大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第32回

2013年09月18日 12時25分25秒 | 小説
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『みち』 ~未知~  第32回



「じゃあ、もし父の兄がお墓をみていたら 私の父は分家っていう事なのかしら?」

「そうなりますね」 声が小さくなる。

「そうなの」 考えながら声を発した森川の声が小さい。

「ああ、分かったわ それで父の兄のお嫁さんがいい顔をしなかったのね」

「いい顔・・・ですか?」

「そうなの。 睨むわけでもないんだけど どう言えばいいのかしら・・・。 やっぱり睨むかしら?」

「その土地で色々違いますし 同じ土地で同じ檀家さんでも お線香の立て方も違ったりすることがあるって聞いたこともあります。 だから一概には言えないので何とも分かりません。 そのとき森川さんのお母さんとかご兄弟さんは何か仰ってませんでしたか?」

「それがね その時母は入院していたの。 話せる状態じゃなかったし 妹がいるんだけどね、妹も私もこんなことに疎くて何も知らないのよ」

「そうなんですか でも私もよく知りませんよ」

「そんなこと無いわよ。 70近くになる私がどうして織倉さんに聞いたと思う?」

「・・・どうしてでしょうか?」

「この歳になって誰にも聞けないって言うのもあるけど どうしてかしら 織倉さんってそんなこと知ってそうな感じがするのよ」

「え? そうですか? あんな本を読んでるからかしら」

「うーん そうじゃなくて そういう風な感じがするの」

「どう考えても 私の母の実家でよく法要があったんですけど その時、和尚様がお説教されるのを聞くのが好きで」 琴音がここまで言うと

「お説教? お説教されるのが好きなの? わざわざ何か悪いことをするの?」 目を丸くして森川が聞いてきた。

「あ、違います。 そのお説教じゃなくて 和尚様がして下さる色んなお話の事です」 慌てて説明をした。

「へぇー、お話の事をお説教って言うの?」 えらく驚いたようだ。

「そうみたいです。 それでそのお説教を小さい時からよく聞いてましたけど それ位のもので あとは母が時々お墓やお仏壇の話をするくらいでしたから 特に知ってるって訳じゃないんですけど どうしてなんでしょうね」

「少なくとも私よりは知ってるじゃない。 でも、有難う。 父の兄のお嫁さんが いい顔をしなかったのが長い間の疑問だったの。 結果はどうあれ疑問が解決してサッパリしたわ。 仕事に戻りましょうか。 あら? 雨が降ってきたわね」

「そういえば天気予報で今日は午後から雨って言ってましたね」 そう言って何気なく斜め前のビルを見るとふと気付いた。

「あら? あの窓が開けてあるわ。 雨なのに・・・」

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