大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第39回

2013年10月15日 21時52分01秒 | 小説
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『みち』 ~未知~  第39回



マンションに着き、すぐに風呂の用意をした。 風呂に入りじっくりと身体を温めながら今日あったことを考えたのだが 全く何がどうなったのかが分からない。

「ああ、分からないわ。 いったい私どうしちゃったのかしら」 そして風呂から上がると しもやけの事を思い出し足を見てみた。
足の甲の前半分が今まで以上に真っ赤に腫れ上がっていた。 更に酷いのは今までは点々と鈍い赤色だった所が紫色になり 指においては鈍い赤色に腫れ上がり指の先や裏は紫色になっていた。

「うわ、最悪。 これじゃあ靴が履けないじゃない。 あの寒さの中ずっと座ってたんだもの仕方は無いけど。 ああ、また足が痒くなるのね」 そう思った瞬間

「あら? ちょっと待ってよ。 いつもお風呂に浸かる時は足先がピリピリ痛くて足先だけお湯に浸かれなかったのに今日は浸かってたわよね。 それにお風呂上りは痒くて痒くてたまらなかったのに全然痒くないわ」 そろっと足を触ってみた。

「痛くも痒くもないわ。 ・・・いやだ、酷くなりすぎて感覚が無くなったのかしら。 はぁ、考えるだけ疲れちゃう。 今日は一体なんていう日だったのかしら・・・とにかく明日に備えて身体が冷える前に寝なくっちゃ」 早い時間ではあったが眠りについた。


翌日、年始出勤。

大きめだった靴を出して無理矢理履いてみると何とか履く事ができた。

「こんな靴の履き方をしてちゃ、また酷くなるばかりよねぇ・・・でもこれしかないから仕方ないわよね」 いつものように男性陣より早く出勤をし、掃除をしているときに気付いた。

「あら、素敵な風景画」 表の事務所には西側の壁に赤富士の絵が飾られてあり 風水の本を読んでいた琴音にはそれがすぐに目に入っていたが この風景画は表と奥の事務所の境の壁にあり色んな棚と混じりあっていた為かドアばかり見ていた琴音は今まで気が付かなかった。

「繊細で淡い緑。 なんて綺麗なのかしら・・・雨の小屋根・・・この絵のタイトルね」 森の中にある小さな小屋。 その小屋の屋根に霧のような雨が降っている絵だ。 暫く見入っていたが

「あ、掃除」 再び掃除を始めた。 

それからというもの朝の掃除の時にはその絵を見て「本当に癒されるわ」 絵が気に入ったようだ。

新年初日は全員が工場に集まりお互いに新年の挨拶を済ませ 社長の言葉も聞きそれぞれが仕事に就いた。

「今日から本当の一人での仕事。 何とかやっていかなくちゃ」 森川が 「分からない事があったら いつでも電話をしてきてね」 とデスクにある電話に森川の電話番号を書いて付箋を貼っていた。

「いつまでも森川さんに頼ってちゃ駄目よね」 電話から付箋を剥がし、琴音が自分で作っていた仕事の手順ノートに貼り替えた。

その後、毎日を何とか考えながらもやっていくことが出来ていた。


「あっと・・・明日は支払日だわ。 今日も会長はいらっしゃらなかったから明日もいらっしゃらないのかしら?」 翌日、やはり会長は姿を見せなかった。

初めて会長の自宅を訪れることになった琴音。 事前に電話を入れ、自宅を訪れると元気そうな会長が出てきた。

「判子ですね」 玄関に座り小切手や手形に判子を押しながら

「もう歳ですからね、なかなか思うように動けなくてね」

「いえ、会長はまだまだお若いです」

「あはは、もう歳ですよ。 足も腰も思うように動きませんよ。 事務所の3階まで上がるのが大変ですからね」

「あ、それで最近いらっしゃらなかったんですか?」

「もう階段は辛くてね。 それに見てくださいよ、この薬の多さ」 玄関の横に大きなビニール袋に入れられたいくつもの薬の袋があった。

「え? これ全部、会長が飲まれる薬ですか?」

「昨日病院へ行って来てね。 月一でもらってくるんですけど薬漬けですよ。 内臓も悪くてね」

「具合が悪くなられたらすぐに会社に電話を入れてくださいね」 森川から会長は離婚をし、息子は海外で暮らしていて今は一人住まいだという事を聞いていたのだ。

「ありがとう。 はい、これで全部ですか?」 

「はい」 全てを受け取り会長の自宅を出たが その後も会長は滅多に会社に顔を見せず 毎月支払日には会長の自宅へ行き判子を押してもらうこととなった。 その時には世間話や会長の幼少期の話、時々愚痴なども聞いて会長の話し相手となっていた。

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