書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「親指の恋人」石田衣良

2009年01月30日 14時48分50秒 | 読書


「心中」がテーマ.
結構,新鮮でした.
今時,心中なんて「ありえね~」と思う私ですが,またしても石田ワールドに嵌ってしまうのでした.

現実が悲惨であればあるほど,死が甘美なものになる.
いわゆる[身分の差]カップルの悲劇.

男性は億万長者の父親をもつおぼっちゃま大学生スミオ.
頭も性格も良いが,小学生のときに母親の自殺を発見するという悲劇に会い,トラウマを抱えている.

女性は極貧の上,人間の屑みたいな父親から稼ぎを搾取され続ける美少女ジュリア.
いかにもでしょ?

次々と降りかかる障害.しかも避けられないものばかり.
世の中ってヤツは,二人の純愛をなぜこんなにも邪魔するのか?
で,二人で死のうということに.

逆説的だが,この二人,もし出会わなければ,なんだかんだ言いながら生き続けたに違いない.

知り合ったがゆえに二人して死の道を選ぶことになる.

人間の運命なんてそんなものかもしれないです.

一つ一つのエピソードがとても心に響く.
こういう,若者の風俗を心の襞に触れる形で描けるのは石田衣良氏の独壇場ですね.

あと,「親指の恋人」とは携帯メールのこと.

もちろん,直接の会話が重要だけど,メールでの会話がちょっと小説の雰囲気を転換するのに効果を発揮している.

最後の場面は賛否が分かれるかもしれない.

死を甘美なものとして描きすぎているかもしれないから.

私は,小説としてはこれでいいと思うけど,世の中,真似するアホがいるからなあ.

それが心配.

「風が強く吹いている」三浦しをん

2009年01月25日 16時42分57秒 | 読書


『箱根駅伝』
ここ数年,冬休みの年中行事として,紅白歌合戦とともに,毎年テレビで観戦しています.
そこらのテレビドラマより,遥かに濃密でリアルな物語が区間ごとに展開されるので,目を離せない.
早稲田のエース竹澤,山の神今井や,山の神童柏原,といったスターアスリート達の存在も憶えました.

この小説は,もりちえさんのブログで知ったのですが,読む前は,「事実は小説より奇なり」と思っていました.
事実を超える小説はありえないと思っていました.

しかし,読んでみて,少し,気が変わりました.
箱根のドラマは,確かに走っている本人の走りと表情を見ていて,感じ取ることができる.
それだけで十分感動します.
しかし,この小説は,自分以外のアスリート達との友情とか憎しみ,あるいはもっと複雑な想いの中で,自分の理想と現実とどう向き合えばいいのか,といった心の葛藤を,彼らが繰り返していることを知ることができたのです.
走ることがアスリート達の人生全体の中で,どういう位置を占めているかまでは,箱根の中継ではわからないわけですね.

言ってみれば,箱根という本番だけ見て,リハーサルを含めた彼らの全人生を見たつもりになっていたわけです.

でも,一人当たり1時間強の本番の,何百倍,何千倍もの時間が,テレビに映る前に,費やされてきているわけですね.
その辺のことがこの本を読むことですごくわかりました.

主人公は一応,天才アスリート「走(かける)」と彼の天賦の才能に惚れ込んで一緒に箱根を目指そうと誘う「清瀬」であり,彼らが弱小チームの中で,仲間とともに成長し,最後は箱根で...というストーリーです.

でも走や清瀬だけでなく,仲間達というのが皆,個性的ですばらしい.
ただ,彼らは走ほどの才能には恵まれていないし,その事実は自身が一番よく知っている.
しかし,「走ることの喜びは,天才だけのものではない」,「栄光にたどり着けないのなら,全ては無駄になるということでは,決してない」という,強いメッセージを感じます.

メンバーの1人が語るセリフ「陸上はそれほど甘くない.だが,目指すべき場所は一つじゃないさ」(458頁王子のセリフ)が読者に向けられていることは明らかです.

この小説,テーマは駅伝ですが,私達が日常生活で見失いがちな「生きる意味」を,「走る」という行為のもつ純粋さを題材にしてあらためて教えてくれる気がします.

ブログで脳を活性化

2009年01月24日 21時09分05秒 | 日記
何かを思い出そうとする努力が脳を活性化するそうで,日記を書くために,昨日・今日あったことを思い出すことは,とてもよい事だそうです.

でも,私の場合,日記というより,思いついたことや感じたことを書きなぐっているだけなので,記憶を探るという努力をしていないわけで,脳の活性化には役立っていないかもしれません.

食べたものでも思い出して書くようにしようかな?
お小遣い帳をつけるとか? いやいや,ないない.

ところで,夕べは何食べたっけ?
やばい!

派遣切り

2009年01月20日 23時08分30秒 | 日記
トヨタをはじめとして,多くのビッグカンパニーが次々に非正規雇用社員を切り捨ててます.
いろいろ批判もあるし,逆に企業なんだから,会社を守るのは当然という声も聞きます.

私は企業経営のことは素人でよくわからないのですが,一応,理系人間の端くれとして,数字の面から見た,素朴な疑問.
トヨタは,昨年は史上最高益を上げました.黒字額は2兆円以上でした.
今年は一転して赤字とのことですが,赤字額は千数百億円.
つまり,去年は,今年の赤字額の10倍以上の儲けがあったわけです.
なのに,なぜそこまで派遣切りしなくてはならないのか?
去年の儲けの貯金(内部留保)をちょっと取り崩せばいいじゃん!

トヨタのカンバン方式は,企業経営の教科書みたいに言われますが,今のようなご時世では,単なる下請けいじめにしかならないと思います.

カンバン方式は,簡単にいうと,不要な在庫を持たないための生産管理方式ですね.

でも,トヨタ本体が在庫を持たないだけであって,実はそのリスクは全て下請けが背負ってるわけですよ.
下請けは,現金を払ってもらえない代わりに,作った部品をギリギリまで持たされているというだけの話です.
かといって下請けは最低限の在庫を持っていれば良いわけではないのですよ.

下請けは在庫を常に充分持っていないと,トヨタは急に納品数を増やすこともあるからです.

必要な数量がすぐに納品できなければ,「じゃあ,いいです.よそに頼むから」ということになる.
下請けへのお金の支払いが遅いだけではなくて,在庫を保管する倉庫代も当然,下受け持ちです.

カンバン方式というのは,突き詰めればそういうことです.

景気のいい時は,これでも良いんですよね.
定常的に発注が続き,両者が潤うから.
でも,一旦不景気なると,トヨタだけが生き残って,下請けは苦労するかつぶれるかです.
不景気のときに,下請けを泣かせる方式が,世界的な評価を受けるのは納得できないなあ.

トヨタは過去十数年黒字を出し続けて,おそらくどこかの国の国家予算並みの内部留保を持っているはずです.
もちろん,税法とか,いろいろな縛りがあるから,有形,無形の資産に形を変えてどこかに蓄えているはず.
10兆円分以上はあるんじゃないかなあ?あてずっぽですけどね.

トヨタの社長が100年に一度の経営危機とか言っても私は信じないです.

あなた方だけ生き残るつもりでしょ?
と思ってしまうのは私だけ?

大相撲,見るのがつらい.

2009年01月18日 00時01分53秒 | 日記
長年の相撲ファンとして,最近の大相撲は見ていてつらい.
そう,朝青龍問題である.

朝青龍の傍若無人ぶりは目に余るものがある.
この御仁は考え方が成熟しておらず,はっきり言って子供である.

売られたけんかは買う.
野次られれば睨み返す.
肩がぶつかればバカ野郎とどなる.
先輩の相撲解説者からの質問が気に入らなければ,お前のような下位の力士からそんな質問を受けるつもりは無いという意味のことを言う.

飲み屋街を,肩で風を切ってぶらついているやくざのチンピラと変わらない.
彼らと違うのは相撲がやたら強いことだけである.

しかし,このような状況が朝青龍の責任か?と言われれば,そんなことはない.
彼は,本来「横綱」となるべき人物ではなかったのだ.
横綱にしてしまったのは,日本相撲協会であるり,横綱審議会である.
だから責任はすべて相撲協会と横審にあると言っていい.

横綱となるべき人格も精神力もないまま,周りから祭り上げられてしまった.
おそらく横綱になって最高位についたことで,自分の人格まで優れたものになったと勘違いしてしまったのだろう.
ある意味では,被害者かもしれない.

こんな,めちゃくちゃな相撲は見ていてつらい.
朝青龍が勝っても負けても,である.
勝てば,足が出て既に負けている相手に駄目押しするとか,「どうだ見たか」という表情で土俵下の親方衆を睨みつけて花道を去っていく態度とか,はっきりと不愉快である.
負ければ負けたで,それを喜ぶ会場の雰囲気も気分悪い.

せっかく,それ以外の取り組みで魅力的なものが多いのに残念である.
例えば,白鵬の落ち着いた上にすばやい寄りは見ていて爽快感すらある.
まさに横綱相撲であり,プロの技に接する感動がある.
日馬富士は勝てなくて気の毒だが,「ガンバレ!」と応援したくなる.
把瑠都の怪力は迫力があるし,面白い.取り組み後のインタビューも微笑ましい.

インタビューで思い出したが,朝青龍のインタビューはひどい.
アナウンサーの質問が終わらぬうちに言葉をさえぎって,話し始める.
しかも言葉使いも失礼そのものだ.

最近は朝青龍が出てくる場面では,チャネルを変えることが多い.
あえて,不愉快なものを見たくないからである.

それと,これは相撲ファンには申し訳ないが,こんな横綱としての不適格者に,人気があるという事実が私には信じがたい.

すもうが強ければそれでいいのか?応援してしまうのか?

アウトローな男に引かれる,男を知らない乙女みたいなものか?
あなたらの思慮のない応援が,相撲をつまらなくしてることに気付いてほしい.
(少なくとも私にとってであるが...)

どうでもいいけど,早く,何らかの形で朝青龍には角界から去ってもらい,白鵬と並びうる立派な「横綱」が現れることを期待したい.

神聖な土俵上で子供のけんかを見るのは,もううんざりだ.

「手紙」東野圭吾

2009年01月12日 22時26分45秒 | 日記


今までに読んだ東野圭吾さんの小説は,ジャンルはいろいろあるけど,ひとことで言えばエンターテイメント性の強いものだった.
だから,私も東野さんのことを,深みとか重みより,軽いかもしれないけど,とにかく「面白い」小説を書く人かなと思っていたわけです.
しかし,この「手紙」は,私のそんな予断を見事にひっくり返してくれました.

この小説は,重いです.
だから,読んでいて,決して楽しいものではない.
でも,私が,本当はちゃんと考えなくてはいけない「差別」という問題があることを,あらためて認識させてくれたような気がします.
犯罪加害者の家族,被害者じゃなくて,加害者の家族が,世の中の偏見からどれだけ苦しめられるのかということを,これでもかというほど見せ付けられます.

弟を大学に進学させたい一心で泥棒をしてしまうが,家の人間に見つかり,もみあううちに心ならずもその家人を殺めてしまった殺人犯武島剛志の弟,直貴が主人公.

兄が殺人を犯し捕まったとき,直貴はまだ高校生だったが,兄が捕まったことで経済的にも困窮し,大学進学は諦めることになる.
しかし,それは悲劇の序曲に過ぎず,その後,数度の就職のチャンス,恋愛・結婚など,人生の新しい一歩を踏み出そうとするたびに,それらの幸せは,ことごとく「殺人犯の弟」というレッテルのために彼の手からすり抜けて行ってしまう.

そんな絶望の中で一筋の光明は,彼と同じような境遇に育ったことから彼を理解し愛するようになった女性との出会い,結婚,愛娘の誕生だった.
でも,その幸せもつかの間,愛娘が幼稚園に入ると同時に,「殺人犯の弟の娘」という恐怖のレッテルが彼女に貼られ,何も知らぬ彼女を悲しみの崖っぷちから突き落とそうとする.

この小説のエンディングは難しいなあと思いながら読んでいました.
一読者としては,ハッピーエンドを期待したい.
でも,だとしたら,この小説を書いた意味が無いわけでしょう?

結末は,「微妙な」ものでしたが,結末がどうとかいうより,一人一人が,差別という問題とどう向き合うかということが大事なので,その意味では,この小説に結末は不必要なのかもしれません...

それにしても,こんな小説も書ける東野圭吾さん...すごい人なんですね.

"Wii"がわが家にやってきた.

2009年01月10日 22時31分46秒 | 日記
あまりゲームには関心がない私ですが,12歳の娘にせがまれて,ついにWiiを購入しました.
WiiスポーツとWiiFitもいっしょに.

娘が夢中になってやっているのを,最初は横目で見ていましたが,なんだか面白そう.

そこで,娘からやりかたを教わって,Wiiスポーツの方を少しやってみたら...

面白い!!!!!

ボーリング,テニス,野球,ボクシング...
どれも,はまります.

リモコンにセンサーが仕込んであって,振る,押す,投げる,などの動作がかなり忠実にインプットできるようです.

テニスですと,ボールを打つタイミングは当然として,打つ強さと方向も微妙に入力され,それに忠実にボールが飛んでいく.

野球だと,バッターのときもそれと同じ原理で,ボールを打てますし,ピッチャーのときは,球種(直球,カーブ,シュート,フォーク)とコースが選べるうえに,投げる速度もセンサーによって忠実に再現できる.

いやあ,よく出来ている.

他のゲーム機とは一線を画する機能と性能を持っています.

ボクシングも面白い.
通常のリモコンを右手に,ヌンチャクを左手に持って相手を殴るのですが,リアルなんですよ,動きが.

非常に動きのクオリティが高い.
子供だましじゃあない.
これだけ,忠実に腕の動きを再現されると,闘争心をかき立てられますねダッシュ(走り出す様)

リモコンのたてよこボタンをピコピコ動かすゲームとは,次元が違う気がします.

これは,まさにバーチャルリアリティの域に達している.

ボクシングだと3ラウンドくらい戦うと,結構汗かきますので,かなり運動にもなり,エクササイズ代わりにもなるのではないかと思います.

しばらく嵌まり込みそうです.

「運命じゃない人」内田けんじ監督

2009年01月08日 22時06分12秒 | 映画・DVD


「アフタースクール」の内田けんじ監督の初長編作品.
「アフタースクール」がめちゃくちゃ面白かったので,かなり期待して見ましたが,期待どおりというか,別の次元で大いに満足しました.

初長編の上,低予算で作ったためか,主な登場人物は5人だけだし,CGも火薬も使わない.だけど,ここまで面白い作品が作れるんだということに驚嘆したしだい.

人のいいという表現がぴったりで,元彼女からふられたばかりのサラリーマン宮田と,こちらも婚約解消されて傷心の真希との一夜の恋物語が縦糸.
しかし,宮田を振った元彼女あゆみは,実は結婚詐欺の常習犯だったわけで.金がないということがわかった宮田から姿をくらませただけだった.その後,やくざの親分とは知らず付き合った今の彼,浅井から,無謀にも,大金を盗んで,宮田の幼馴染で探偵の神田に高飛びの相談に来る.こちらのやばい話が横糸.
この縦糸と横糸のストーリーが,宮田のマンションや,彼の行きつけのレストランなどで,2重,3重に錯綜する.

全く同じ場面,同じ台詞が,ある視点からは,ほのかな恋心だったり,別の視点からは命がけの逃避行の始まりだったりするわけで.

普通,ミステリーでは登場人物だけが知っていて観客が知らないってのが相場ですよね.

でも,この映画では,観客だけが知っていて,登場人物の一人だけが何も知らないっていうことが,何とも言えずおかしみを誘う.

レストランの場面は,同じ台詞のやりとりが3回出てくるけど,2回目,3回目は確実に笑える.

DVDで見る人が多いと思うので,一度見終わっても,倍速でいいからもう一度見直すことをお勧めします.

特に最初の30分は,映画の後半を思い出しながら見ると,ニヤニヤしてしまうこと請け合い.

この楽しさは小説では味わえないです.
時間芸術ならではです.

いやあ,こういう作品にめぐり合える限り,映画は止められないですな.

「おせち」と「お雑煮」

2009年01月06日 00時17分58秒 | 日記


皆様,あけましておめでとうございます.

年の初めといえば,やはりこれですね.

かみさん作です.

お雑煮は,すまし汁に,もち,鶏肉,水菜,かまぼこ,大根,里芋など.
たぶん,全国平均より薄味,あっさり型ですね.

おせちは,向かって右が,鯛,鶏肉,しいたけ,野菜の煮物,ブロッコリーなど,向かって左は,二色卵,だてまき,チーズとかまぼこ,田作り,黒豆,大根と人参の三杯酢など.

鯛と黒豆を除いて,あまり手をかけていないとのこと.

でも,こういうのをパパッと作っちゃうのは,さすが,主婦暦,ん十年ですね.

尊敬せざるを得ない.

あ,昨日の昼食は私のラーメンでしたけどね.

「フルハウス」柳美里

2009年01月04日 13時49分37秒 | 読書


「家族シネマ」で芥川賞を受賞した柳美里(ゆ みり)氏の「フルハウス」を読みました.

家族との絆を求めながらも,その術を知らず,家族から見放された父親が,家を建てることで家族をつなぎとめようとする表題作と,不倫の代償として,少し頭のおかしな一家と付き合うことになった女性イラストレーターのドタバタを描く「もやし」の中篇2編.

私が小説に求めるものは,まあいろいろあるわけで,謎解きだったり,ハラハラドキドキだったり,切ない恋心だったり(似合わないけど),また哲学だったりする.

残念ながら,この小説は,そのいずれも満たしてくれませんでした.

だからといって,この小説が価値がないなんて,そんな不遜なことをいうつもりはありません.
人それぞれ,小説に求めるものは違います.
この小説が語る,家族に対する想いとか,諦めとか,悲惨さとかに共鳴する人は,世の中に確実にいるはずなので,自分がそうだと思う人は,読めばきっと,感銘を受けるはずです.

多分,私が育った家族環境が,きっと幸せなものだったのでしょう.

両親の愛情を感じつつ幸せな子供時代を送った人は,この小説に登場する女性主人公に共感することはないんじゃないかなあ.

逆にいろいろな意味で,家庭に不和や不幸を抱えつつ育った人は,なんらかの形で共感するものがあるかもしれませんね.

そういう意味では,この小説に共感できないバックグラウンドを授けてくれた私の両親や家族にすごく感謝したいと思います.