書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「八日目の蝉」 角田 光代

2016年01月30日 00時58分06秒 | 読書
「八日目の蝉」 角田 光代



角田光代さんの作品としては,「ツリーハウス」「紙の月」 に続いて3冊目.
読書仲間のMさんの推薦で読み始めた1冊.

普段,ロジックと倫理の世界で生きている(?)大学の先生としては,女の情念というか,論理では説明できない,ぐじゃぐじゃの世界は大変興味をそそられる.
怖いもの見たさ,みたいな心理が働いていると思う.

どう考えても,うまく行きそうにない破たんした生き方を,なぜか選んでしまうヒロイン希和子.

理不尽な仕打ちを受けた時に,男だったら,議論で相手をやっつけたり,法律的手段に訴えたり,いくらでも解決の手段があるのに,なぜか,自分が法を犯してまで,最悪の手段を取ってしまうのだ.
妻子ある男性に惹かれ,子供を身ごもった途端に相手が逃げ腰になるというのは,良くある話だろうが,彼に強引に説得され,その子供を堕胎させられてしまう.その結果,二度と子供を産めない体になってしまう.
そんな状況の中で,あろうことか,彼の実の子(女の乳児)をさらってしまうという信じられない行為に及ぶのだ.
そして,希和子は,さらった乳児を連れて逃避行を重ねる.
逃げて逃げて,逃げまくる.
行く先々で幸運にも一時的に身を隠すことに成功するが,長続きするはずもなく,破綻を繰り返す.そして,さらに逃げる.

後半は,その乳児の成長した後のストーリーにつながるが,この娘がまた,希和子とは血は繋がっていないのに,希和子の影響を受けたのか,ややこしい人生を歩いている.

こういう,プログラミング不可能(?)な女の生きざまを,活き活きと,読者を引きずり込むように描き切る筆力は角田さんの独壇場だと思う.

しかも,全く論理的でない,言ってみればめちゃくちゃな生き方が,彼女にとっては,他に選択肢がなかったかのように思えてしまうのも,角田さんの凄さである.

一気読みである.

「海を見ていたジョニー」 五木寛之

2016年01月23日 22時34分26秒 | 読書
「海を見ていたジョニー」 五木寛之



昭和20~30年代のノスタルジーと厭世感

五木寛之の珠玉の短編集です。

戦争が人間性を蹂躙することが残酷なまでに描かれる。
戦争で失った青春を取り戻すかのように、ひたすら仕事にのめり込む男たちの心の葛藤と、成功しても どこか満たされない思い。

これらの作品に共通する五木寛之の精神世界は、満州や朝鮮で受けた心の傷が出発点になっていることがよくわかる。

なぜ戦争がいけないのか?
それは、人間が人間でなくなるからだ。

A総理に是非読んでもらいたい小説である。

「美しい家」 新野 剛志

2016年01月17日 23時41分05秒 | 読書
「美しい家」 新野 剛志



「八月のマルクス」を借りようと思って図書館に行ったのだけど、貸し出し中で借りることができなかった。
同じ新野 剛志さんの本があったので、これを借りてきました。

家族という絆を持たない人たちが、理想的な家族を求めて作った集団。
そこで起きた殺人事件を、誤った形で記憶する若者たちの迷走する物語。

ちゃんとした愛情に包まれて育った人(おそらく世の中の90%くらい)はそうだと思いますが、人の善意を信じるものだし、人に善意を示すことに喜びを感じるものです。

しかし、親からの愛情を受けずに育つと、善意というもの自体が理解できないし、無償の愛というものも想像すらできない。

この小説の登場人物の大半がそういう愛を知らない人たちで占められている。

小説全体が、クールな雰囲気に包まれているし、例え殺人が起きても、それがまるで大したことではないかのよう。

ある意味文学的と言えば言えるかもしれない。

一応ミステリーなので、最後に謎解きはあるのだけど、今、真実が解って一体何になるの?という感じで、カタルシスはほとんど感じない。

微妙といえば微妙な小説だが、凡庸か素晴らしいかと問われれば、間違いなく素晴らしいと言える小説だ。

1月5日(火)のつぶやき

2016年01月06日 02時44分03秒 | 日記

獣と心を通わせることのできる少女エリンの数奇な運命を描く壮大なファンタジー goo.gl/0d8pXj


獣と心を通わせることのできる少女エリンの数奇な運命を描く壮大なファンタジー goo.gl/7ULKMa



「獣の奏者 Ⅰ 闘蛇編」上橋菜穂子

2016年01月05日 21時55分06秒 | 読書
「獣の奏者 Ⅰ 闘蛇編」上橋菜穂子



上橋菜穂子さんの小説は2冊目。
シリーズの第1作。

巨大な蛇や獣を戦争に使う国に生まれつつも、獣類と心を通わせることの出来る少女エリンが主人公。
エリンの数奇な運命をたどる壮大なるファンタジーだ。

蛇や獣を戦争に使う武器としてしか考えない大人たちの中で、ヒロイン、エリンは獣達に不憫さを感じている。
しかし、獣たちと心を通わせることができることから、国の指導者に目を付けられることで運命が狂っていく。
実はエリンの母も同じ境遇だった。
しかも最後は男達の裏切りで壮絶な死をとげてしまう。
エリンの運命やいかに?

というところまで。

第2作目以後が楽しみです。

2015年に読んだ本

2016年01月02日 21時14分07秒 | 読書
恒例の、昨年読んだ本のリストです。
ご興味のある本があれば、このページの上の方にある検索窓に書名をペーストし、「このブログ内」で検索すると出てきます。
数字は読んだ順番。

No. タイトル 著者名
1 「ボトルネック」 米澤穂信
2 「沈底魚」 曽根圭介
3 「仮想儀礼」(上,下) 篠田節子
4 「神秘」 白石一文
5 「村上ラヂオ」 村上春樹
6 「カラフル」 森絵都
7 「今夜,すべてのバーで」 中島らも
8 「幻想即興曲 - 響季姉妹探偵 ショパン篇」 西澤 保彦
9 「銃とチョコレート」 乙一
10 「紙の月」 角田光代
11 「迷宮」 中村文則
12 「キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春編」 石田衣良
13 「疾風ロンド」 東野圭吾
14 「十二単衣を着た悪魔」 内館牧子
15 「物語のおわり」 湊かなえ
16 「あざやかな結末」 日本推理作家協会編
17 「ハサミ男」 殊能将之
18 「ふがいない僕は空を見た」 窪美澄
19 「晴天の迷いクジラ」 窪美澄
20 「居酒屋ぼったくり」 秋川滝美
21 「新参教師」 熊谷達也
22 「ブラック・ベルベット」 恩田陸
23 「イニシエーション・ラブ」 乾くるみ
24 「書店ガール」 碧野 圭
25 「書店ガール2 最強のふたり」 碧野圭
26 「書店ガール3 託された1冊」 碧野圭
27 「母性」 湊かなえ
28 「書店ガール4 パンと就活」 碧野圭
29 「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」 坪田信貴
30 「夜より黒きもの」 高城高
31 「ザ・ベストミステリーズ2015 (推理小説年鑑)」 日本推理作家協会編
32 「秋の牢獄」 恒川光太郎
33 「誰もいない」 小手鞠 るい
34 「サウンド・オブ・サイレンス」 五十嵐貴久
35 「6 シックス」 早見和真
36 「ホテルローヤル」 桜木紫乃
37 「一応の推定」 広川純
38 「カーボンコピー」 幸田真音(こうだまいん)
39 「誘拐ラプソディ」 荻原浩
40 「鍵のない夢を見る」 辻村 深月
41 「あなたの本」 誉田 哲也
42 「ドルチェ」 誉田哲也
43 「舟を編む」 三浦しをん
44 「硝子のハンマー」 貴志祐介
45 「ファウル」 安藤公章
46 「尋ね人」 谷村志穂
47 「東京ダモイ」 鏑木蓮
48 「ちょっと今から仕事やめてくる (メディアワークス文庫)」 北川恵海
49 「天空の蜂」 東野圭吾
50 「狐笛のかなた」 上橋菜穂子

50冊なので、ほぼ週に1冊のペースでした。
これまた、恒例のマイベスト。
今年は5編選びました。

10 「紙の月」 角田光代
18 「ふがいない僕は空を見た」 窪美澄
23 「イニシエーション・ラブ」 乾くるみ
25 「書店ガール2 最強のふたり」 碧野圭
43 「舟を編む」 三浦しをん

やっぱり私の頭の中身と同じで一貫性のない選択かな?