大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第4回

2013年06月10日 14時30分23秒 | 小説
『みち』 ~未知~  第4回



翌日、琴音は少し離れているバス停からバスに乗り 9時40分に面接をしてもらう会社の前に着いた。

「ちょっと早すぎるわね。 どうしようかしら」 そう言いながら敷地の中を覗くが 3階に事務所らしき窓が見えるのだが 入り口が見当たらない。
 
会社の前をウロウロしていると 此処の社員であろう女性が自転車でやって来た。 琴音は自転車を止めていたその女性に

「あのー、すみません」

「はい?」 自転車の籠から鞄を取ろうとしていた女性が振り向いた。

「今日こちらで面接をお願いしている者なのですが 事務所に行きたいのですけど 何処へ行けばよろしいでしょうか」

「あそこのちょっとへこんだ所に狭い出入り口があるの分かります?」 言われた先を覗き込むとドアがあった。

「あ、あのドアの所ですか?」

「そうそう あのドアから入って すぐに階段がありますからその階段を上がって3階が事務所ですよ」

「分かりました。 有難う御座いました」 会社の周りで少し時間を潰し10分前になり ゆくっりと事務所の入り口と言われるドアまで歩いて行った。

ドアを開けると狭い廊下が続いている横に階段があった。 まるでビルの裏階段のような感じだ。 

その階段を3階まで上がると目の前にドアがあった。 ドアを開けると 沢山の棚があり その棚には所狭しと 色んな物が置かれている。 その中で作業着を着た若い男達がテキパキと動き回っている横で 今まさにネクタイを締めようかとしている20代位の男もいた。 机や椅子なんてものは無く到底事務所には見えない。

「え? コレの何処が事務所なの? 倉庫じゃないの?」 目を丸くしている琴音に向かって スーツの上着を羽織ながら一人の男性が

「もしかして面接ですか?」 と話しかけてきた。

「はい、今日お願いしているんですけど こちらは事務所ではなかったのでしょうか?」

「事務所は奥なんですよ。 どうぞこちらです」 棚の間の細いスペースを少し歩いていくと ドアがありそのドアを開けながら

「今日の面接の方来いらっしゃいましたよ」 とドアの向こうに話しかけている。

「どうぞ」 と言って 琴音に中に入るよう促した。

「あ、どうも・・・」 そう言って入ると 中は先ほどの倉庫のようなところとは雲泥の差で整然とした広い事務所であった。

奥に男性一人と 女性一人がいて 仲良く団欒をしているように見えた。 その男性が琴音を見て

「ようこそいらっしゃいました。 さ、こちらへどうぞ」 琴音は奥まで歩いて行き その男性の前に立った。

「何も緊張しなくてもいいですよ。 どうぞ座ってください」 事務所にある椅子をガラガラと音をさせながら出してきた。 多分誰かの机の椅子であろう。

「宜しくお願いいたします」 琴音はそういうと 椅子に座り履歴書の入った封書とハローワークから言われていた封書を出した。

男性が履歴書を広げながら

「一応私が社長なんですが 現場でみんなと一緒に毎日働いてますからね 社長なんて意識はないんですよ」 見た目は60代であろうか。
「うちの会社はニーズがこれからどんどん増える会社ですからね 毎年業績はアップしています。 今も見られたでしょう? みんなバタバタとしている所」

「はい。 皆さんお忙しそうでした」

「ええ、活気がありますよ。 この時間までがバタバタと納品の用意や 出荷の用意をして忙しいんですが それからは若い者達はスーツに着替えて 営業回りや納品回りをしますし この時間からはパートさんが現場で働いてくれますから 事務所はいつもこんな風にガランとしてるんですよ。 それにやることもそんなに無い。 電話番くらいですね。 現場が忙しくなれば 時々手伝いに行くくらいです。 やっていただく仕事は 若い者から依頼された仕入れと 注文があったときの伝票処理ですね。 まぁー般事務です」 

(さっき事務所を教えてくれた人はパートさんだったのね) さっきの女性を思い出しながらそう思った。

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