大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第36回

2013年10月05日 09時54分57秒 | 小説
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『みち』 ~未知~  第36回



初出勤は2日後だ。

実家に帰る前に図書館で借りてはいたものの実家には持って帰っていなかった数冊の本を何気なく見ていると

「あら? こんな本借りたかしら?」 神社の紹介が載っている本だ。 パラパラとめくると

「ああ、仏像が綺麗だったから目の保養に借りたんだったわ。 ほんとに綺麗だわ。 わ~この仏像なんて凛としているのかしら」 何枚かめくっていくとふと目に留まった神社があった。

「乙訓寺? 空海がほんの少しの間だけど居たお寺よね。 早良親王が桓武天皇に幽閉されたお寺でもあったわよね」 伊達に本を読み漁ったわけではなかったようだ。

「あ、それに確か文香が乙訓って事言ってたわよね。 このお寺でよく遊んでいたのね」 合ってはいるが間違ってもいるよ。

文香は乙訓の地で育ち 向日神社でよく遊んでいたと言っていたのだよ。 でもその勘違いが大切な始まりなんだよ。 琴音の記憶力のアバウトさがこんな所で役に立つとはね。

写真を見ながら書かれている文章を読んでいった。

「京都か・・・そんなに遠いわけじゃないわよね。 明日行ってみようかしら」 やっと腰が上がったようだね。

地図で道を確認し、充分迷わずに行けると踏んだ琴音は明日に備えて早めに眠りについた。
翌日、車のナビを合わせて 出発したのだが暫くすると

「あら? 私どうしてわざわざ車を出してまでここへ行こうとしてるのかしら? それにお寺なんて私の辞書に無いじゃない。 それでなくても初出勤の日は初めての年始業務があるから そのために1日ゆっくりする日を設けたって言うのに何をやってるのかしら 自分が分からなくなりそう」 何をブツブツ言っても高速に乗ってしまったらUターンなんて出来ないのだから行くしかないであろう。

高速を走り目的のインターで降りそのままナビに従って進んでいったが ナビは「目的地周辺です」 と言うが神社など見当たらない。

「どこなの? お寺なんて無いじゃない。 もっとキチンと地図を見てくれば良かったわ」 自分の運転で行けるかどうかだけの確認をしただけで寺の場所をキチンと見なかったのだ。 広い道路だ。 車を端に止め道行く人に聞いてみると

「乙訓寺? 知らへんなぁ。 でもあの先の道を行くと沢山お寺や神社があるからそこ辺りやないかなぁ」

「そうですか 有難うございます」 言われた道を進んでいくがそれらしきものは無い。

今度は道が狭い。 車に乗ったまま窓越しにもう一度歩いている人に聞いてみると

「もっと先に行けば沢山お寺や神社がありますよ」 ナビが示した所からどんどん離れて行くが

「地元の人が一番よく知っているんだものね。 それにこのナビ古いからなぁ。 あんまり役に立たないからもう切っておこう」 ナビを切った琴音であったが いくらナビが古くてもお寺や神社の場所はそうそう変わらないよ。

そして 歩いている人を見かけもう一度窓越しに聞いてみると

「乙訓寺ですか・・・知らへんなぁ。 この先をもっと行くと善峯さんがありますから そちらで聞かれたらどうですか?」

「よしみねさん?」

「善峯寺です。 大きなお寺やから知ってはるのと違うやろか」

「あ・・・確か本に書いてあったわ・・・有難うございます。 行ってみます」 そうは言ったものの ゆっくりと進んでいったが言われる道を走っていくとどんどんと山に入っていく。

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