書く仕事

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「硝子のハンマー」 貴志祐介

2015年10月27日 18時20分47秒 | 読書
硝子のハンマー」 貴志祐介




貴志祐介の本格推理小説
とあるビルで起きた密室殺人を描いた事件編と、犯人の半生を描いた解決編の2編の長編からなる力作。

巧みな構成に驚いた。

密室のトリックが秀逸。
犯人の半生も、気の毒さが先に立って、彼を責められない気にさせる。

久しぶりの本格物で推理小説の楽しさをあらためて実感できた。

「犯人はお前だ!!」的なビックリ感はないが、読者は、探偵役ではなく、犯人の方に感情移入してしまうだろう。
それくらい、犯人の心情や境遇が丁寧に描かれる。

それに何といってもストーリーが面白い。ページターナーです。

どうぞ、お楽しみください。

「舟を編む」 三浦しをん

2015年10月18日 22時54分05秒 | 読書
「舟を編む」 三浦しをん



新しい辞書を作ることに情熱を燃やす人たちの物語。

私もそうだが、辞書は必要に迫られてやむを得ず使うもの。
使わずに済むものなら、それに越したことはない、と思っている。

しかし、世の中には、この辞書作りに
命を懸けている人もいるのです。

「本当に大切なことは言葉では伝わらない」という命題。
そして、「いくら想っても言葉にしなければ伝わらない」 という命題。
どちらが真実か?

言葉の意味を、語源を含めて突き詰めて行くと、人の想いに行き着く。

言葉の意味を突き詰めて考えることが、本当に大切なもの、人の想いにたどり着くことなのである。

「言葉の意味」に対する情熱がひしひしと伝わってくる小説。

辞書を1冊持って旅に出たくなる。そう思わせる小説です。

こんな小説、読んだことがない。

「ドルチェ」誉田哲也

2015年10月04日 11時35分50秒 | 読書
「ドルチェ」誉田哲也



魚住久江(うおずみひさえ)巡査部長。42歳。独身。
練馬警察署に勤める刑事さんである。
彼女が主人公の警察小説の短編集だが、他の警察小説とは一味も二味も違う。

まず、殺人が起きない。
そして犯人が皆とても善人である。

しかし、事件を追っていくと、何か違和感がある。
その違和感が久江を突き動かし、真実を追い求める原動力となる。

基本的にはミステリーである。
一見何気ない単なる傷害事件の裏に、心の闇がかくれている。
事件の動機が謎の中心である。
なぜ、犯人はそんなことをしたのか?
そこには、現代社会が抱える、人々の心の問題がある。
DV、ニート、性的マイノリティ、、、、

久江の優秀さは警察幹部の知るところなので、毎年のように警視庁捜査1課への移動を打診される。
しかし、彼女の断わりのセリフがとても良い。
「起きてしまった殺人事件の犯人を挙げるより、殺人事件になりそうな事件を解決することで、殺人を防ぐ仕事がしたい。」

実に渋い味わいのある刑事小説であり、大人の読者に受けるだろうなと思う。
あと、久江の恋(?)の行方も気になる。
続編があるなら読んでみたいね。