大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第18回

2013年07月29日 14時54分01秒 | 小説
『みち』 目次

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『みち』 ~未知~  第18回



「そうなんですか」 森川が辞めると聞いて 心に穴が開いてしまったのと 頼れる人が居なくなるという焦りで 琴音自身心の整理がつかない。

「森川さんが辞めるまでに 経理を覚えようとする意志がありますか?」

「はい。 数字を追うのは好きですから」 そう言う言葉と裏腹に心の中は (まただわ。 森川さんが居なくなるっていうのに 何ていう事を口にしてしまったのかしら)

「その意思さえあれば充分です。 前の人は 出来ません って言って辞めてしまいましたけど 用はやる気ですから。 それじゃ、もういいですよ仕事に戻ってください」 そう言われて応接室を出た琴音であったが すぐに森川の席に行き

「森川さん お辞めになるって本当ですか?」

「あら? 会長言っちゃったの?」

「本当なんですか?」

「うん、そうなのよ。 最初に言ってしまうと織倉さんが焦っちゃうんじゃないかと思って言わなかったの。 最後の1ヶ月で言おうと思ってたのになぁ。 会長ったらお喋りね」 

「私一人でこんな仕事できません」 やっと本音が言えたね。

「何言ってるの1ヶ月やってきたじゃない、やれば出来るわよ。 前の人は1週間で辞めちゃったわよ」 さっき会長が言っていた話である。

「そんなぁ」 甘えてどうする。

「出来ない人は1週間で辞めるわ。 1ヶ月やってこられたんだからあとはこれの繰り返しよ」

「はぁ~」 返事か溜息か分からない息を一つついた。

そこへ応接室から会長が出てきて そのまま事務所を出て行った。 その姿を見送った森川が会話を続けた。

「織倉さんの前に来てた人、2人居たのよ」

「え? 2人ですか?」

「そう。 今言った辞めたっていう人は 会長が連れてきたの。 知り合いの娘さんだったみたいで 織倉さんとそんなに年は変わらなかったんじゃないかしら。 意気揚々と入ってきたんだけど 1週間後にはヘシャゲちゃって応接室で会長に こんな事をするなんて聞いていませんでした。 何がなんだか全く分かりません、もう辞めます! って言って辞めちゃったの。 会長にしたら知り合いに顔が潰れちゃったってこと」

「たしかに私も分かりませんが 何がなんだかって言うほどでしょうか?」

「でしょ、だから織倉さんはやっていけるのよ」 墓穴を掘ったようだ。

「あと1人はどんな方だったんですか?」 墓穴に気付いてないようだ。

「織倉さんと同じようにハローワークから来たんだけど 面接の時に・・・時期が悪かったのね 可哀想だけど面接落ちなの」

「時期ですか?」

「そう。 織倉さんが来る2、3ヶ月前くらいだったかしら 事件があったでしょ?」

「事件ですか? 最近は事件が多くてどの事件かしら」

「ほら、不倫で・・・女性が相手の男性の知らない間に 男性の家庭の中に上手く入って薬を盛ったっていう」 森川がそこまで言うと

「あ、はい ありました。 確か小さな子供さんにも薬入りのジュースを飲ませたっていう」

「そうそう、それ。 その犯人とそっくりだったのよ」

「え? それで面接を落としちゃったんですか?」

「もう、瓜二つだったくらい似てたのよ。 最初事務所に入ってきた時にビックリしたくらいよ。 それでね、面接が終わってその人が帰ってから 会長と社長がどうするか話している時に私が言ったの。 あの事件の犯人とそっくりですねって。 すると社長もそう思ってたって言うし 会長もその事件を思い出して どこかで見た顔だと思っていたらそうだったのかって言って 悪いけど断ろうかって言う話になって 断っちゃったの。 その人には悪いことをしちゃったと思うけど もしお客さんがこられた時にこの事を覚えていたら お客さんもどうしていいか困るでしょ? それにこのことが無くても断っていたかもしれないわ」

「え?」

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