大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第31回

2013年09月13日 14時44分44秒 | 小説
『みち』 目次

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『みち』 ~未知~  第31回



「陰気な本を読んでます」 恥ずかしげに言うと 

「うううん、そんなことじゃないの。 確か以前は陰陽師関係の本を読んでいたわよね?」

「はい。 森川さん陰陽師ご存知なんですか?」

「よく知らないけど 占いは好きだから」

「そうなんですか。 でもこれはちょっと陰気すぎますよね」 そう言いながら引き出しに入れてあった小さな鞄に本を入れ、引き出しを閉じた。

「織倉さんって お墓とかお葬式とか・・・何て言ったらいいのかしら」

「仏事ですか?」

「そういう風に言うのかしら? そんなことをよく知っていそうなんだけど そうなの?」

「いえ、何も知りません。 せいぜい父母から聞いた話くらいです」

「そうなの。 でも私より知ってるはずよね。 知ってたら教えて欲しいんだけど」

「何でしょうか?」

「実はね、私の父親が亡くなった後 お墓に入れたんだけど そのことでちょっと分からないことがあるの」

「私に分かるでしょうか?」

「とにかく言っちゃうから 一応聞いてもらえる?」

「はい」

「私の父と父の兄が私のお爺さんが亡くなった時に 父と父の兄がお墓を立てたのよ。 だからそのお墓は父と父の兄に 権利って言うかそんなものがあるわけじゃない。 それでその後、父の兄が亡くなって 父の兄がそのお墓に入ったの。 それで次に亡くなったのが私の父なんだけどそのお墓に入れたのね。 そうしたら父の兄のお嫁さんが どうも怒っているみたいなんだけど どうしてなのかしら分かる?」

「あ・・・」 琴音は返事に困った。 そして

「あの、そのお墓は誰がみてらっしゃるんですか?」

「誰っていう事はないと思うんだけど 多分父の兄のお嫁さんだったんでしょうね。 だから今はその子供が見てるのかしら? 私は何も知らないの」

「それじゃあ・・・」 言葉に詰まる。

よく考えて 森川の心を傷つけない言葉を選んで話し出した。

「そこの土地はそこの土地でやり方があるでしょうから 何とも言えないんですが」

「いいの、織倉さんの知っていることを教えて」

「少なくとも私の母の田舎では 枝ばえはよくないって言われてるんです」

「枝ばえって何?」

「お墓やお仏壇に入るのは 本家を継ぐ一本の筋だけで その筋に入ってない分家などを枝ばえって言うらしいんです。 簡単に言ってしまえば 代々受け継がれる 本家の長男と長男のお嫁さんだけが そのお墓とお仏壇に入るっていうことです。 だから分家は分家でその分家が初代になって新しくお墓とお仏壇を作るんです」

「分家ってなあに?」

「長男が家を継いだとしたら 次男以降の男の子が 独立して構えた家庭って言えばいいんでしょうか」

「ちょっと待ってね。 頭を整理して見るわ」 口元に右人差し指をつけて空(くう)を見た。

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