書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「繁栄の昭和」筒井康隆

2020年02月22日 18時42分43秒 | 読書
「繁栄の昭和」筒井康隆


小説の実験的な様々な手法を試みた10篇からなる短編集.
まあ,実験なので,それを面白いと思うかどうかは人それぞれでしょうね.
個人的には,筒井特有のグロテスクさが迸る「一族ちらし語り」が面白かった.
実験的という意味で興味深かったのが,有名人が実名でぞくぞくと登場する劇中劇,「メタノワール」.
深田恭子や宮崎美子が出てきて,演技ではない,しゃべりをするので,ニヤッとしてしまう.

ま,そんなところで.


「裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパークⅩⅢ」石田衣良

2020年02月10日 22時07分03秒 | 読書
「裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパークⅩⅢ」石田衣良


このシリーズは全部読んだつもりになっていて,2018年の12月に「七つの試練 池袋ウエストゲートパークXIV」の感想をアップしました.
しかし,よく調べてみるとXIVの前にアップしたのはXIIで,ⅩⅢが抜けてる.
玉名の図書館で今回ⅩⅢを見つけて気が付いた.

それはともかく,このシリーズ,マンネリといえばマンネリなんだけど,出ると読んじゃう.そして,新たな社会勉強をしたという満足感をもって読み終える.
これって,すごいことなんだろうな.

今回のネタは,SNSの炎上,違法薬物,スピリチュアル,偽造キャッシュカードによる出し子の4つのテーマ.
最新ニュースネタというわけでもないが,相変わらずマコトとタカシのコンビが池袋のトラブルを痛快に解決していく.
XIVの感想にも書いたけど,出版されるとつい読んじゃうのは水戸黄門的というか,一定のハラハラドキドキと最後は必ずハッピーエンドという安心感があるからだと思う.
予定調和ともいえるが,読者の心に,安心感を求める気持ちがある限り,このシリーズが飽きられることはないような気がする.
つい最近XⅤが出たので,多分1年以内に読むと思う.

2019年に読んだ本

2020年02月08日 18時36分23秒 | 読書
2019年に読んだ本は下記の21冊です.

1 「ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~」三上延
2 「レアケース」大門剛明
3 「QJKJQ」佐藤究
4 「感情的にならない本」和田秀樹
5 「猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷」小路幸也
6 「よろずのことに気をつけよ」川瀬七緒
7 「真犯人」翔田寛
8 「あわせ鏡に飛び込んで」井上夢人
9 「ときどき旅に出るカフェ」近藤史恵
10 「モップの精は旅に出る」近藤史恵
11 「チェインギャングは忘れない」横関大
12 「たまさか人形堂それから」津原 泰水
13 「襲名犯」竹吉優輔
14 「臨床真理」柚月裕子
15 「偽りのラストパス」生熊直樹
16 「ダンデライオン」中田栄一
17 「合理的にあり得ない」柚月裕子
18 「嫌な女」桂望実
19 「マツリカ・マトリョシカ」相沢沙呼
20 「はじまらないティータイム」原田ひ香
21 「任務の終わり」上・下 スティーブン・キング[著] 白石朗[訳]

例年に比べて,大作・話題作が影を潜め,小粒というか山椒もピリリ的な佳作が多い気がしました.
それにしても,定年退職して,自由時間が増えたはずなのに読書量は全く増えてないですな.
人間,そんなものかもしれません.
amazonプライムで映画やドラマを見る時間に取られちゃった感あり.ははは.

「向田理髪店」奥田英朗

2020年02月08日 10時53分05秒 | 読書
「向田理髪店」奥田英朗


北海道中央部,今はさびれてしまった炭鉱町,苫沢町が舞台.
そこで理髪店を営む,向田康彦53歳.

若い頃は札幌の広告会社で頑張った時期もあったが,理髪業を営む父親がヘルニアで店に立てなくなったことを機に実家を継いだ.
康彦の視点から,過疎が進み活気を失っていく地方の日常と時々訪れる事件が描かれる.

康彦は理髪店は自分の代でおしまいと思っていたら,札幌で働いていた23歳の長男,和昌が突然店を継ぐと言い出した.
どうせ,仕事が面白くないとか,出世の見込みがないとかの理由で,家でも継いでやれという魂胆ではないかと,康彦としては面白くない.
そんな,康彦と和昌の父子関係を軸に,様々な事件や困難を通して,過疎地の課題と希望をほのぼのと描いた作品.
和昌君の若さと勢いが,保守的な康彦としばしばぶつかるが,事件を通して逆に絆が深まっていく過程に心がほっこりする.

他の奥田作品とは一線を画するテイストだ.これも良い.

「真夜中のマーチ」奥田英朗

2020年02月01日 22時28分21秒 | 読書
「真夜中のマーチ」奥田英朗


奥田英朗さんの小説は結構読んでるなあ.
「町長選挙」「インザプール」「空中ブランコ」の伊良部医師シリーズ3部作の他,「マドンナ」「サウスバウンド」「沈黙の町で」の計6冊読んでます.

この「真夜中のマーチ」の主人公はヨコケンこと,横山健司クン25歳.一応イベント会社の社長ということになっているが,実態は出会い系パーティの元締めと,金に困った女の子にアダルトビデオの出演を斡旋するような汚い仕事で食つないでいる.
ある程度の収入はあるが,一生遊んで暮らせるほどの儲けはなく,やくざとの付き合いもあって,余計な金もかかる.
そんな健司クンに,ひょんなことから一獲千金のチャンスが訪れる.
偶然,知り合いのやくざが密かに開いている賭場を目撃し,しかもその部屋の金庫に売上の数千万円が納められていることを知ってしまったのだ.
このお金を密に狙うのだが,犯行がばれてはやくざに殺されるので,完全犯罪にしなくてはならない.
そのために,必死に知恵を絞る健司クン.
ようやく練り上げた計画をまさに実行しようとしたとき,,,,,
あとは読んでのお楽しみ.

他の作品にも共通するのだが,奥田さんの小説は,主人公が真面目というか,一本気な性格で,それとは正反対で掴みどころのない狂言回し的かつ重要な役どころの人物が出てくる.
このお話にもそれに当たる三田総一郎クンという商社マンが出てくる.この三田君が実に面白い.
彼に加え,謎の美女クロチェ嬢が出てきて,ハチャメチャ・ドタバタの痛快犯罪ノベルとなっている.