大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第7回

2013年06月21日 14時20分58秒 | 小説
『みち』 ~未知~  第7回



「元気って・・・まぁ、確かに笑いそうにはなったけど 40歳なんておめでたくないじゃない」

「何歳になっても 誕生日は祝うものなの! 40年前産んでくれたおじさんやおばさんに感謝しなさいよ」 

暦の言うとおりである。 その時悲しくても辛くても苦しくても 産まれてからそれまでに嬉しい事が数え切れないほどあったはずだ。 
目が見える喜び 人の声が聞ける喜び 美味しいものも食べただろう、その口があったからだ、その手が口に運んでくれたからだ。 嬉しい話を聞かせて貰った、愚痴を聞いてもらった。 それはその人が居てくれたからその人と話す事もできたんだ。 その人にも感謝が出来るだろう。 
そんな自分が産まれ出た日だ。 誕生日は産んでくれた両親に感謝をする日である。

「暦の言う事が分からなくもないけど 就職で40ってキツイわよ」

「ま、それはそうね」

「でしょ?」

「どう、いい所ありそうなの?」

「あったらこんなに落ち込んでないわよ」

「やっぱり難しいんだぁ」

「暦はどうしてるの? パートに行くかも とかって言ってたけど どこかに行ってるの?」

「それがね 行ってないの」

「旦那さんのお給料でやっていけてるんだ」

「まぁね、でもキツキツよ。 子供の塾代とか色々あるしさ」

「塾代って高そうだもんね」

「高いわよ。 目が飛び出るわよ。 それでパートに出なきゃって思ったんだけど 基本、働く気がないからね、何とか倹約やりくりで終わらせようと思って・・・って、こんな暗い話しをしてどうするのよ。 お誕生日おめでとうの電話なんだから」

「あ、じゃあ素直に 有難う」

「どう? 少しはやりたい事が叶っていってるの?」

「やりたい事? 私、暦にそんな事言った?」

「あー、やっぱり琴音も忘れてるんだぁ。 まぁね、あのシチュエーションだもんね 私も忘れてたからね」

「なに? いつの事?」

「いつだったかな 琴音が会社を辞める1年位前だったんじゃないかな 二人でホテルに食事に行ったじゃない。 それで食事した後に ビンゴゲーム会場に行ったら そこでゲームの前に 貴方が今後したいことを紙に書いて下さいって 書かされたじゃない。 覚えてない?」

「ああ、そんな事あったわよね。 思い出したわ。 暦がディナーのペアー招待券が当たったからって 誘ってくれたのよね。 それにビンゴ無料参加券も付いてたのよね。 でもあの時なに書いたっけ? うーん、覚えてないわ。 暦は覚えてるの?」

「私も書いたことって言うより すっかりそのこと自体を忘れてたのよ。 それがね何時だったかなぁ? 旦那と子供と過ごしてる時にふと思った事があったの。 これって幸せな事なんだって。 すごーく平凡な幸せよ」

「天にも昇る幸せじゃないのね」

「うん そうなの。 その時にあの時のことを思い出したのよ。 そう言えばあの時 『平凡な幸せを感じて暮らす』 って書いたんだって」

「わぁ、そんな事書いてたんだ。 でもそう言えば 暦はしょっちゅう言ってたよね。 平凡ほど難しいことはないって」

「そうよ、浮き沈みなんて誰にでもあるけど ずっと平坦って言うのは難しいのよ。 だから琴音はあの時書いた事はどうなってるのかなと思ってね」

「あったことすら忘れてたのに 何を書いたのかも覚えてないわ。 あ、でも待って 確かあの時司会者の人が その望みは必ず叶います。 書いた事で既に貴方はその望みに向かって歩いています。 って言ってたわよね」

「あー、そうよね そんな事言ってたわよね。 うん、言ってた、言ってた。 そうよね、思い出した。 琴音よく覚えてたわね」

「暦に言われて思い出したくらいよ。 それにそのことを思い出しても 何を書いたかは思い出せないわ。 司会者のセリフを思い出しても意味ないじゃないー」

「すぐにビンゴゲームも始まるからって 慌てて書いたものね。 特にウーンって考えて書いたわけじゃないから 大した事を書かなかったのかもしれないわね。 それにビンゴで二人ともハンバーガーのセット券が当たって ディナーの後なのに また食べに行って どれだけ食べるの! って言ってたけど その時にも何を書いたかなんて話さなかったから 記憶は薄いかもね。 まぁ、書いたことは もしかしたら私みたいに その時になったら思い出すかもよ」

「そうよね そのうち思い出すか 一生思い出さないかね。 そういえば言われて思い出したわ。 また食べに行ったんだったわ。 ホントにどれだけ食べるの! だったわよね」 二人で思い出し笑い出した。 

話は尽きず昔話に花が咲き 暦のお陰で少しは誕生日に笑う事が出来た琴音であった。

それに暦の言うとおり その時になったら思い出すよ

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