書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「嘘をもうひとつだけ」東野圭吾

2020年08月26日 21時10分07秒 | 読書
「嘘をもうひとつだけ」東野圭吾


東野圭吾を連読.

やはり外さないな,この方は.
5編の加賀恭一郎シリーズからなる短編集.

いずれも犯人目線から書かれた,いわゆる倒叙もの.つまり,犯人は最初から分かっていて,加賀恭一郎が犯人を追い詰めていくという物語.
刑事コロンボと同じ形式です.

ただ,新参者シリーズとも共通しているのだけど,犯人が置かれた立場とか,やむに已まれぬ事情で犯行に至った経緯みたいなものまで推理し,犯人への温かい視線を感じることができるのが,他の倒叙ものと大きく異なる点だと思う.
罪を憎んで人を憎まず,というところか.

サスペンスとしての爽快感とかカタルシスとかとは異なる,読んでいて心が和む(妙な表現だな!)珠玉のミステリー集ってところ.

「なぜ生きる」明橋大二,伊藤健太郎著 高森顕徹監修

2020年08月20日 16時10分07秒 | 読書
「なぜ生きる」明橋大二,伊藤健太郎著 高森顕徹監修


苦悩の中に居る人にとって,人生はなぜこんなに辛いのか? 自分は何のために生きているのか?
また,一方で平々凡々としたぬるま湯のような毎日を生きる人にとっては,俺の人生はこんなもので良いのか? 自分は何のために生きているのか?
人間って勝手なもので,辛ければ辛いで,暇なら暇で自分の人生を嘆く.
嘆かないと,生きている意味がないかのようだ.
この本は,そんな人たちの救いとなるべく,親鸞聖人が残した言葉を吟味し,人生の真の目的とは何かについて解説した啓発本という風に見える.

そして私が,なぜ,この本を手に取ったのか?
正直言って,そんな心境になったわけでは全くない.
実はコロナ禍で本の入手が難しくなった5月か6月ごろ,自宅の本棚をあさっていたら,この本が出てきた.
実は全く記憶にないのだが,おそらく,何十年も前に,当時若かった自分が,自分の人生に疑問を持った?かどうか,これも記憶にないが,出張先ででも買ってきて,そのまま忙しくて本棚に立てたまま,忘れてしまったらしい.

で,読んだ感想なんですが...

あたしにゃわからん.

ごめんなさいです.降参.

「赤い指」東野圭吾

2020年08月18日 21時54分13秒 | 読書
「赤い指」東野圭吾


加賀恭一郎シリーズの第7作目.

家族が居て家もあり,経済的にも安定していても,目の前の快楽だけにしがみつき,お互いに憎しみを募らせ,破滅への道を辿ってしまう一家の悲劇が描かれる.

その中でひたすら幸せな関係を探そうとする老いた母の苦悩.

東野圭吾の小説は好きだが,この小説は特に良い.
新参者も良かったが,この本も同じくらい好きだ.

単に犯人を追い詰めるのではなく,犯人の将来の心の傷をも考慮して,再生の道を残して逮捕までの道のりを定める恭一郎の思いやりと洞察に胸が熱くなる.

それにしても,"困ったときの東野圭吾"にふさわしく,このブログを検索してみると35冊も読んでるわ.
一応,タイトルだけ列挙しときます.

「ダイイング・アイ」
「危険なビーナス」
「夜明けの街で」
「天空の蜂」
「疾風ロンド」
「ナミヤ雑貨店の奇跡」
「眠りの森」
「レイクサイド」
「カッコウの卵は誰のもの」
「魔球」
「禁断の魔術」
「マスカレードホテル」
「麒麟の翼」
「真夏の方程式」
「白銀ジャック」
「宿命」
「卒業」
「悪意」
「犯人のいない殺人の夜」
「しのぶセンセにサヨナラ―浪花少年探偵団・独立篇」
「鳥人計画」
「毒笑小説」
「ある閉ざされた雪の山荘で」
「新参者」
「探偵ガリレオ」
「パラドックス13」
「虹を操る少年」
「白夜行」
「名探偵の掟」
「手紙」
「予知夢」
「秘密」
「むかし僕が死んだ家」
「片思い」
「わたしが彼を殺した」

「満月の泥枕」 道尾秀介

2020年08月11日 14時33分06秒 | 読書
「満月の泥枕」 道尾秀介


前回の投稿が4月4日なので,4か月以上も読書感想をアップしなかった頃になる.
久々の投稿は,道尾秀介.

自分の落ち度のために大切な人を死なせてしまうという,やりきれない哀しみを抱えた主人公「二美男」
大切な人とは彼の大切な4歳の娘,「りく」だ.
二美男はペンキ塗装業を営んでいるが,うっかり仕事場のペンキ缶の蓋を閉め忘れ,仕事場でかくれんぼをしていたりくが,シンナーが充満した室内で窒息死してしまう.

この事件以来,すべてがうまくいかず,妻とも別れ,めちゃくちゃな退廃生活に陥っている.

そんな二美男と,ひょんなことから面倒を見る羽目になってしまった,10歳の少女「汐子」
汐子は二美男の兄の娘,つまり姪に当たるのだが,兄は死に,兄嫁は育児放棄してしまったことから,親せきから頼まれて汐子を引き取って養うことになったのだ.

幼い娘に死なれ,自分を苛みながら生きる二美男と,親と暮らせずに寂しいはずの汐子.
こんな二人が,ある殺人(未遂?)事件に関わってしまう.

当然,ミステリーなんだけど,道尾秀介さん独特の,人間模様が入り組む複雑な展開を見せる.
気が付くと,一つの殺人事件が,2つの事件になっているという,予測不能な人情ミステリー.

人は哀しみを糧として生きていけるのか?
自分の過ちで人を死なせたら,その罪はどうやって償えばよいのか.

結構,重たいテーマを掲げながら,物語のタッチはかなり,軽くてユーモアにあふれている.
この編の空気は道尾秀介さん独特のものだ.