大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第27回

2013年08月31日 22時23分53秒 | 小説
『みち』 目次

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『みち』 ~未知~  第27回



「天河神社よ」

「今さっき 大きく天河って書いてあったと思うけど 神社って書いてなかったわよ」

「え? うそ!」 慌てて文香がブレーキを踏み 車をバックさせた。

「ストップ! ここよ、これなんて読むの?」 琴音が聞いた。

するとそこには 『天河大辨財天社』 と書かれていた。

「あ、ここよ! えー! 私こんなに大きなのを見落としてたの? 情けない。 えっと、何て言ってたかしら・・・そうだ 『てんかわだいべんざいてんしゃ』 って読むのよ。 凄い! 迷わないで来られた。 ご縁があったのよ!」 文香が喜びながら車を進める。

「ご縁?」

「そう、ご縁が無い人にはここへ来ることは出来ないそうなのよ」

「そうなの? でもそんなに難しい道じゃなかったじゃない。 ご縁なんか無くても着けるんじゃない?」

「そういう意味じゃなくて 用事があって来られないとか、予定していても熱が出ちゃって来られなくなるらしいのよ。 わぁー、嬉しい 私は此処にご縁があるんだわ」

「へー、そうなんだ。 私達が此処にどんなご縁があるのかしらね?」 舞い上がる文香と相反して 淡々と答える琴音であったが 心の中は
(ご縁か・・・悠森製作所と私のご縁って どんなご縁なのかしら。 それに課長とのご縁ってなんだったのかしら・・・。 あ、ダメダメ! 少なくとも今は考えないでいなくちゃ) そんなことを考えていた。

進んでいくと駐車場があったので そこへ車を停めた。 するとすぐに大型バスが入ってきた。

「何? 観光ルートにでも入ってるのかしら?」 琴音が言ったすぐ後に バスから人が降りてきた。

「え? あれって テレビで見る・・・文香!見て あれって何の装束なのかしら?」

「うわ、何?」

「テレビで時々見ない? 何のテレビだったかしら」

「知らない」

「あー、思い出せないなぁ」 思い出そうとする琴音だが 当分思い出せないであろう。 

「あの人達も来るのかしら?」 運転席から出てきた文香が バスのほうを見ながら言った。

「そうなんじゃない? 急いで行きましょう あんなに沢山の人が来ると落ち着けないわ」 神社で落ち着けない? 神社で落ち着きたいのかい? 琴音、今までの自分と違うことに気付かないかい?

「そうね」 

そう言って歩き出したのだが 何処をどう歩いていいのか分からず思うまま歩いて行き、鳥居をくぐった。 歩いていると文香が琴音に聞いてきた。

「何か感じる?」

「何かって?」

「何でもいいから何かよ」

「そんなの分からないし、何も感じないわよ」 琴音は殆ど相手にしていない。

「そうなんだ」

「何なの?」

「分かる人はここの気を感じるんだって」

「気? そんなの分かるはずないじゃない」

「琴音なら感じるかと思ったんだけどな」 先に石段が見えた。

「あの石段を登っていこうか」 琴音が言った。

「そうね」

石段を登っていくと拝殿に着いた。 大きな太鼓が置いてある。 椅子も沢山並べられてあった。 上を見ると五十鈴だ。

「わぁー 立派な鈴ね。 太鼓もあるわ」 

琴音がそう言って賽銭箱に小銭を入れ 五十鈴を鳴らし手を合わせた。 同じように文香も小銭を入れ 五十鈴を鳴らして手を合わせようとしたのだが 後が分からない様だ。

「琴音、どうやったの?」 

「私も分からなかったから パンパンと2回手を叩いただけなの」

「じゃ、私もそうする」 40歳前後という女達が 神社での挨拶すら知らないわけだ。

そこへ巫女が慌しくやって来て

「人数が増えました」 と追加の椅子を用意しだした。 拝殿の奥に誰かいるらしく

「分かりました。 急いでください」 と返事をする声が聞こえた。

「椅子も沢山並べられてあるし 何かあるのかしら?」 琴音が言うと

「もしかしたらさっきの人達?」 文香が言った。

「そうかもね。 邪魔になるみたいだから 此処はもう終わろうか」

「賛成」 そう言って何処をどう歩いていいのか分からないままに歩きだした。

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