大福 りす の 隠れ家

小説を書いたり 気になったことなど を書いています。
お暇な時にお寄りください。

みち  ~未知~  第47回

2013年11月12日 22時23分09秒 | 小説
『みち』 目次

第 1回第 2回第 3回第 4回第 5回第 6回第 7回第 8回第 9回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回



                                             



『みち』 ~未知~  第47回



テレビに映し出されたのは海外であった。 特に決まった番組を見るという事がない琴音。 この番組のタイトルも知らない。

「あら、ここは何処の国なのかしら?」 暫く見ているとようやく番組の趣旨が分かったようで 世界のあちこちを旅行している番組だったのだ。 そしてそこで知り合う人々とのふれあいをテーマにしているようだ。
珍しくテレビに見入る琴音。

「こうして見るといろんな国があるのねぇ。 文化も風景も建物も何もかもこんなに違うものなのね」 今更のように感じた。

そして番組はブータン王国へ入っていった。

「あら? ブータンって中国がお隣なのに殆ど日本と同じ着物じゃない。 中国の昔の服より日本の着物と似てるってどうしてなのかしら? それに顔も日本人にすごく似てるわ」 番組はブータンの人々に質問をし始めたがそれを聞いて

「ええ? 全部聞き取れるじゃない。 まるでカタカナで話しているみたい」 テレビの向こうではブータンの人々も日本語を真似ていたが 発音がしやすいのか聞き取りやすいのか、他の国の人ではありえないほど1度聞いて聞き返すことなく ワンセンテンスを真似て返してきていた。

「日本人の先祖とブータン王国の人の先祖は同じなのかしら? 日本に渡ってきたのはブータン王国の祖先? じゃあ、ブータン王国の祖先は何処から来たのかしら? えっと確かブータン王国はチベット仏教だったわよね」 またキリのないことを考え出したようだけど、もう縄文人じゃなくていいんだね。


数日たったある日 目覚ましより先に目が覚めたがまだ頭がスッキリと覚めたわけではなかった。 目を開けることもなくただ意識がほんの少し起きていたという状態だ。 すると自分の違和感に気付いた。

「身体が揺れてる?」 琴音の身体の中で もう一つの体が左右に揺れている感覚。 左右に10センチくらい。

「気のせいよね」 まだ揺れている。

目をパッと開け上半身を起こした。 揺れが止まった。

「今のは何だったの?」 あと少しだったんだけどね。 

「地震?」 あ、そうくるわけ。

「テレビで速報やってるかしら?」 起き上がりテレビを見ながら朝食の用意をしだした。

「何も言わないわね」 そりゃそうだよ。

「先に顔を洗おうっと」 テレビのボリュームを大きくし洗面所に向かった。
結局速報は流れなかった。 だって琴音だけの事だったんだからね。


会社では 前年度の資料を見ながらの決算業務であったが すぐに業務の意味を理解できたようで難なく進めていくことができた。

「年始業務の時は頭を抱えたけど今度は大丈夫そうだわ。 やった事がない伝票処理もあるけど難しく考えなくてもいいみたいだから とにかく資料を準備して税理士の先生に渡せばそれでいいだけね」 決算というのは難しいだけに税理士に丸投げ状態のようだ。

3月期決算というのは3月中に終わらせる現場とは違い 事務は4月から始まる。

「さ、初めての伝票処理をしなくっちゃ」 間違えないようにね。


決算処理を始めて半月ほどした頃。

縄文人のことがきっかけで今度は歴史、それも古代史を読み始めていた琴音。 
仕事から帰り夕飯を食べ風呂も済ませコーヒーを片手に本を読んでいると電話が鳴った。

「誰かしら?」 時計を見ると夜の11時前だ。

「もしもし?」 すると実家の母親からであった。

「お母さん、どうしたのこんな時間に! どこか具合でも悪いの!?」

「私は何ともないんだけど」

「じゃあ、お父さんなの!?」 驚いて聞いた。

「違う、違う。 お父さんも元気よ」

「ビックリさせないでよ」 早合点したのは琴音だろう。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« みち  ~未知~  第46回 | トップ | みち  ~未知~  第48回 »
最新の画像もっと見る

小説」カテゴリの最新記事