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「心中」がテーマ.
結構,新鮮でした.
今時,心中なんて「ありえね~」と思う私ですが,またしても石田ワールドに嵌ってしまうのでした.
現実が悲惨であればあるほど,死が甘美なものになる.
いわゆる[身分の差]カップルの悲劇.
男性は億万長者の父親をもつおぼっちゃま大学生スミオ.
頭も性格も良いが,小学生のときに母親の自殺を発見するという悲劇に会い,トラウマを抱えている.
女性は極貧の上,人間の屑みたいな父親から稼ぎを搾取され続ける美少女ジュリア.
いかにもでしょ?
次々と降りかかる障害.しかも避けられないものばかり.
世の中ってヤツは,二人の純愛をなぜこんなにも邪魔するのか?
で,二人で死のうということに.
逆説的だが,この二人,もし出会わなければ,なんだかんだ言いながら生き続けたに違いない.
知り合ったがゆえに二人して死の道を選ぶことになる.
人間の運命なんてそんなものかもしれないです.
一つ一つのエピソードがとても心に響く.
こういう,若者の風俗を心の襞に触れる形で描けるのは石田衣良氏の独壇場ですね.
あと,「親指の恋人」とは携帯メールのこと.
もちろん,直接の会話が重要だけど,メールでの会話がちょっと小説の雰囲気を転換するのに効果を発揮している.
最後の場面は賛否が分かれるかもしれない.
死を甘美なものとして描きすぎているかもしれないから.
私は,小説としてはこれでいいと思うけど,世の中,真似するアホがいるからなあ.
それが心配.