大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第24回

2013年08月20日 12時50分55秒 | 小説
『みち』 目次

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『みち』 ~未知~  第24回



琴音が鞄の中をゴソゴソとし始めた。

「何してるの?」

「うん、二人分のお茶をペットボトルに凍らせてきたの。 冷たいの欲しいでしょ。 凍っているから いつでも冷たいままで飲めるわよ」 そう言って凍ったペットボトルを2本ホルダーに置いた。 

そしてようやく出発となったのだが 大通りに出ると文香が

「ねぇ、コンビニがあるようだったら事前に教えて」

「ああ、朝食べてないんだ」 3食どころかそれ以上食べる文香である。

「それじゃあ もうちょっと行った先にあるから そこで買うといいわ」

「もう、お腹すいて死にそう」

「あの、その言葉は暫く禁句にしてもらえない?」 平気な顔をしていても 心の中にはいつも課長のことがある。

「あ、そうでした。 ゴメンゴメン」

「あ、ほらあそこ。 分かる?」 

「ああ、見えたわ ゴメンここで朝のパンを買って行く」 駐車場に車を停め

「琴音は? コーヒーでも買わない?」

「待ってる間にコーヒー飲みすぎたわよ お腹ダボダボ」

「えへへ、ごめん。 じゃ、買ってくるね」 そうしてやっと文香は朝食の買い物にありつけた。

文香が買い物をしている間に 琴音は助手席を降り運転席に座った。 エンジンはかけっ放しだ。 琴音がバックミラーを見ていると 買い物が終わった文香が出てきた。

「文香、 助手席に座って」 窓を開け、顔を出し 琴音が言った。

助手席のドアを開け 文香が助手席に座りながら

「何? 私が運転するわよ」

「止めてよ 食べながらなんて 事故ったらどうするのよ。 それにこの辺りは 文香より私のほうがよく知っているから 文香よりスムーズに運転できるわよ。 行くわよ」 琴音の運転が始まった。

文香はお喋りをしながら さっき買ってきたサンドイッチと菓子パンを食べている。 
そんなに混んでいない道をずっと走り、高速に乗ったのだが 一向に文香の食事が終わらない。

「文香、いつまで食べてるのよ 早く食べちゃってよ」 文香は琴音の運転にお任せ状態になってしまっていて 自分が運転をするのを忘れていたようだ。

「あれ? 琴音が運転してくれるんじゃないの?」

「何言ってるのよ、文香が運転するから付き合ってって言ったんじゃない」

「あ、そうだったわ。 つい、いつも自分が運転してるから 助手席に乗って楽を感じちゃったみたい」 そう言いながらもまだ サンドイッチを手に持っている。

「早く食べちゃってよ」 琴音のお願いするような声が出た。

やっと文香が食べ終わって 次のサービスエリアに入り 運転を代わった。 助手席に乗りかわった琴音から苦情が出た。

「大体 文香は食事が遅いのよ。 サンドイッチと菓子パンだったら 普通急いだら 10分もかからないでしょ それが1時間近くだなんて 信じられない」 愚痴も出るだろう。

「ごめーん 久しぶりの助手席で 気持ちが楽になっててさ」 それは琴音も同じである。

今、助手席に座っていて さっきと大違いの楽を感じているから その気持ちが分からなくもない。

「お互い一人暮らしだもんね。 自分で運転する以外車なんて乗らないし・・・あ、そうよね? 違ったりなんかしてるの?」 琴音が文香に聞いた。

「当たり前じゃない。 行きたいところがあれば自分で運転よ。 誰も運転してくれないわよ」

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