書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

城南温泉

2010年07月25日 17時39分41秒 | 日記
家にいても暑いばかりなので、近くの温泉にでも行こうということになって、かみさん、娘、私の3人で城南温泉に来ました。
もともと風呂ぎらいな私ですけど、こんな日は別。
さっぱりしました。
今、風呂上がりで、女共の長湯を、冷房の効いた畳の待合室でこの日記を書きながら待ってます
彼女らが上がったら、晩御飯をどこで食べるか、家族会議です。

「天地明察」冲方丁

2010年07月24日 13時53分34秒 | 読書
「天地明察」冲方丁




作者名は「うぶかた とう」と読む.

小説だけど,人生の指南書.
人の価値は生き方で決まる,ということを明確に示してくれる.
しかも,めちゃくちゃ面白い.

主人公は,碁打ちを職業とする安井家の長男,安井算哲.
時は,徳川4代将軍家綱の頃.

当時,宣明暦という中国古来の暦が使われていたが,種々の誤差が指摘されていた.
日食・月食などもことごとく予測を外していた.
しかし,時の朝廷や陰陽師達がこの宣明暦に頼った占いをしており,改暦には反対であった.
そのような情勢の中で,算哲は保科正之の命を受け,天下の改暦事業に乗り出す.

さまざまな試練があり,改暦事業にも2度も失敗することになる.

しかし,...

という物語.

何度失敗しても,常に新たな目標を見いだし,次の一歩を踏み出す算哲.
彼の心の中には,『算術』に対する情熱が常に燃え続けている.

暦の数理面からのサポートをする人物として,あの関孝和が登場する.
関は我々から見ると,和算の大家であり,彼自身が改暦事業の指揮をとってもいいんじゃないかと思うが,実はそれにはある事情があり,できないのです.
この辺の物語も,「オトナの事情」をわかりやすく書いており,一筋縄ではいかない人生の指南書としての面目躍如である.

我々読者の生き方から考えると,別にそれが,算術である必要はなく,人が自分の一生をかけるに値すると思ったものなら何でもいいわけです.

この小説,いろいろなことを教えてくれる.

◇失敗は結果ではなく,その時点における経過である.
◇「逃げる」ことの先には決して幸せは待っていない.
◇本当に大事なことは言葉では説明できない.
◇妻を(夫を)愛し続けることのすばらしさ

指南書としてだけでなく,人生に対するおおいなる応援歌ともなっている小説だ.
この本を読めば,『結果を恐れて身がすくむ』,ということが無くなるような気がする.
大事なことは結果ではなく,その結果に対する対処の仕方ということ.
これは心強いフォローです.

夫婦愛の描き方も本当にすばらしい.
若くして亡くなった妻「こと」が算哲に向かって言うせりふ「ことは幸せ者でございます.」には多くの読者が涙するに違いない.

是非若い人に読んでほしい1冊.いやいや,年配になってからでも遅くないです.
今,この本を読んで,心の若さと健康を取り戻しましょう.

悦楽的読書生活

2010年07月03日 11時12分03秒 | 日記

本を読むことの楽しみって何でしょうね?

(1)生き方の教科書・参考書として
登場人物の生き方・考え方から教えられることがあります.
そうか,そういう考え方もあるのかという発見・気づきですね.
やはり,これが読書をすることの最大のメリットだろうな.
これまで,何度,読書で救われてきたことか!

(2)エンタテーメントとして
よく出来たストーリーを追いかけることは無条件に楽しい.
はらはらどきどき,もよし.
感動の涙もよし.
謎解きに頭をひねるもよし.

(3)電車待ち等の時間つぶしとして
これも多少はあるでしょうね.
私の場合,時間つぶしどころか,読書に夢中になって,電車を乗りそこねちゃう危険がある.
でも,携帯いじっているよりは,心の健康面でも,見かけの面でも良いかな.
古いといわれればそれまでだが,男女問わず,携帯いじってる姿が美しいとは思えないので.

(4)読書感想を書く楽しみ
変な話ですし,本末転倒かもしれないけど,読後感をこのブログに書くこと自体が目的化しているんですよね.

まあ,人によって様々だと思うけど,少なくとも私にとって本のない世界は考えられない.

一つ気がかりなのは,iPADが起爆剤となって,電子書籍化が進み,紙の本が売れなくなっちゃうと言うこと.

杞憂だといいけど?

「邪眼鳥」筒井康隆

2010年07月03日 10時49分50秒 | 読書
「邪眼鳥」筒井康隆



筒井の幻想文学.
事実と白日夢の交錯.
時代と人の交錯.

タイムトラベルやタイムパラドックスといったSF的要素も織り込みながらブラックファンタジーとも言える異様な雰囲気を醸し出す筆致は筒井康隆独自のもの.

論理的筋道は非常に弱く,話の途中で,気がつくと場面が変わっている.
時にはセリフの途中で別の場面になっていることも.
よく映画で,画面はそのままで,次の場面のセリフが語られ始めることがあるけど,あれとは違う.
いわゆるオーバーラップではなくて,全く不合理な場面転換である.その不合理性を狙っている気がする.

いつものドタバタやスプラッターは陰を潜め,昔隠した宝物さがしに固執する兄弟の心の裏側の描写が中心となる.
そういう意味で幻想文学というカテゴリーが一番近い気がする.

表現が適切かどうかわからないけど,非常に「文学的」作品だ.

『このような本が書けることを示すために書いた』という分析は深読みしすぎか?