大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第29回

2013年09月07日 14時48分51秒 | 小説
『みち』 目次

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『みち』 ~未知~  第29回



車を発車させ間もなく

「あれ、何かしら?」 琴音が見ているほうを文香が見ると

「水の神様って書いてあるわね。 寄ってみる?」 丹生川上神社下社だ。

「うん」 あれほど社寺仏閣を嫌がっていた琴音がどうしたことだろうね。 よく考えるといいのだけれど 全く琴音は気付いてないようだ。
車を端に停め よく見てみると『日本最古の水の神様』 と書かれていた。

「日本最古だって。 それに水の神様って誰?」 琴音が聞いた。

「知ってるはず無いじゃない。 あれ? 下社って書いてあるということは 上社があるって事?」 今度は文香が琴音に聞いてきた。

「あ 本当だ。 下があったら上があるはずよね」 何とも単純だ。

ここでも手を合わせた二人だが 参拝作法などは全く無い。

その後、車を走らせ何とか陀羅尼介を買うことが出来たのだが 頼まれ物を確保出来た事で気が緩んだのか 文香のお腹が空いてきたらしい。

「ねぇ琴音、お腹空かない?」

「そうね、お腹と言うより喉が渇いたわ」 朝用意していたペットボトルはもう空になっていた。

「コンビニなんてなさそうだし どうしようか。 それにお手洗いにも行きたいし」

「文香のお腹はとおトイレは 待ったがきかないからね。 とにかく走って行って 何かありそうな所で車を停めましょうよ」 どれくらいか走っていると

「琴音、見て あれってスーパーじゃない?」

「どこ? ・・・あ、本当だ。 あそこで何かあるかもしれないわね」 駐車場に車を停めると 

「私先にお手洗いに行きたい」 

「行ってくるといいわよ。 先に買い物してるわね」 琴音はそんなにお腹が空いているわけではなかったので 缶コーヒーとパンを一つ買った。

トイレから文香が出てきた。

「文香、ゆっくり選んでくるといいから。 私先に車に帰ってるわね」

「あ、じゃあ これ」 車のキーを琴音に渡した。
琴音は運転席に乗り込み 急いでパンを頬張った。 コーヒーを飲みながらバックミラーを見ていると 文香が歩いてくる。

「文香、助手席に乗って」 朝と同じシチュエーションだ。 

「琴音が運転してくれるの?」

「文香が食べ終わるのを待ってたら 日が暮れちゃうわ」

「琴音は? コーヒーしか買わなかったの?」

「パンを買って もう食べたわよ」

「早食いねー」

「文香が遅すぎるの。 行くわよ」 その後、何度か運転を代わりながらやっと 琴音の家に着いた時には もう真っ暗になっていた。

「遅くなっちゃったわね」 

「ま、お互い待ってる人が居ないから 気楽よね」 シートベルトを外しながら琴音が言った。

「それは言えてる」

「じゃあね、今日は有難う。 まだ運転があるんだから気をつけて帰ってね」

「うん。 こっちこそ付き合ってくれて有難う。 じゃあね」


翌日の日曜日は 久しぶりの遠出で疲れたのか お昼まで寝ていた。

「うわぁー もうこんな時間だわ」 布団から起きて遅がけからの洗濯機だ。 洗濯機が回っている横で 洗面所の鏡を拭きながらふと気付いた。

「そういえば昨日、あんまり課長のことで思い悩まなかったわ。 ・・・文香のお陰ね」 この日は一日ゆっくりと過ごした。

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