書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「塩狩峠」 三浦 綾子

2016年10月23日 18時35分53秒 | 読書
「塩狩峠」 三浦 綾子



坂道で列車のブレーキが外れ,暴走し始めた.
それを止めるために自らの体を投げ出した,実在の牧師さんをモデルとした長編小説.

小説では永野信夫(モデルとなったのは北海道で鉄道会社に勤め,牧師として伝道に務めていた長野政雄さん)が主人公.
彼の幼少時から,成長とともにキリスト教に傾倒していく過程と,最後の事故が痛切なタッチで描かれます.

私はクリスチャンではないものの,敬虔なクリスチャンも無神論者も,心の内面の動きはそう変わるものではないと思っています.しかし,この主人公はさすがに違うようです.
自己犠牲が,そのまま神のご意志として行動できる人なのです.

宗教とは不思議です.

論理と非論理の境界を無くしてしまう.

何が善で何が悪か,まったくわからなくなる.

「みかづき」森 絵都

2016年10月14日 15時46分57秒 | 読書
「みかづき」森 絵都


教育の本質を鋭く問いつつ,ホームドラマ的なエンタテイメント性もあり,楽しくて悲しくて,ためになる小説.
大島吾郎は高校を中退し,まともな職に就くことができないまま,小学校の用務員として雇われ,侘しい独身生活を続けていた.
毎日暇そうにしている吾郎だが,ある時,生徒が,「宿題ができないから教えて!」と言われ,何気なく教えてあげたところ,その子が先生や友達から聞いても理解できなかったのが,吾郎の臨時家庭教師でできるようになった.
そのことが評判になり,私も私もと,次々に宿題を見てほしい子が現れる.
この吾郎さんが後に独立し,塾を立ち上げ,その子供や孫たちも,それぞれの世代で教育に情熱を注いでいく.
まあ,親子三代の「教育系大河小説」みたいな...

いやあ,面白かったです.
頭でっかちな文科省や所詮空の高みからしか生徒を見ていない学校教師とは異なり,地面の上で,困っている子供たちにわかることの喜びを教えるという「教育の原点」を思い出させてくれます.

「西一番街ブラックバイト 池袋ウエストゲートパークXII」 石田衣良

2016年10月04日 10時04分44秒 | 読書
「西一番街ブラックバイト 池袋ウエストゲートパークXII」 石田衣良



おなじみの池袋ウエストゲートパークシリーズの最新作

埼玉に住んでいる私の長男が同じ本を買ったようで,石田衣良のサイン会でこの本のサイン本を手に入れたらしい.
くやしい!

それはともかく,書評ですが,いつもの世相や若者風俗を反映したリアルタイムストーリー的な.
少子化による廃校跡を利用したギャラリーでの盗作事件,ユーチューバーの苦悩,悪徳美容整形病院,そして,今を時めくブラック企業のお話.
これらを,マコトとタカシそしてGボーイズが小気味よく解決していく.

今回は,というか最近の同シリーズでは,キングたかしがやや経営者っぽくなってきて,微笑ましいのと,マコトがあまりに変わらなくて,これも微笑ましい

水戸黄門と同じで,安心して見ていられる感100%のシリーズ.