大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第28回

2013年09月03日 13時36分34秒 | 小説
『みち』 目次

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『みち』 ~未知~  第28回



「わぁ、何あれ? 龍の形をしてるんだ」 琴音が嬉しそうに近づいて行った。 手水舎である。

「手を洗う所よね」 文香が言うと 今度は琴音が

「確か口も洗うのよね」 二人で鞄を持ち合いながら順番に手と口を洗ったが 順序が逆である。 拝殿に行く前に済ませておくべき事柄だ。 何も知らなかったと言えど 神様に失礼なことをしたんだぞ。
それからは神社の周りを歩いたり、裏の小路を散策したりと充分に自然を満喫できた。

「ああ、美味しい空気。 生き返ったようだわ」 文香が両手を広げ大きく空気を吸った。

「だからそういう事は言わないでって・・・」

「あ、ごめん。 ねぇ、あんまり道を外れたら方向が分からなくなっちゃうから そろそろ元に戻らない?」

「そうね」 とは言っても 来た道をそのまま帰らず少し違う道から帰ると 

「あった!」 文香が叫んだ。

「何? どうしたの?」

「あれよ、あれ」 指差された先には木で囲われた大きな石があった。

「石?」

「隕石だって言う話よ」 そう言いながら隕石に向かって歩き出した。

「へぇー」 文香の後をついて歩き二人で隕石の前に来ると

「手をかざしてみるでしょ?」 そう言って文香が隕石といわれるその石に手をかざした。 琴音も真似て手をかざすと

<何これ? 温かい> 心の中でそう感じたことを口にしようとした時

「温かくない?」 文香が先に言った。

「うん、ポワーンと温かいわ」 その返事を聞いた文香が

「やっぱり」 そう言って落ち込んだそぶりを見せた。

「何なの?」

「やっぱり琴音には分かるのね。 私には全然分からない」 かざしていた手を引いた。

「え? 何言ってるの? 温かいじゃない」

「だーかーらー 私には分からないのよ。 ここに来るように勧めてくれた子が・・・その子が能力を持ってるんだけどね、言ってたのよ。 隕石って言う噂の石があるから 手をかざしてみて、温かく感じるわよ なかには感じない人も居るみたいだけど って、だから私はその何も感じない内の一人なのよ」 文香の話を聞きながら琴音もかざしていた手を引いた。

「気のせいかな? ほら、手を下にしたから血流が止まって 鬱血した感じで温かく感じるのかもしれないわ」

「手を下にしていたのは私も同じじゃない」

「あ、そうね。 うん・・・と じゃあ、石に集中してみて そうすると温かく感じるかもよ」 そう言われてもう一度手をかざし、じっとしていた文香であったが

「琴音、聞いていい?」

「何?」

「集中ってどうやってするの?」

「は? 集中は集中よ どう説明するのよ」

「そうよね、駄目だ私には集中っていう事が出来ない」 結局、文香は事前に聞いていた 隕石に手をかざすと温かく感じる という体験は出来なかったのである。
そんな時に 法螺貝の音がした。

二人は顔を見合わせ

「きっとさっきの人達よね」 駐車場で見かけた人というのは 修験道の装束を身につけていたのだった。

「関わりたくないわよね・・・」 琴音が言うと

「ブラブラしながら帰ろうか」 文香がそう言った。 

「うん」 琴音の返事を聞いて駐車場に帰り エンジンをかけた。 

「ねぇ、会社の子に『陀羅尼介』 を買ってきてって言われてるの。 付き合ってくれる?」

「だらにすけ? 何それ?」

「お薬なんだって。 よく効くらしいわよ」

「へぇー。 何だか分からないけどいいわよ。 道は分かってるの?」

「その辺を走っていれば何処にでもあるって言ってたから ナビを家に合わせながら あちこち走るわ」

「私は助手席に乗ってるだけだからいいわよ。 文香のいいようにして」 来た道からは帰らず 山を抜け、町に出ようと道を選んだ。

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