大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第30回

2013年09月10日 21時27分22秒 | 小説
『みち』 目次

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『みち』 ~未知~  第30回



会社に行けば仕事である。
相変わらず森川は 一つ一つを丁寧に教えてくれる。

「分からなかったら何度でもいいから聞いてね」 この言葉は琴音にとって最高の安心材料である。

仕事の合間

「そういえば森川さんの旦那さん 毎日どうされてます?」 琴音が入社して少し経ったころに 森川の旦那が長年勤めていた会社で嘱託として働いていたが 完全に退職したと聞いていたのだ。

「毎日元気にしてるわよ。 元気すぎて困っちゃうくらいよ」

「それは何よりじゃないですか」

「この間なんて 愛宕山に登ってきたのよ。 何が楽しくて山に登るのかしら」

「山登りですか いいですね」

「あんなに疲れることをよくやるわよ」

「一緒に登ったりはされないんですか?」

「何年か前に一度一緒に行ったのよ。 でも、もうイヤ。 何が楽しくて山を登るのか分からないわ」 そんな会話があったのだが 琴音、気付かないかい?


毎日の仕事を何とかこなし 家に帰るとテレビを見たり本を読んだりするが やはり課長のことは頭から離れない。

そんなある日 会社から帰ってくると 一枚の葉書がポストに入っていた。

「誰からかしら?」 見てみると 忌明けの挨拶状であった。

「ああ、支店長。 もう四十九日だったのね。 ・・・立派な戒名」 葉書を持って部屋に入り テーブルの上に置いた。

その置かれた葉書をじっと見つめている。

「戒名・・・戒名って何なの?」 勿論、戒名を知らないわけではない。

「何のために戒名ってあるのよ 死んでからの名前が必要なの?」 何かが引っ掛かったようだ。 正確にはチャンスを与えてもらい そのチャンスに気付いたのだ。


翌日、会社の帰りに図書館へ行き戒名に関する本を借りた。 マンションに帰り部屋で読んでいると

「どういうこと? お位牌のルーツが中国の儒教って・・・仏教はインドよね」 だが琴音の知識はこれだけだ。 今の知識だけでは前に進むことが出来ない。

「この本だけがこんなことを書いているのかしら。 他の本を読んだら 違うことが書かれているのかしら・・・とにかく最後まで読んでみなくちゃ分からないわよね」 夜遅くまで読んでいたが 最後まで読むにはまだある。 
翌日会社には連日読んでいた本は家に置き 昨日の続きを会社の昼休みに読んでいた。 あまり分厚い本ではない事と 昨日遅くまで読んでいたことで 昼休み中に読み終えた。

「やっぱりお位牌は儒教から でもそれっておかしいじゃない。 仏教がインドから中国を渡って日本にやって来た。 その中国を渡っている間に儒教が混ざったってこと? それともお位牌だけ後でやってきてくっついちゃったの? それじゃあ日本人が信じている仏教って 本来の仏教じゃないじゃない」 何かに疑問を持つと納得いくまで調べなければ気が済まない性格。 これ以上のチャンスの与え方は無いね。

昼休みが終わったが 考え事をしている琴音は気付かなかった。

森川が見ていたテレビを消し 琴音をチラッと見た。 テレビを片付け琴音に近づき

「織倉さん?」

「えっ? あ、すみません お昼休み終わりましたよね」 慌てて本を引き出しに入れようとした時に

「いいのよ、慌てなくて。 それよりその本・・・」 森川の目が本を見ていた。

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