書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「合理的にあり得ない」柚月裕子

2019年03月31日 18時31分47秒 | 読書
「合理的にあり得ない」柚月裕子


目には目を,歯には歯を.
詐欺には詐欺を.

訳あって,表街道で仕事ができない,女探偵・上水流涼子.

こちらも訳あって,正式に弁護士に依頼できない依頼人達が,のっぴきならない依頼事を持ち込んでくる.
報酬は弁護士に依頼する場合以上に高い.
5つの相談事からなる短編集になっている.

何といっても,面白いのは,だましのテクニックだ.
内容はネタバレになるので言えないが,スカッとするか,思わずニヤッとさせるもので,5編とも読んでいて楽しい.

物語の展開手法は私のツボだ.
神月裕子さんの小説は初めてであるが,是非2冊目を読んでみたいと思う.


「嫌な女」桂望実

2019年03月24日 11時26分50秒 | 読書
「嫌な女」桂望実


魅力的な容姿と天才的な会話術を武器に男を食い物にする生来の詐欺師,小谷夏子.
ひたすら勉強をして法学部4年の時に司法試験に合格した気鋭の弁護士,石田徹子.

この二人が主人公.
二人は遠縁の親戚で,夏子が結婚詐欺容疑で慰謝料を請求されたため,徹子に助けてくれと泣きついてきたことから物語が始まる.
実は,徹子自身,幼いころ夏子からひどい仕打ちを受けたことがあり,内心忸怩たるものがありながら,仕事だからと割り切って,引き受ける.

夏子は,自分勝手で回りに迷惑をまき散らしながら,稼げるだけ稼いでどこかに身をくらますという生活を繰り返している.
しかし,良く調べてみると,相手から金銭的な搾取をする一方で,目に見えない,何かを相手に与えていることが徐々に分かってくる.
それが,何であるかは読んでのお楽しみ.

実は,徹子は弁護士になれたものの,結婚はうまく行かず,子供もいない.
このまま,孤独なキャリアウーマンとして,仕事だけの人生を送っていくのか.
時々,言いようのない寂しさに襲われることがある.
そんな徹子にとって,自由気ままに見える夏子は,徹子が望んでも手に入れられない,大事な何かを持っているように感じられるのだった.

50歳以後の,つまり人生の真っ盛りをやや過ぎかけた読者にとって,自分の人生を見つめ直すきっかけになり得る本かもしれないです.

良い本だと思います.

桂望実の作品は「平等ゲーム」に続いて2作目ですが,読んだことをすっかり忘れてました.
gooブログの検索機能を使ってみて気が付いた次第.


「マツリカ・マトリョシカ」相沢沙呼

2019年03月10日 14時17分10秒 | 読書
「マツリカ・マトリョシカ」相沢沙呼


主人公の高校2年生,柴山祐希君の通学する学園で起きた不思議な出来事の顛末.

基本的には本格推理ものと言って良いと思うが,青春小説あるいは若者の心の成長日記でもある.


推理もののとしてのジャンルは密室もの.
ただし,密室殺人ではない.
人は死にません.
人の死なない小説なんて推理小説じゃないと思われるかもしれないが,そんなことはない.立派にハラハラドキドキさせてくれるのでご安心を.

また,主人公の祐希君は,とても自己評価が低くて,自分の生きる価値について大きな疑問を持っている.
でも,そんなことはないわけで,どんな人にも,自分を大切に思ってくれる人がいて,守ってくれている.
そのことに気付かないと,自分は世の中から相手にされてないと思ってしまうのね.
そのことは,われわれ大人でも気を付けないといけないと思う.
大人でも,自分を見失うことはよくあることです.

ということで.