書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

人生,巻き戻せるなら,どこまで巻き戻す?

2009年03月26日 18時38分34秒 | 日記
誰しも一度は考えたことがあるんじゃないかな?

「さっきの一言いうんじゃなかった.30分前に巻き戻したい!」
てのもあるでしょうし,
「高校の数学から勉強し直したい!」
とか,
「中学時代に巻き戻して,初恋の彼女に告白したい!」
とか,いろいろありそうですね.

幼児なんてのは自分中心に考えますから,人生をやり直したいなんて考えないわけですよね.
しかし,分別が付き,自分を客観的に眺められるようになると,後悔もするし,人生をやり直したい,という発想も出てくるだろうと思うわけです.

「やり直したい」という逡巡は,その人が自分の人生を,どこの時点から,肯定できなくなったかを表しているようです.

私の場合,大学入学時に巻き戻したい,と思っていた時期がありました.

私が就職した部署は,研究所というせいもあって,新入社員の70%が修士課程修了者だったし,博士の新人も10%くらいいましたので,まわりが皆優秀に見えてしかたなかった.
実際,皆優秀で,はっきり言って劣等感にさいなまれることもしばしば.

ただ,専門知識については,意外にコンプレックス感じないのですよ.
というのは,卒論や修論はテーマが細かいというか,特定の分野を極限まで掘り下げて勉強するので,他人の専門なんてちんぷんかんぷんだけど,逆に,自分の研究テーマも他人からみたら,意味不明だから,劣等感ををいだくような種はないのです.

しかし,一般教養はだめ,そうはいかない.
コーヒー飲みながら雑談していると,すぐにボロがでちゃうんだなあ.
私の場合,文学とか歴史とかの分野で,いわゆる「教養」の無さを露呈することがしばしばでした.

同時に,『こいつら,理系のくせに,なんで,こんなに歴史に詳しいんだ???』
なんて,逆切れしてましたから.
クラシック音楽では負けてなかったけど.
(勝負じゃないちゅうに)

また,私は電気系出身だから,力学が弱い.
台風の進路はコリオリの力で曲がる,とか言われても,コリオリなんて,はるか忘却のかなたに沈んでいるので,笑ってごまかすしかない.

そんなこんなで,大学1年に巻き戻して,一般教養からやり直したいなあと,思っていたのでした.

ただ,最近はそういう巻き戻し願望はほとんど無くなりました.

これも年の功というか,人生経験というか,つまり,「知らないことは知らない」と,堂々と言えるようになったおかげなのです.

これは,結構大事なことです.
知ったかぶりをすることは疲れるし,相手はこっちにその知識があるという前提で次の話に進んでしまう.
これは,仕事の上では,かなりまずい状況といえます.
ビジネスの成否に影響するかもしれない.

知らないことを知らないといえば,たとえ多少馬鹿にされることはあっても,相手はその前提で話を進めてくれるし,最低限必要な知識を与えてくれるでしょう.

もう一つ,最近気づいたことは,知らないことがあっても,それが,私という人間の価値を下げるものではないということなんですよ.

人は,その人の「持っているもの」によって評価されるのであって,「持っていない」もので評価されることはない,ということです.

持っていないものを悔やむより,持っているものを研く方がずっといいし,幸福への近道でもある.

久々の東京出張

2009年03月22日 21時48分49秒 | 日記


関東から熊本に移住して早7年経ちました.
この間,東京もずいぶん変わりましたが,やはり一番変わったのは品川駅ではないでしょうか?
特に,港南口側は新幹線ホームもできたし,汐留地区とつながり,コンコースを見ても以前の面影は全く無し.別の駅のようです.
写真は,そんな京浜急行との連絡口付近で見かけたかわいい郵便ポスト.
機能的設備ばかり並んだ駅構内でこういうオブジェ(?)を見るとほっとします.
変わったとは言え,人の多さは相変わらず.
熊本駅の人数と比べたら別世界です.
関東に住んでいたころは,この人口密度が当たり前だと思っていましたが,熊本に住んでからは,やはり東京の人の多さは異常だと思うようになりました.
電車に乗っていても,自分の半径1m以内に10人以上も人がいると,やはりストレスを感じますし,そう感じるのが正常な神経だと思います.
この人の多さに慣れることが逆に怖い.
気がつかないうちにストレスが溜まっていくのじゃないかという恐怖感を感じます.
もちろん,仕事は都内でも,家は郊外という人が多いと思うので,それならば,大丈夫なんでしょうね.
朝晩や休日は緑に触れることができるし.
都内のマンションに住んで,都内で仕事している人って,どうなんだろう?
メンタルが丈夫な人なら大丈夫なんだろうか?
私はたぶんダメですね.

卒業記念パーティ

2009年03月21日 18時09分09秒 | 日記
卒業式のシーズンですね.

私の学科は,最近の数年間,市内のKKRホテルで卒業記念パーティを開くことが多いのですが,実は卒業生がここのホテルマンをしていて,彼の強力な営業活動の結果,そういうことになっているのです.

ところで,このホテルでの面白いルールをひとつ紹介します.

このホテルの売り物のひとつにロケーションのよさがあります.
それは熊本城の天守閣を一番いい角度で,直近で見ることができ,しかもその天守閣をバックに記念撮影できる撮影場所があることなのです.

面白いルールとは,集合写真は,ホテル専属カメラマンによる有料の撮影しかやってはいけない(!)のですよ.
つまり,自分たちで勝手に集まって,集合写真を撮ってはいけないのです.
個人や数人での撮影はOKだそうですが,全員の集合写真がダメらしい.
たぶん,写真屋さんとの契約なんでしょうね.

目くじら立てることもないし,むしろ微笑ましいくらいのルールですがね...

ここは,料理はおいしいし,公共らしく高くないのでよく会議やパーティなどでよく利用します.

少なくとも,他の「一流」ホテルよりコストパフォーマンスはずっと良いです.

「リアルワールド」 桐野 夏生

2009年03月16日 11時44分25秒 | 読書


トシ,テラウチ,ユウザン,キラリンの4人の女子高校生に加え,母親を殺してしまった男子高校生ミミズが主な登場人物.

ミミズはトシの隣家に住むが,ある日,積年の恨みをもつ母親を惨殺してしまう.

逃亡しようとするミミズに,怪しいと知りながら,かばうトシ.それを知り,さらにミミズに手を貸してしまうテラウチ,ユウザン,キラリンたち.

実は,彼女らもそれぞれ家族や人生に深い悩みを持っていて,それから逃避したいという想いからミミズを手助けするのだが...

心の闇は,なにも大人だけのものではない.
高校生ともなれば,子供の無邪気さとおとなの狡さの間で必死に自分を守りつつ,見えない将来を探っていかなければならないわけで.

ただ,正直言って,彼女らに対する共感はないですね.
当たり前だけど.あっちゃ大変だし.

そのせいかなあ?感情移入がない分,「楽に」読めたというメリットはありました.
心の痛みを感じることなく読み進められたという意味で.

あと,若者の描き方としてして,「うまいなあ」と思ったことをひとつ.
彼女らは,自分達の不幸や不運をものすごく悲惨に(実際悲惨なんだけど)感じる一方,他人の不遇については,そんなの大した不幸じゃないと,切り捨てるセリフがところどころに出てくるんですよ.
他人の境遇への思いやりを持てないところの描き方はさすが直木賞作家だと思い,感心しました.

ところで,桐野夏生さんって女だと思っていました.
なぜかなあ?
思い込みですね.

ちょっと,coollife的には微妙な評価だなあ,ということで.

「君たちに明日はない」垣根 涼介

2009年03月05日 15時40分52秒 | 読書


主人公,真介はリストラを専門に請け負う会社の面接官という仕事をしています.

皆さんご存知でしょうが,指名解雇は違法です.
つまり,会社側が,正当な理由無く「君はクビだ!」と宣言することは法律上許されていないわけですね.

しかし,辞めてほしい社員が,自分の方から,辞めますと言ってくれば,会社側としては,こんな都合のいい話はない.

そう,彼の仕事は面接を通じて,相手に「じゃあ私辞めます」と言わせる仕事なのです.

当然ながら,最初は,相手はリストラされるのは嫌がりますから,泣いたりすがったり,あらゆる方法で,逃れようとする.

しかし,真介は緻密なデータに基づく巧みな話術で相手の心境そのものをチェンジさせ,いつの間にか,高確率で「落として」しまうのです.

たぶん,わが身に降りかかれば笑っている場合ではないのでしょうが,第三者として見ている分は,面接のシーンは面白いというほかない.

刑事コロンボが犯人を追い詰めるのをワクワクしながら見ている心境に近い.

そして,許せないことに,真介はかつて面接対象であった陽子と恋人関係になっている.
これって,セクハラとちゃうか?と思わせますが,実は陽子の方も真介を気に入っていて話がややこしい.

物語の根底を流れる垣根氏のスタンスは,大事なのは,「会社に残れるか」否かではなくて,「会社に残って何をするか」なのだということなんですね.
解雇される方の社員を決して暖かい目で見てはいない.
むしろ,その人がどういう想いで仕事を生きがいにしていくかを問い詰めるようなセリフが多く出てきて,ハッとさせられることが多い.

ま,フィクションですから,派遣切りなどの現実の切実な問題とは一線を画する話ではあります.
しかし,「仕事」というものに対する考え方を鋭く問われるお話には,間違いなくなっていると思います.

真介と陽子のラブロマンスは,う~ん,そうですねえ.
やっぱり,非現実的かな?