書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「塔と重力」上田岳浩

2017年10月23日 14時31分16秒 | 読書
「塔と重力」上田岳浩



好みが分かれる作家さんです.
いわゆる文芸ものを好む人には,受けると思う.
分かりやすく言えば,芥川賞作品を面白いと思う人にはお勧め.

私のように,芥川賞より,直木賞,直木賞より,江戸川乱歩賞というミステリー好きには,「何じゃこりゃ?」
かもしれない.

これ以上書くと悪口のオンパレードになりそうなので,この辺で.
要は,「私にゃわからん」ということ.

「Ank: a mirroring ape」佐藤究

2017年10月16日 21時24分36秒 | 読書
「Ank: a mirroring ape」佐藤究




2026年の京都を舞台とした,SFホラー・パニック小説.

ウイルスでも,化学兵器でも,テロでもない.原因不明の暴動が古都・京都で発生する.
暴動と言うより,正確には人々の無作為な相手との殺し合いだ.

人類が初めて遭遇する,DNAに絡む悲劇.

現実世界でも,京都大学霊長類研究所はゴリラやチンパンジーの研究では世界をリードしているが,そこから派生したあるプロジェクトが,この事件に微妙に絡んでいる.
この辺のリアリティがこの小説に現実味と凄みを感じさせていることは間違いない.

類人猿から,猿人,現代人へと進化した過程には,理科の教書には決して乗ることのない,ある秘密が隠されていた.

この「科学的」な描写がSFの醍醐味を感じさせる.

SF好きのホラー好きにはたまらない小説だろう.

「つぼみ 」宮下奈都

2017年10月02日 23時58分22秒 | 読書
「つぼみ 」宮下奈都




宮下奈都さんの小説は、過去に「誰かが足りない」を読みました。
「誰かが足りない」は一言でいうと「男性的」な小説。
構成と主張の内容が明確で、ぶれがない。
良いにしろ悪いにしろ、言いたいことが明確なので、勝負は早い。

しかし、この「つぼみ」は何が言いたいのか自体が明確でない。よく読めばわかるけど、はたして、どれくらいの読者がそこまで読み込んでくれるのか?ということになる。

という前提での書評になる。

で、この本は良い本である。
この本の良さを、理解する読者が何割いるかわからないにも関わらず、私は素晴らしい小説だと思う。

というのは、人間は、本来あいまいな存在である。
その、本来あいまいな存在である人間が、恋愛に関して論理的であることはありえない。
社会的に論理的であると思われていた人間が、こと恋愛に関してのみ、否論理的な行動をとることは、決して、希なことではないということだ。
ま、この先は、この小説を読んで確認されることをお勧めする。