書く仕事

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「花が咲くとき」乾ルカ

2021年12月04日 14時03分16秒 | 読書
「花が咲くとき」乾ルカ


日常的なイジメにあっている小学生の大介.
イジメのうっ憤を晴らすため,彼は密かないたずらを続けていた.
隣の家に住む老人が育てている庭隅の「くちなしの木」の芽を,それが芽生えるたびにそぎ落とすことだ.
大介がそれを続ける限り,決して花は咲かないことになる.
しかし一方で,老人は,もしくちなしの花が咲いたら,「あること」をする,という賭けをしていたのだ.
そして,いくつかの偶然が重なって,くちなしの花が咲いてしまう.

心の奥深くにじんわりと染み込んでくる小説だ.
戦争という異常事態が人間性を踏みにじる悲劇を縦糸に,老人と子供のロードムービーを横糸に,旅の途中で出会った人々の人間性に触れることで,少年が少しずつ成長していく記録でもある.
そして最後に老人が下した決断とは...
そこは読んでお確かめください.
「人生の闇」と「微かに見える光」とを感じる小説です.