書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「やぶへび」大沢在昌

2016年05月22日 22時54分25秒 | 読書
「やぶへび」大沢在昌


主人公は元警官の甲賀。

警官をやめる羽目になったのは、やくざの女房の女性に,そうとは知らず手を出してしまい、それをネタに夫のやくざからゆすられたことが原因。

身から出た錆なんだか、一事が万事、超がつくほど女運が悪い。

今となっては,やくざまがいの日々を送る甲賀だが、ある日、知り合いから偽装結婚の話を持ちかけられ、50万の謝礼欲しさに引き受けてしまう。

しかし、その相手の中国人女性について何の情報も得ないうちに、彼女がある事件に巻き込まれ,怪我をして,同時に記憶喪失になってしまう。

困り果てて右往左往するうちに彼女を連れ去ろうとする怪しげな連中が次々に現れる。
一体、何者なんだ、この女は!
って感じで、ジェットコースター的に事態が進展する。

なかなか面白かった。
ハードボイルドと言えばハードボイルドだけど、そこはかとないユーモアや、痛快なアクションもあり、意外な結末もあって、楽しめた。

旅のお伴に良いかも!

「梟のシエスタ」伊与原 新

2016年05月11日 00時16分47秒 | 読書
「梟のシエスタ」伊与原 新


この著者の作品は初めて.

ふふふ,と笑いながら楽しく読めた.

なぜかというと,ある地方大学の学長選挙にからむお話なもんで,大学内のいろいろな場面の描写が私の日常と重なってしまうからだ.

〇〇委員会での仕事の押し付け合いとか,センター試験の監督が地獄だとかね.

また,主人公が面白い.語り部は「私」こと,吉井助教と,もう一人は通称フクロウと呼ばれる袋井准教授のダブルキャストね.

吉井の方は,なかなかデキるんだけど,基本真面目で嘘がつけないタイプ.しかも.今の上司(教授)とうまく行かなくて,他大学の教員公募に毎月のように応募している.
この辺もニヤリとさせる.
一方の,袋井は,そうですねえ,どう表現すべきか? チームバチスタの白鳥と,奥田英朗さんの空中ブランコやインザプールに出てくる伊良部医師を足して2で割ったようなキャラ.想像できないすね.

まあ,気になったら読んでみてください.
続編を匂わせる終わり方なので,次が出ていないか探してみます.
妙な誉め方ですが,登場人物の名前の付け方が巧みです.



「インド クリスタル」篠田節子

2016年05月08日 13時50分25秒 | 読書
「インド クリスタル」篠田節子



水晶デバイスメーカーの社長,藤岡は,ハイテク電子機器用の人口水晶を作るための種石として,理想的な性質を持つ石英を求めて世界を駆けまわっていた.

これまではブラジル,オーストラリア,中国などから輸入していたが,高品質なものが少なくなり,買い付け先としてインドに出向いた藤岡だった.

しかし,それまで経験した国とは全く商習慣や民族性の異なるインドで,様々な困難にぶつかる.

インドでのビジネスの紆余曲折に,微妙に絡んでくる一人の先住民の少女ロサの存在が,物語の行方を大きく左右することになる.

最初は,インドでのビジネスに悪戦苦闘するエリート社長のサクセスストーリーと思いきや,お話は全く予想外の展開を見せる.

インドの抱える根深い因習,社会構造の複雑さと,今もインド各地で起きているテロや悲惨な社会問題が暴かれる.

ロサは最初は魅力的かつ神秘的な存在として描かれているが,実はインドの持つ悲惨な状況,とくに下層階級の女性の悲惨さを逃れるための必死の努力が隠されていることが分かってくる.

フィクションとは言え,読んでいて,胸が痛くなる物語だ.

上流階級というか上澄みのさらに上澄みのエリートしか見えない日本にとって,本当のインドを知る貴重な啓蒙書と言えるかもしれない.

「仮想儀礼」を読んだ時にも思ったが,篠田節子さんの取材力は凄い.

この人の書いたルポルタージュがあれば読んでみたいものだ.