「傍聞き(かたえぎき)」長岡弘樹
切れ味するどいミステリー短編集.
いずれも,予測不可能な結末と,それをもたらす意外な「善意」.
急患を運ぶ救急隊員,女性刑事、消防士,元受刑者の更生施設の所長など,人の命や運命を握る立場を職業とする人が主人公となっている4つの短編集.
2008年の日本推理作家協会賞の短編部門受賞作.
この賞を受賞した作品には,伊坂幸太郎の「死神の精度」,横山秀夫の「動機」,平山夢明「独白するユニバーサル横メルカトル」等の綺羅星のごとく名作が並んでいるので,この本の評価の高さが窺い知れますな.
ちょっと乱暴な分類かもしれないけど,ミステリー小説の評価ポイントを,
(1)トリックや意外性などのテクニカルなレベルの高さ,
(2)ヒューマニズムや愛情など心理面の表現レベルの高さ
の2つに分けるならば,「独白する...」は(1)が飛びぬけて高く,「動機」は(2)が素晴らしい.
「死神...」は両者のバランスが秀逸ですね.
そういう意味では,この「傍聞き」は(1)がやや強く,(2)も程よくバランスされているという評価だと思います.
もうひとつ付け加えるなら,最近の傾向として,「人間を描く」ことにこだわる作家が多い中で,意外性を中心に据えて,善意や良心をバランスさせるタイプの作家は珍しいのではないかな.
読者に緊張と恐怖を与えることでミステリーとしての評価を上げることは比較的容易かもしれないが,人間の善意や良心でミステリーの質を問うことは極めて難しい時代だと思う.
そういう意味で,この長岡弘樹さんには注目していきたいと思います.
願わくば,長編ミステリーを書いてほしいですね.
切れ味するどいミステリー短編集.
いずれも,予測不可能な結末と,それをもたらす意外な「善意」.
急患を運ぶ救急隊員,女性刑事、消防士,元受刑者の更生施設の所長など,人の命や運命を握る立場を職業とする人が主人公となっている4つの短編集.
2008年の日本推理作家協会賞の短編部門受賞作.
この賞を受賞した作品には,伊坂幸太郎の「死神の精度」,横山秀夫の「動機」,平山夢明「独白するユニバーサル横メルカトル」等の綺羅星のごとく名作が並んでいるので,この本の評価の高さが窺い知れますな.
ちょっと乱暴な分類かもしれないけど,ミステリー小説の評価ポイントを,
(1)トリックや意外性などのテクニカルなレベルの高さ,
(2)ヒューマニズムや愛情など心理面の表現レベルの高さ
の2つに分けるならば,「独白する...」は(1)が飛びぬけて高く,「動機」は(2)が素晴らしい.
「死神...」は両者のバランスが秀逸ですね.
そういう意味では,この「傍聞き」は(1)がやや強く,(2)も程よくバランスされているという評価だと思います.
もうひとつ付け加えるなら,最近の傾向として,「人間を描く」ことにこだわる作家が多い中で,意外性を中心に据えて,善意や良心をバランスさせるタイプの作家は珍しいのではないかな.
読者に緊張と恐怖を与えることでミステリーとしての評価を上げることは比較的容易かもしれないが,人間の善意や良心でミステリーの質を問うことは極めて難しい時代だと思う.
そういう意味で,この長岡弘樹さんには注目していきたいと思います.
願わくば,長編ミステリーを書いてほしいですね.