書く仕事

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「襲名犯」竹吉優輔

2019年05月27日 23時14分44秒 | 読書
「襲名犯」竹吉優輔


第59回江戸川乱歩賞受賞作
私的にはこの賞の受賞作はほぼ100%面白いと感じる.

この賞のコンセプトが私のミステリーに対する嗜好と合っているんだろうと思います.
最近は,江戸川乱歩賞の受賞作リスト(ネットで簡単に検索できる)を,片端から読んでいる感じ.

さて,この「襲名犯」
タイトルから想像できると思うけど,ある猟奇殺人の犯人が捕らえられ,死刑となり,執行される.

つまり,この犯人はこの世にいないわけです.

しかし,その犯人の犯行声明や様々な情報を見て犯人に心酔し,その跡を継ぐもの(襲名)するものが現れる.

契約職員の司書として図書館に勤める南條仁は複雑な家庭に育ったが,今は図書館の仕事に生きがいを見出している.
仕事仲間もできた.

しかし,あるお客さんから資料集めの依頼があり,それに対応しているうちに,そのお客が,先の襲名犯ではないかという疑いが出てきた.

実は仁には双子の兄がいた.
その兄は死刑となった犯人に殺されていたのだった.

襲名犯はなぜ,被害者の弟に接触を図ってきたのか?

しかも,そうしているうちにも,犯行が繰り返され,死者が増えていく.

仁の苦悩は増々深まる.

仁の幼馴染の女の子が警察官(刑事)になっていたり,親友だった男子が小説家になって仁の事件を小説にしたいと言ってきたり,物語がどんどん,複雑になっていく.

江戸川乱歩賞は新人の登竜門的位置づけなので,功成り名遂げた小説家ではなく,粗削りでも勢いのある作家に与えられる.

この小説は,まさにそんな感じ.

コントロールは悪いけど160kの剛速球で三振を取る新人ピッチャー,って感じ.

次回作が楽しみだ.

2018年に読んだ本

2019年05月14日 08時53分52秒 | 読書
2018年に読んだ本のリストです.
毎年,年明け早々に前年に読んだ本の一覧をアップしてるんですが,今年は定年退職間際で,研究室の整理と荷造りに忙殺されて,延び延びになってました.
以下,2018年の1月から読んだ順に並んでます.

1 「真綿荘の住人たち」島本理生
2 「押入れのちよ」荻原浩
3 「オランダ宿の娘」葉室 麟
4 「カネと共に去りぬ」久坂部 羊
5 「食べる女」筒井ともみ
6 「言ってはいけない」橘玲(たちばなあきら)
7 「異次元の館の殺人」芦辺 拓
8 「コルヌトピア」津久井五月
9 「魔法使いの弟子たち」井上夢人
10 「滔々と紅」志坂圭
11 「リミット」五十嵐貴久
12 「プリズントリック」遠藤武文
13 「ギフテッド」山田宗樹
14 「殺人現場へどうぞ (講談社文庫ミステリー傑作選 2)」日本推理作家協会(編)
15 「虚構のアラベスク」深水黎一郎
16 「コンビニ人間」村田 沙耶香
17 「はるか HAL-CA」宿野かほる
18 「ヒア・カムズ・ザ・サン」有川浩
19 「跡を消す」前川ほまれ
20 「噛みあわない会話と、ある過去について」辻村深月
21 「宇宙の果てになにがあるのか」戸谷友則
22 「ハッピーリタイアメント」浅田次郎
23 「ファーストラブ」島本理生
24 「十三階の神(メシア)」吉川英梨
25 「七つの試練 池袋ウエストゲートパークXIV」石田衣良

こうしてみると,いつもながら,ミステリーが中心ですが,人間ドラマ的な小説も織り交ぜて読んでますね.

私が選んだベストスリーは...
10 「滔々と紅」志坂圭
23 「ファーストラブ」島本理生
24 「十三階の神(メシア)」吉川英梨

また,それぞれの記事にアクセスするには,検索窓にタイトルをペーストして,このブログ内で検索していただけると出てきます.


「臨床真理」柚月裕子

2019年05月13日 21時50分56秒 | 読書
「臨床真理」柚月裕子


臨床心理士の佐久間美帆はやっかいな患者,藤木司を抱えていた.
司は美帆に対して心を開くことなく,一切口をきいてくれない.
司はしばらく前に,同じ福祉施設に居た少女,彩が自殺してしまい,その事実を受け入れられないのだ.

美帆は粘り強く,時間をかけて司と対話を試みると,司はある奇妙なことを口走るようになる.
人が何か言うと,「赤」「白」「黒」などとつぶやくのだった.
さらに司は,彩の死は自殺ではなく,誰かから殺されたという.
彼は何を知っているのか?また,他人の発言に色名で反応するのは何を意味するのか?

なかなか読み応えのある骨太のミステリーだった.
後半の展開は,若干見えてしまったが,それでも十分楽しく読むことができた.
楽しいというのは,ミステリーとして楽しいという意味で.ストーリーとしては,「おぞましい」話である.

2008年このミス大賞受賞作.

精神科医,臨床心理士,看護師の仕事の上での関係なども興味深く読ませてもらった.