大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第3回

2013年06月06日 15時00分00秒 | 小説
『みち』 ~未知~  第3回



3回、4回とハローワークへ出向いては アウトプットをしてくるが

「駄目だわ、ハローワークにいる時には いいと思ったのに どうして行く気になれないのかしら。 いったい私はどうしたいのかしら」 琴音は簡単に仕事が見つかるつもりでいたせいか 仕事が見つからない現実に焦り始めたようで 目の前にぶら下がっている進むべき道に気づかず 気持ちに余裕がなくなってきていた。 でも焦る必要は無いんだよ。


5回目 PCの前に座った琴音がふと気付いた。

「あら? そう言えば どうして悠森製作所が出てこないの? もう誰か決まったのかしら」 18万の給与である悠森製作所は 20万以上の給与で希望している琴音の検索では 出てこないことに琴音は気付いていなかった。

今回も5件をアウトプットして帰ったが もうかなりの日が経っていたせいか

「うん、この3件の中のどれかにしよう」 5件の中から 3件を絞った。

あとの2件は絞った所より琴音の家に近いのだが 給与が1万円安い。

絞った3件は琴音の家を中心に3方向に分かれていて 何処へ行こうともバスに乗っている時間に違いはなさそうだけれど やはり多少の違いはある。 それに給与にも多少の差があったが 仕事の内容は皆同じようなものであった。

「どうしようかしら」 3件の中で一番近くのところが一番給与が安く 一番遠い所が一番給与が高い。

「この遠い所・・・此処まで行こうと思うと近くのバス停からは出てないわよね。 ちょっと向こうのバス停まで行かなくちゃならないわ。 でも此処が一番お給料がいいわよね・・・」 迷っているが その前に大きなことを忘れかけている。


翌日 ハローワークに出向き 今回は職員と話をする席に着いた。

「何処か良い所がありましたか?」 職員にそう聞かれて

「此処にしようかと迷ったんですけど ここでお願いしようかと」 結局一番給与の高い所に決めたのだった。

「えっと、ちょっと待ってくださいね」 琴音が持ってきたアウトプットされた紙を持って資料をそろえてきた。

そして琴音と少し話しをしてから職員は電話をかけ始めた。

「あ、こちらハローワークですが 求人希望の方がいらっしゃいまして・・・はい・・・はい・・・」 どんな会話をしているか 琴音には分からない。

職員は琴音の資料を見て「ああ えっと 39歳ですね・・・はい・・・」 年齢の確認のようだ。

(年齢を聞いて 来なくていいって言われるのかしら) 琴音は心の中でそう思っていた。

「はい・・・はい、それでは 明日ですか? ちょっとお待ちください」 職員は受話器を押さえて 琴音にむかい

「明日、面接大丈夫ですか?」 と聞いてきた。

「あ・・・はい 何時でも大丈夫です」 咄嗟に答えた。

「何時でも良いそうです。 じゃあ、10時で」 琴音の目を見た。 確認しているのだろう。 琴音は頷いた。

「はい、はい 分かりました。 それでは宜しくお願いいたします」 電話を切った職員は地図を出してきて場所を説明し始めた。

琴音も漠然と場所は分かっていたが 詳しく知りたかったためその説明を聞いた。

「これで分かりますか?」

「はい、分かります」

「それじゃあ 急ですけど 明日の午前10時に面接されるそうなので・・・今日、履歴書を持っていらっしゃってますか?」

「はい」 琴音は鞄から履歴書を出した。

「ちょっと見せていただけますか?」 履歴書に書き漏れなどがないか確認しているようだ。

「はい、これでいいです。 お返しいたしますね」 そして今度は職員の方から封書を琴音に渡した。

「これを面接の時に相手様へ渡してください」 琴音は受け取り 鞄へしまった。

「あの、履歴書なんですが あと数日で40歳になるんですけれど このまま39歳と書いたままでもよろしいんでしょうか?」

「39歳には違いありませんから宜しいですよ」 琴音の顔を見て返事をした職員の顔が 微妙に笑っている。 微笑んでの返事ではない。 琴音の質問に大人として笑いを堪えていたのであろう。 

「他に何か質問などありますか?」

「いえ、特にはありません」

「それでは頑張って明日行って来て下さい」

「はい 有難う御座いました」

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