大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第13回

2013年07月11日 16時31分59秒 | 小説
『みち』 目次

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『みち』 ~未知~  第13回



「この時間じゃ みんな忙しいわよね」 琴音の友達といっても 会社勤めの友達は仕事中であろうし 主婦は家事の忙しい時間であろう。

パタンと携帯を閉じ ボォっとしたときに思い出した『ご縁』 と言う言葉。

「ご縁・・・か。 そうよね、よく『ご縁』 って言う時は結婚相手の時に使うけど それだけじゃないわよね。 ・・・私はどんな人とご縁があるのかしら どんな事とご縁があるのかしら 考えただけで嬉しくなってきちゃうわ」 コーヒーを一口飲み

「ふふふ こんなこと考えたことも無かったわ。 そうよね今までどちらかと言うと ネガティブな方に考えていたわよね。 そう言えば ネガティブっていうことすら自覚してなかったわ。 ふふふ 何がこんなに嬉しいのかしら」 そうなのだ。 琴音は今までに何度も <どうして自分が生きているのか> <自分は何をしたいのか、何をすれば良いのか> そんなことを考えていたが それは自分を責めるように考えていたのだ。 

琴音の肉体の力が抜けた脱力感からか そのまま机に顔を伏せ寝てしまった。

気付くともう昼の3時になっていた。

「わ! 寝ちゃってた」 そう思っても 何かを特別しなければいけないわけじゃない。

テレビを点け 冷めてしまったコーヒーを入れなおし ワイドショーを見ていると

「どうしてこんなに悲しいニュースばかりなのかしら」 チャンネルを変えるが 何処も同じようなものだ。

親殺し、子殺し、保険金目当ての殺人、無差別殺人 今の世の中はいったいどうなっているのだ。 琴音は嫌気が差し テレビを消しコーヒーを持ってベランダに出た。 暑さでムッとする空気だ。

今までの琴音であれば そのままテレビを見ていたのだ。 <へぇー、そんな理由で> <そういう問題があったの> などと言う感想を持ちながら。 それが一転したのだが そのことに琴音は全く気付いていない。

ベランダからはずっと向こうに大木が見える。

「今日はよく見えるわ」 琴音の見えるというのは 大木が見えるということではない。 

琴音は小さい頃から山や木を見ると その周りに白いものが見えたのだ。 小学生の頃、図画の時間に写生の授業で校舎の屋上に上がり そこから見える風景を描くという事があった。 

目の前には山がある。 勿論みんな山を描くのだが その時に琴音は気付いた。

「みんなどうして 白いのを描かないの?」 琴音の描いた山の周りにもう既に白く塗ってあったそれを 慌てて上から塗り潰して提出したのだが 琴音の中で<これは人に言うことじゃない> と小学生ながらに思ったのである。

だが琴音、今日は何故そんなに白いものがよく見えるのか よく考えてみるといい。

丁度、汗がジメっと出はじめた頃に 家の電話が鳴った。

「こんな時間に誰かしら? 携帯にかかってこないってことは 暦かしら?」 電話に出ると 悠森製作所からであった。 

「先ほどはお疲れ様でした」 社長の声である。

「こちらこそ有難うございました」 1週間後の返事と聞いていたので 琴音は何が何か分からなくなっていた。

「1週間後の返事と言っていたんですが・・・」 言いづらそうにしている。

「はい」 駄目だったのかと諦めかけた時

「もう 来て頂くという事で 早速来週から来てもらえないでしょうか?」 思いもよらない言葉であった。

「え?」

「駄目ですか?」

「いえ、そんなことはありません。 こちらこそ宜しくお願いいたします」

「ああ、良かった。 それじゃあ 来週月曜日から 8時30分が出社時間ですから」

「はい。 8時30分ですね」 忘れないようすぐにメモを取った。

そうして電話を切ったのだが 1週間後がどうして昨日の今日どころか 今日の今日になったのか 狐にでもつままれたような顔をしている。

「何? どうして1週間後が今日なの?」 そんな疑問を持ちながらも 心の中はワクワクしている。


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