大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第19回

2013年08月02日 14時37分36秒 | 小説
『みち』 目次

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『みち』 ~未知~  第19回



「社長は知らないんだけどね そのとき既に会長の知り合いの話があったのよ」

「辞めたって言う人のですか?」

「そう。 会長にしてみればハローワークからの紹介で断る理由が無いじゃない。 どうやって断る理由をつけようか考えていたみたいなのよ。 だから私のあの言葉が会長にしてみれば 助け舟になったようなものなの」

「はぁー そうだったんですか。 でもその人、気の毒ですね あ、ここの話だけじゃなくて 生活してても色んな所で言われたりするんじゃないかしら」

「多分言われていると思うわよ」

「人間の運命って怖いですね。 そんなことで変わっちゃうんですね」

「そう思うと 織倉さんはナイスタイミングよ もし織倉さんが一人目の人のタイミングだったら 織倉さんも会長に難癖付けられて 断られていたかもしれないわよ」

「そうですか・・・」

「そうよ 会長にしてみれば 知り合いにいい顔をしたかったから 何としてでも誰が来ても難癖つけて断るつもりでいたのよ」

「それじゃあ、ハローワークの方に ストップをかければよかったんじゃないんですか?」

「それがね、難しい所なのよ。 会長は社長にあまり頭が上がらないのね。 それが社長の決断でハローワークに申し込んだものから 会長としては 自分が人を連れて来るって露骨に言えないのよ」

「へぇーそうなんですか。 社長は会長を立ててる感じがするんですけど」

「勿論よ。 でもあまり会長は社長のすることに反対出来ないみたい。 多分社長って頭が切れるから 何かを言っても負けちゃうみたいに思ってるのかしらね」

「頭良さそうですよね」

「織倉さんはタイミングが良かったわよ。 ハローワークの人を断って 1週間で会長ご推薦の前の人が辞めて それからなかなかハローワークから連絡が来なかったのよ。 だから社長が焦りだして ハローワークにどうなっているのか問い合わせるように言われたのね。 その問い合わせの後すぐに織倉さんが来たんだから 断る理由も無いわけ」

「問い合わせのあとですか?」 

「そうよ、本当にキチンと急ぎの募集をかけていてくれるのか聞いたら すぐに貼り紙を出しますって言って貼り紙を出してくれたみたいなのよ」

(ああ、あのタイミング・・・) ハローワークでのことを思い出した。 

だがそれだけではないよ。 もし早くから悠森製作所に面接を受けていても 会長に難癖をつけられて 琴音は断られていたんだから 琴音が断ったあの会社、あの会社の面接の時が 前に辞めた人が悠森製作所に来ていたんだよ。 あの会社に行って 暫く日を置いたことが 今日に繋がっているんだよ。 でもそれは琴音の知るところではないな。 

「私、その貼り紙を見て来たんです」

「あら! そうなの? 言ってみるものね」 そう言って微笑む森川の笑窪がとても可愛く思えた。

「そうだ思い出したわ。 織倉さん急に社長から電話があったでしょ。 採用って」

「はい。 1週間後って聞いてたんですけど 面接の日に電話がありました」

「それね、私が社長に言ったの」

「森川さんがですか?」

「そうなのよ。 織倉さんが帰ってから 社長と会長が採用しようって話をしてたのね これで織倉さんは採用決定なわけでしょ?」

「はい」

「だから会長が事務所を出て行ってから 社長に聞いたの。 いつ採用の返事するんですか? って」

「はい」

「そしたら1週間後って言うもんだから 1週間も連絡をしなかったら他の所へ行っちゃいますよ って言ったのよ」

「待ってるつもりではいましたが どうなっていたかは分かりませんよね」

「そうでしょ? そしたら社長がそれは困る。 って言ったから じゃあ、今すぐ連絡をしたらどうですか? って言ったのね そしたら何て言ったと思う?」

「うーん、何でしょうか?」

「すぐに電話をするのはこっちが恥ずかしいじゃないか3時ごろに電話をします。 だって。 何が恥ずかしいんでしょうね ふふふ」 また可愛い笑窪を見せて笑った。

琴音がここに来るには 森川のサポートがあってのことだが 琴音は全く気付いていない。 勿論森川もだ。

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