北森鴻著"闇色のソプラノ"を読みました。
ねたばれあります。
遠誉野市の大学生の桂城真夜子は卒論のテーマに夭折
した童謡詩作家の樹来たか子の研究を選びました。
たか子は世間にほとんど知られていない人です。
真夜子は付き合っている男性が持っていた同人誌で
たか子を知りました。
たか子は幼い息子の静弥と山口に住んでいました。
夫の重二郎とは別居していました。
重二郎は別の場所で女性と暮らし子供もいます。
夫が離婚と静弥の親権を要求し、たか子に会いに来ると
いう夜にたか子はナイフで突いて自殺しました。
重二郎はその後行方不明です。
真夜子は図書館で郷土史研究家の殿村三味と知り合います。
二人がたか子について話しているのを聞いていた弓沢征吾
とも知り合います。
彼らもたか子に興味を持ち調査に加わります。
弓沢は病気でもう長くは生きられません。
たか子の息子の静弥は遠誉野市に住んで美術教師をしています。
偶然に真夜子は静弥のことを知ります。
静弥は腫瘍摘出の手術を受けてその後の栄養補給で
ビタミンBの摂取不足からウェルニッケ脳症になりました。
昔のことは記憶にありますが最近のことは記憶できなく
なっています。
静弥の主治医は櫟心太郎です。
櫟は静弥とつながりがあります。
たか子が亡くなった時に山口にいてたか子が重二郎に殺された
のだと推理してみせた人物です。
親類の者はそれを信じましたが表向きは自殺ということに
しました。
同じ病院の医師の美崎早音は静弥の恋人です。
危篤状態の弓沢が病院を抜け出して殺されているのが
見つかります。
刑事の州内一馬が捜査にあたります。
州内はたか子の同人誌を持っていた真夜子の男友達です。
静弥の友達が轢き逃げされました。
彼はラジオ番組に雨の日に山にドライブに行った時のことを
投書していました。
もう一人女性が行方不明となっています。
たか子が書いた詩の中にしゃぼろんとい擬音が書かれています。
この音がなんなのか真夜子や弓沢は気にしていました。
やがて犯人は姿を現しました。
櫟と美崎の二人が命を落としました。
現代に起きた事件は解決しました。
遠村は山口に行ったままずっと帰ってきません。
真夜子は山口に出かけていきます。
たか子が住んでいた家は壊されています。
庭があった所に水琴窟があったといいます。
庭に集まった人々は水琴窟のあった場所を掘ります。
出てきたのは白骨です。
たか子が殺した重二郎です。
たか子はやはり自殺だったのです。
州内が「お父さん」と呼びかけます。
この場面で終わっています。
えっ、州内が静弥なの、そんなはずはない、静弥は本物の
静弥のはず、州内はいったい誰?と頭が混乱しました。
静弥の兄弟?兄弟がいたとは書かれていなかったはずです。
しばらくして、あっそうだ重二郎にはもう一人子供が
いたんだった、州内はその子なんだとやっと気づきました。
州内が同人誌を持っていたわけもわかりました。
5人もの人が死んでいます。
真夜子が卒論に樹来たか子を選ばなければ事件は起き
ませんでした。
とはいっても真夜子が悪いわけではありません。
記憶違いや間違った愛情が引き起こした事件です。
州内と真夜子は結婚するつもりでいますが州内が
隠していた秘密はどう影響するのでしょうね。
過去の事件が現代に影響を及ぼした事件でおもしろ
かったです。
北森さんの本は好きです。
この本は名古屋市内の全図書館で1冊しかなくそれも
書庫に保存されています。
読まれてないんですね。