書く仕事

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「人生はニャンとかなる! ―明日に幸福をまねく68の方法」水野 敬也 , 長沼 直樹

2022年08月30日 09時27分41秒 | 読書
「人生はニャンとかなる! ―明日に幸福をまねく68の方法」水野 敬也 , 長沼 直樹


人が幸せに生きるための指標となる偉人たちの名言集.
机の隅に置いて,いつも手に取って,読み返したい1冊です.

猫の表情やしぐさが名言とマッチして微笑ましいです.

それにしても,書店に行くたびに苦い思いに駆られるビジネス書コーナーです.
ビジネスで成功する方法とか,部下の上手なしかり方とか,いわゆるビジネスハウツー本が溢れていますね.
また,嫌いな人との付き合い方とか,一瞬で人から好かれる自己紹介法とか,より個人的な人間関係を良くする本もたくさん見つかります.

ただ,こういう本を読んで,ビジネスに成功したとか,売り上げを劇的に伸ばしたとかいう話は聞いたことがない.でしょ?

なぜだと思います?

答えは簡単.ビジネスに成功するために必要なものは「方法(ハウツー)」ではないからです.

「方法」ではないのなら,何なのか?それは「資質」と「情熱」です.
どちらもある程度生まれ持って身についているものと後天的に獲得する部分と両方あるとは思いますが,この二つを差し置いて「方法」だけ伝えても何にもなりません.
資質も情熱も,本を読むことで身に付くものではないことは明らかですよね.

一方,「方法」はどう関係するのか.

ある程度の資質をもった人が,情熱をもって何かに打ち込めば,最初のうちはうまく行く.
ビジネスだけではなく,スポーツでも.楽器でも,英会話でも同じです.
最初の2~3か月は,とんとん拍子で上達します.
ゼロからスタートするわけですから当然ですね.
しかし,必ず,挫折がやってきます.

あるところで急にうまく行かなくなる.
ビジネスでいえば,売り上げが伸びないとか,チーム内に意見の相違が生じて雰囲気が悪くなるとか...
その困難をいかに乗り越えるかが,その後の上達や成功のために重要なわけですが,ここで「方法」が必要となります.
しかしながら,その「方法」はビジネスの内容とか,チームの構成メンバーと各自の資質,マーケットの傾向,財源,等々,千差万別,まさにケースバイケースであり,とても1冊の本で表せるようなものではないのです.

要約すると,ビジネスのハウツー本は役に立たない.なぜなら成功に必要な「資質」と「情熱」は本からは得られない.さらに困難な状況に際して必要となる「方法(ハウツー)」はケースバイケースであり,1冊の本で表現できない.

ということですね.

「声の網」星新一

2022年08月16日 11時06分43秒 | 読書
「声の網」星新一


私見ですが,日本のSF界の巨匠を3人上げるなら,小松左京,筒井康隆,星新一ですかね.
小松左京は,「日本沈没」「さよならジュピター」「神への長い道」など,SFというより,人類の進化と地球の運命を題材とした未来社会派小説の巨匠といえる気がします.
筒井康隆は「家族八景」3部作等,超能力を持つ新人類の苦しみを描いた作品が素晴らしいのですが,パロディや実験小説など新しい分野を次々に切り開いてきた新ジャンル開拓者でもあります.
蛇足ながら,筒井は,「日本以外全部沈没」というとんでもない短編も書いています.こんな小説が書けるのも,小松左京氏との良好な友人関係があればこそ?
星新一は知る人ぞ知るショートショーの巨匠.この分野を切り開いたパイオニアであり,ショートショートを専門とする唯一の作家と言っても良いでしょう.

そんな星新一が,長編小説を書くとどんなお話になるのか.誰しも興味あるところでしょう.
詳細は差し控えますが,ヒントを示すなら,
「電話機」「ネットワーク」「AI」
なんとなく想像できますか?

長編小説ではありますが,同じテーマによる12個のエピソードから構成されています.
1970年に,このような題材で小説を書いたとは,氏の先見性に驚くほかありません.

「70歳が老化の分かれ道」和田秀樹

2022年08月03日 11時57分57秒 | 読書
「70歳が老化の分かれ道」和田秀樹


著名な精神科医であり多くの著作を送り出している和田秀樹氏の新書.
刺激的なタイトルに見えるが,内容は極めて,実践的かつ説得力ある内容になっています.

この本全体を通じて感じることは高齢者に対する暖かい眼差しです.
歳をとるとこうなるんだから,高齢者はこうしなさいという書き方ではなくて,幸せな老後を生きるためにこうやろう,という内容・ノウハウ集になっています.
また,高齢者に対する誤った認識に基づく国の政策に対して,痛烈な批判を浴びせています.
特に印象に残ったのは,p.57 「運転免許は返納してはいけない」の章.
まず前提となるデータですが,警察庁交通局が発表する「平成30年度の交通事故状況」によると,人口10万人当たりの年代別事故件数をみると,最も事故を起こしているのは16~19歳で約1500件,ついで20~24歳で900件,70歳台は500件前後,80歳台は600件前後とむしろ,事故件数自体は若者の起こす事故がずっと多い.
確かに高齢者によりペダルの踏み違いによる事故は事実としてあったが,多くの若者が引き起こす悲惨な死亡事故こそ早く対策を打つべきという主張です.
別の調査では,免許を返納した高齢者群と免許を返納せず運転し続けた高齢者群とで,10年後の認知症の発症数が,運転をやめた人はそうでない人の2.1倍だったという.
車の運転という,一種の認知機能のトレーニング習慣が認知症の発症を遅らせるという疫学的なデータが得られているそうな.
つまり,運転免許の返納をする人が増えるほど,認知症による介護認定者が増えるという実に皮肉な結果を引き起こすのね.
本当に国のことを考えるなら,高齢者を家に閉じ込めてしまうのではなく世の中との関りを促進するような政策が必要なんじゃないか,という主張です.

コレステロール降下剤の安易な使用に対する痛烈な批判も興味深いので興味ある方は本書をお読みください.

私は,今年の秋に69歳になり,来年には古希を迎えますが,そんな私に元気をくれた一冊でした.