捨てずにもっていました。
本を探していく過程はこうやって追いかけていくのかと
おもしろいです。
しかし芳光は大学へ戻るのをあきらめてしまいます。
叔父は店を閉めようとしています。
なんか気力のない雰囲気が漂います。
芳光はこんな感じで一生を送っていくのではないかと
感じてしまいます。
なぜ可南子の父は本のあることがわかるようにして
おいたのでしょう。
すべてきれいに片付けておけばよさそうなものです。
それよりも前になぜこんなものを書いたのだろうと
思います。
疑われたことにどうしようもない怒りを文章に
向けたということでしょうか。
なぜばらばらに知人にくばったのでしょう。
父親としてどうにも理解できないことする人だなぁと
いう気がしてしまいます。
真実を明かさないと硬く決心したのなら世間が何を
言おうが心静かに生きていけるものじゃないかと
思うのです。
この父親を好きにはなれません。
まだ真実をしっかり娘に話して聞かせてやった方が
よかったのではと感じてしまいます。