書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「神のダイスを見上げて」知念実希人

2021年03月26日 22時52分05秒 | 読書
「神のダイスを見上げて」知念実希人


巨大小惑星「ダイス」が地球に接近し,衝突の可能性があるという.
衝突確率は,政府発表では「極めて低い」ことになっているが,ネット情報や特定の知識人のSNSによると,無視できない値だという.
そんな混乱の世の中で,奇怪な殺人事件が起きる.
被害者は美貌の女子大生「漆原圭子」.
この物語の主人公である男子高校生「漆原亮」の姉である.
亮君にとって,姉の圭子はただ一人の肉親であり,最愛の家族でもあった.
そして,姉が殺されたのは,小惑星「ダイス」が地球に最接近する(または衝突する)日の5日前であった.
亮としては何としてでも,ダイス衝突前に犯人を捕まえたいが,警察は治安を守ることに躍起となって,事件の捜査にはほとんど力を入れようとしない.
ミステリーとしては,なかなか手の込んだ面白い物語になっていて,飽きさせない展開だ.
最後の二転三転のどんでん返しも面白かった.

ただね,登場人物のメンタルが皆,壊れているのがね...
亮君は極度のシスコンだし,殺された姉の圭子にいたっては...いや,ネタバレになるのでやめておこう.
亮のクラスメイトや,捜査に当たる刑事たちも,皆,え?っていう人格を持っているのが驚きだ.
まあ,地球が滅びるかもしれないっていう時期なので,人々の精神状態も異常になってしまうんだろうと推察して,違和感を横に置きながら読むんだろうと思います.
それを割り引いたとしても,やはり面白い小説でした.
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「こうして誰もいなくなった」有栖川有栖

2021年03月16日 11時06分04秒 | 読書
「こうして誰もいなくなった」有栖川有栖


タイトルを見れば,アガサクリスティのあの名作を連想しますね.
原作に対するオマージュかなと思うじゃないですか?
でも,違います.
有栖川有栖さんは,あとがきにも述べられていますが,アガサクリスティの原作に対する不満があるようです.
アガサの原作は小説としては面白いが,ミステリーとしてはどうなの?という疑問です.
実は私もそう思う.
そこで彼は,有栖川有栖は考えた.
同じプロットで,ミステリーファンが満足する小説を書いてやろう,と.
骨組みはよく似ていますが,全く違うコンセプトになっています.
しいて言うなら,サッカーとラグビーくらい違う.
有栖川さんの方がラグビー. → 個人の感想です

なお,表題作は130ページ程度の中編です.
この他,様々なジャンルのショートショート乃至短編の計14篇が収録されていて,さながら有栖川見本市のようです.
有栖川ワールドを堪能できる一冊でしょう.
この本とコーヒーとピーナツチョコがあれば,午後の幸せなひと時を過ごせること請け合いです.あ,コーヒーとピーナツチョコと有栖川ファン限定ですが.
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「カエルの小指」道尾秀介

2021年03月02日 12時16分57秒 | 読書
「カエルの小指」道尾秀介


「いけない」に続き,道尾秀介さんの小説.
この小説の骨子を為すのは,「騙し」.
ただし,何のための騙しか,ということが重要で,もちろん,お金を稼ぐための犯罪という場合もあるが,それ以外にも,誰かを守るためとか,誰かの心に希望を与えるためというようなこともある.
ある意味,様々な種類の騙しのデパートみたいなストーリーになっている.
主人公の武沢竹夫は元詐欺師だが,ある事件が原因で足を洗い,今は出張販売員(ショッピングセンターの隅で卓を広げて口先一つでものを売る)で細々と暮らしている.
その武沢君は,十数年前にある女性の命を救ったことがあり,その子供(中学2年生)が彼を訪ねてくるところから物語が始まる.

物語的には,ここで簡単にあらすじを書くことは不可能なほど入り組んでいるので省略しますが,とにかくあちこちに無数と言っていいほど伏線が張り巡らされ,付いていくのが行くのが大変です.
ただ,道尾さんの他の小説,例えば「カラスの親指」なんかに比べると,伏線の糸の長さが短いというか,数ページ先にはその意図が解説されるので,「?」が蓄積して頭がパンクすることはないです.ある意味,謎と答えが10分ごとに繰り返されるような感じ.
時の経つのを忘れて,ストーリーと謎ときに集中できます.
それにしても,こんなややこしいお話をよく組み立てられるものだと,感心してしまいます.
お腹いっぱいです.
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