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「あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続」宮部みゆき

2020年09月22日 12時04分16秒 | 読書
「あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続」宮部みゆき


江戸の町の不思議な世界を描く宮部みゆきの三島屋変調百物語シリーズ.
最新版から一つ前の作品.文庫本ではこれが最新だが,単行本は次が出てますね.

範疇としては怪談本なんだけど,描いているのは人情です.
親子,兄弟姉妹,夫婦の人情.
長屋の大家と店子の人情.

どんな世の中でも,人と人を結び付けているのは「情」です.
皆に大事な人があり,その大事な人のために辛い仕事を頑張る.

ただ,どんなに頑張っても,うまくいかないこともあれば,失敗を繰り返し,誘惑に負け自暴自棄になることもある.
そんな心の隙間にするりと入り込んできて,不幸の種を植え付けていく「あやかし」たち.

その「あやかし」のそそのかしに乗ってしまい,身上を潰してしまう,最悪の場合,大事な人の命も失ってしまうことも.

「あやかし」にも素性の良いもの悪いものがあり様々.

今作は5つの物語からなるが,coollife的には最後の「金目の猫」がお勧め.

物語の聞き手を務めてきた「おちか」さんがついに嫁入りすることになるいきさつも含まれ,あやかしも心根の良いもので,読んでいて本当に心が和むお話に仕上がっている.