書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「サロメ」原田マハ

2017年04月27日 12時39分04秒 | 読書
「サロメ」原田マハ



19世紀末のヨーロッパ。
オスカー・ワイルドによって書かれた戯曲「サロメ」にまつわる、淫靡で不気味な物語。
登場人物はほぼ全て実名で、多くが史実なので、どこからが架空の物語なのか、実に巧みに隠されている。
「サロメ」は、物語もさることながら、その挿し絵が衝撃的なことで有名らしいが、その挿し絵を描いたオーブリー・ビアズリーが重要な役どころとなる。
語り手となるのは、オーブリーの姉で女優のメイベル・ビアズリーである。
メイベルは弟のオーブリーに対して、かなり異常な愛情を抱いており、結構不気味な描写もあり、私のように健全な心の持ち主は、覚悟して読み始めねばならないだろう。
メイベルに限らず、出てくる人物が皆さん、ちょっとオカシイ。
だから、小説になるんだけどね。
オスカー・ワイルドもしかり。

普段まじめで品行方正な人生を送っている人が、たまにちょっとあちらの世界を垣間見たいなと思った時には最適な小説。

「探偵は女手ひとつ」深町秋生

2017年04月19日 14時06分29秒 | 読書
「探偵は女手ひとつ」深町秋生



ヒロインの留美はシングルマザーで元警察官だが、わけありで、今は私立探偵をしている.
探偵といいつつ、舞台が山形なので、雪掻き等の力仕事もやる「何でも屋」だ.
元の職場(警察)の元同僚から、いろいろな調査依頼が入ることもあり、その場合は本来の探偵業務となる.
そんな留美を中心に描く,いわば女探偵ハードボイルド小説である.
依頼元は一人暮らしのお年寄りから,怪しげな会社の社長まで様々だ.
大体,最初は簡単な調査と思うようなものばかり.しかし,良く調べたら,実は,ヤクザとのいざこざや,ストーカー事件やら,難儀な事件に発展してしまう.
しかし,トラブルが起きてからの留美の快刀乱麻の活躍が小気味いい.
ある意味スーパーウーマン的活躍でスパッと小気味よく解決に導く.
山形が舞台ということで,大部分のセリフが,コテコテの山形弁である.
この山形弁のおかげで,留美の活躍がいっそう強調されるような気もする.
昔,留美が捕まえて更生させた暴走族の頭だった逸平君が何とも良い役で留美を補佐する.
非常に面白かった.
続編が出れば是非読みたい.

「サイレンス」秋吉 理香子

2017年04月13日 12時06分55秒 | 読書
「サイレンス」秋吉 理香子



北国の離れ島「雪之島」で育った深雪は,東京にあこがれ一刻も早く島を出たかった.
中学の時,母譲りの美貌を武器に東京の芸能事務所のオーディションを受け,見事合格し,芸能界への道が開けた深雪だったが,頑固で封建的な父から一方的な反対を受け,断念せざるを得なかった.
このことが深雪の将来に大きな苦悩と不幸を呼び寄せることになる.
この「雪之島」には,島に生まれた若者たちを,島にくくりつける何かがあった.
それは何か?
ミステリーといえばミステリー.
ドロドロの恋愛劇といえば恋愛劇.
ホラーといえばホラー.
いずれのカテゴリーにも当てはまらない不思議なストーリー.
ファンタジーかな.
やはり違う.
島全体が巨大な生き物というか,島に住む人々をコントロールしているようにも思える摩訶不思議な物語でした.

「人生に七味あり」江上剛

2017年04月07日 21時48分10秒 | 読書
「人生に七味あり」江上剛



人生は七味唐辛子.
ヒリヒリと辛いことが7種類もある.
何味かというと,うらみ,つらみ,ねたみ,そねみ,いやみ,ひがみ,やっかみ,
の7つの「み」である.

樫村は,銀行マンとして充実した人生を送っていたが,ある日,突然,彼が務める銀行が,超大手のメガバンクに吸収合併されることになり,エリートの座から引きずり降ろされる.
明らかな左遷である子会社への出向を命じられたため,会社を辞め,外食産業の役員に再就職する.
役員と言えば聞こえはいいが,要は居酒屋のおやじのような仕事だった.
今までのエリート街道から一転して,地を這うような仕事に苦戦する樫村.
しかも,その居酒屋チェーンは赤字店が続出し,このままでは債務超過に陥り,倒産の危険もあることがわかる.どうする樫村...

銀行とのからみがたくさん出て来て,しかも嫌味な銀行マンが憎たらしいセリフを吐きまくるところは,半沢直樹の再来を思わせる.
しかし,こちらの方が,より大人の判断,大人のセリフが多く,落ち着いた感じがする.
その結果,現実味のあるお話に聞こえる.

泣かせる展開もあり,読後感は非常に良い.
半沢直樹の場合,溜飲は下がるが,そこまでやらなくても,と思った記憶がある.

この「人生に七味あり」は,大人の経済エンタテーメントという印象だ.

「危険なビーナス」東野圭吾

2017年04月01日 14時58分01秒 | 読書
「危険なビーナス」東野圭吾



東野圭吾さんのミステリーにしては割とシンプルな構成でしたが,逆に物語としては頭を悩ませずにストレートに入って行けて,楽しめました.

雇われ獣医をやっている手島伯朗は,忙しくも充実した生活を送っていたが,ある時,楓と名乗る義理の弟の妻という女性の訪問を受ける.
伯朗は母が再婚しており,新しい父親との間に生まれたのが義理の弟,明人であり,楓はその妻だという.
楓から,新しい父親が危篤なので来てくれという連絡を受けたのだが,明人が行方不明になってしまい,一人では不安なので,一緒に来てくれという.伯朗は実家とは絶縁状態にあり危篤の連絡も受けていなかった.
楓の女性としての魅力に戸惑いながら,正確には惹かれながら,同行する伯朗に,次から次へと意外な事実が明らかにされる...

てな具合です.

まあ,ハッキリ言って,エンタテーメントそのものの小説です.テレビドラマになりそうな感じ.でも,こちらもその娯楽性を求めて手にした一冊なので,狙い通りの楽しさを満喫できた一冊ということで.めでたしめでたし.