書く仕事

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「成功者K」羽田圭介

2017年05月27日 17時40分52秒 | 読書
「成功者K」羽田圭介



芥川賞を受賞した新進の小説家が、ファンの女性の中から美人だけを選んで、日本全国あちらこちらで手を出しちゃうお話。
羽田氏自身の私小説?と思わせるというか、そう思うでしょう普通!

読み始めてしばらくは、
なんじゃこりゃ!
悪趣味、お下劣な、女性にモテモテを自慢する成り上がり趣味小説!
みたいな散々な第一印象でした...
とにかく、内容は論外ですし、大人っぽく表現した文章のひとつひとつが皆、稚拙なのです。
文体が稚拙なのではなく、文意が稚拙なのね。
文章力のある高校生が書いたといえば近いかもしれない。
しかし、だんだんと読み進めるうちに、それらの稚拙さが、すべて計算されたもののような気がしてきました。この小説は凄いかもしれないと思い始める自分に気付いたのですね。

ある意味、実験小説とも言えるし、劇中劇ならぬ小説中小説として、新しい試みがなされています。

特に編集者の意見を聞いて推敲するとそれ以後の文章がガラッと変わったりするのも、面白い。おい、10ページ前とテイストが全然違うだろ!!
みたいな突っ込みを入れながら楽しんで読むことも可能です。

ただ、何というかな、例えば、筒井康隆氏の実験小説のようなインパクトはないかな。インパクトというか、小説としての「凄み」ですね。それは筒井の足元にも及ばない。
印象としては、「なかなかよく出来てるな」という感じです。


読者というのは気楽なものです。おそらく心血を注いで書いた芥川賞受賞後の第1作を「なかなかよく出来てるな」で済ましちゃうんだから。
この小説の主人公のKなら、なぐりに来るかもしれない。

「長いお別れ」中島 京子

2017年05月19日 12時23分00秒 | 読書
「長いお別れ」中島 京子




現代版「私小説」介護編
といえば,一番ぴったりくるかも.

老いた親の介護を,物語や他人事でなく,厳しい現実のものとして晒している.
全てのリアルな介護現場を赤裸々に語っています.

そういう意味で,非常に啓発的価値があるように思います.
同時に,私のような中高年の人間には,明日どころか今日のわが身かもという切実さを感じさせられるほど,痛い痛い現場を見せつけられます.

表紙の帯に書かれている,浅田次郎さんや村山由佳さんのコメントは,私から言わせれば,「違うだろ!!」と突っ込みたくなるものです.
帯なんてだいたいそんなものですが,それを期待して読み始めると腹立ちますよ.