書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「書店ガール」碧野 圭

2015年06月27日 02時19分43秒 | 読書
「書店ガール」碧野 圭



書店ガール版半沢直樹ともいえるが、半沢直樹シリーズより、人生の悩みへの切り込み方が鋭い分、こちらの方をより高く評価したい。

さらに言うなら、悪役をぶった切る時の痛快さが、一枚上だ。

つまり、女の方が怖いということね。

世の男性諸君、あなたは気付いていないかもしれないが、知らないうちに女性を見下す発言をしていませんか?

もう一度、手を胸に当ててようく、考えてみた方がよいと思いますよ。

いや、手を胸に当ててもわからないでしょうから、ICレコーダーを使って、自分の発言をすべて録音し、それを精査してみては?
必ずや、一つや二つ、女性蔑視の発言をしているはず。

そうやって、自分の女性蔑視度を反省するべき時が来ています。

この小説を読んで、強く強くそう思ったのです。

「イニシエーション・ラブ」乾くるみ

2015年06月22日 13時00分28秒 | 読書
「イニシエーション・ラブ」乾くるみ



久々の恋愛小説.

と,思ったら,見事にだまされた.

これは,恐れ入った.

アガサクリスティも真っ青!?

読んでいる最中は,どっぷりと恋愛事情に浸る楽しさを味わい,読み終わってから,あ~~,やられた,と敗北感を楽しむ.

例えて言うなら,一流のフレンチレストランで最高級のディナーを食べてから,
「ああ,美味しかったね.また来ようね!」
と言った直後に夢から目が覚めた...みたいな.
これ以上の書評は無理.
まあ,楽しんでください.

「ブラック・ベルベット」恩田陸

2015年06月21日 14時54分57秒 | 読書
「ブラック・ベルベット」恩田陸


まあまあ面白かったんだけど、インパクトには欠けるかな。
大山鳴動してネズミ一匹。という感じね。

この本に関して言えば、少なくとも全体の半分以上を読み進んだ段階で、誰もハッピーエンドなんて期待していやしないよ。

で、この結末はないよね。

悲劇的なことが起きてほしいと言う訳じゃなくて、もっと捻り方があるだろうと、思った次第。

まあ、そんなところで。

「新参教師」熊谷達也

2015年06月14日 11時25分18秒 | 読書
「新参教師」熊谷達也



中学の教育現場に民間活力を導入するための教員採用に応募した安藤亮太42歳.
安藤は生命保険会社の東北地方の支社長だったが,役員になる夢が叶わないことを悟り,教員での出世にかけることにした.
末は教育長か県会議員?的なノリで転職した安藤だったが...

オヤジの脂ぎった欲望ももちつつ,世間的には一流の社会人でありたいと望んでいる俗物そのものの安藤.

教育現場の常識の「非常識さ」に戸惑いつつも,持ち前の要領の良さで予想外に仕事がうまく行くかに見えたが,突然校長に送り付けられた怪文書に驚く.
安藤の過去の悪行を暴くものだ.
しかも,その内容は部分的には当たっている告発書になっている.

さあどうする安藤亮太.

というストーリー.

文章は平易だし,落ちも効いていて,なかなか面白かった.

「人生の深み」みたいなものは期待しない方が良いけど.

この作者は2004年に「邂逅の森」で直木賞を取っているが,そっちも読んでみるかな.

「居酒屋ぼったくり」 秋川滝美

2015年06月09日 20時58分26秒 | 読書
「居酒屋ぼったくり」 秋川滝美



「ぼったくり」などという、物騒な名前の居酒屋が舞台。
この店主の美音(みね)と妹の馨、その姉妹の店に集う心優しき常連客との会話がほっこり来ます。
お互いに相手のことを思いやる気持ちが心地よい。

この小説のもう一つの魅力は、酒のつまみと日本酒の銘柄に関する「ためになる」薀蓄。
牡蠣のベーコン巻、上州葱と蒟蒻の煮物、せんきんあかとんぼ秋上がり、群馬泉
等等、あの日本酒に合うつまみ、このつまみに合う日本酒が心優しき会話の合間に次々に紹介される。
日本酒党には堪らない企画?の小説かも。
私はそれほどの日本酒党ではないけど、この本を読んで、すっかり美味しい日本酒が飲みたくなった。
明日飲みに行こうかな。

「晴天の迷いクジラ」窪美澄

2015年06月05日 13時51分13秒 | 読書
「晴天の迷いクジラ」窪美澄




人は誰でもいつかは必ず死ぬ.

しかし,天寿をまとうした死と自ら命を絶つ死の差は大きい.

3人の主人公がそれぞれの辛い人生の中で死を考える.

しかし,なぜか他人が自殺しようとしていると,それを阻止したくなる心理が興味深い.

その奇妙な心理のおかげで救われることになる.

仕事の失敗,恋の破綻,親友の死,偏愛する親からの拘束...

人生を息苦しくするものがこんなにも世の中に溢れていることを教えてくれる小説.

有難くはないが,勉強にはなる.

痛みに満ちた小説だが,人生の横幅を広げてくれることは間違いない.