「テロリストのパラソル」藤原伊織 blog.goo.ne.jp/coollife/e/392…
「テロリストのパラソル」藤原伊織
ハードボイルドなミステリーとでも言おうか。
主人公はアル中のバーテンダー。元学生運動家、元ボクサー。
過去に起こしてしまった過失の事故(一見とんでもない事件に見える)のために、世間様から逃げ回るようにして、日陰を生きている。
世捨て人的な退廃的な雰囲気を振りまきつつも、知的な会話が楽しい。
このカッコよさ。たまりません。
爽やかさからほど遠いキャラクターにも拘らず、おそらくは中年以上の男性には、憎いほどのあこがれを感じさせる魅力がある。
この小説を読んでいてしびれるのは、主人公が退廃的な雰囲気の中にありながら、鋭い推理で相手のウソを見抜き、しかもそのような切れ味を見せてしまったことに対する、「恥ずかしさ」を隠さないことにある。
可愛いのである。
こんなに聡明で、こんなに自堕落で、どうしようもない男が何とも言えぬくらいにかわいい。
俳優さんで言えば、ハンフリボガードなんだろうが、もうちょっと知性を上乗せしたい。
日本人なら、西島秀俊さんと反町隆史さんを足して2で割った感じか?
もう少し汚れた雰囲気が欲しいな。
キャスティングの難しい役だな。
小説としてもスケールが大きく、骨太だ。
エンターテイメントとしては申し分ない、第1級のミステリーである。
ごちそうさまでした!
蛇足ながら、江戸川乱歩賞と直木賞を両方とった作品としても有名。
ハードボイルドなミステリーとでも言おうか。
主人公はアル中のバーテンダー。元学生運動家、元ボクサー。
過去に起こしてしまった過失の事故(一見とんでもない事件に見える)のために、世間様から逃げ回るようにして、日陰を生きている。
世捨て人的な退廃的な雰囲気を振りまきつつも、知的な会話が楽しい。
このカッコよさ。たまりません。
爽やかさからほど遠いキャラクターにも拘らず、おそらくは中年以上の男性には、憎いほどのあこがれを感じさせる魅力がある。
この小説を読んでいてしびれるのは、主人公が退廃的な雰囲気の中にありながら、鋭い推理で相手のウソを見抜き、しかもそのような切れ味を見せてしまったことに対する、「恥ずかしさ」を隠さないことにある。
可愛いのである。
こんなに聡明で、こんなに自堕落で、どうしようもない男が何とも言えぬくらいにかわいい。
俳優さんで言えば、ハンフリボガードなんだろうが、もうちょっと知性を上乗せしたい。
日本人なら、西島秀俊さんと反町隆史さんを足して2で割った感じか?
もう少し汚れた雰囲気が欲しいな。
キャスティングの難しい役だな。
小説としてもスケールが大きく、骨太だ。
エンターテイメントとしては申し分ない、第1級のミステリーである。
ごちそうさまでした!
蛇足ながら、江戸川乱歩賞と直木賞を両方とった作品としても有名。
足のけがのせいで、焼酎はしばらく控えていましたが、今夜は久しぶりにいただきました。
昨年暮れに、かみさんが人吉に行ったときに買って来てくれた球磨焼酎です。
お刺身によく合う淡白な味わいでした。
ごち!
「左手に告げるなかれ」渡辺 容子
ミステリーの王道を行く小説.
殺された主婦が血で絨毯に書いた「みぎ手」というダイイングメッセージ.
しかし,小説のタイトルは「左手に告げるなかれ」
最初の十数ページで,ミステリ好きの血を沸かせる謎がてんこ盛り.
八木薔子(しょうこ)は,警備会社に勤め,主にスーパーマーケットなどで万引きを監視し,捕獲する保安員をしている.
ある日,突然刑事の訪問を受け,彼女に殺人の嫌疑がかかっていることを知る.
薔子が以前不倫をした相手の男性の妻が殺された事件だった.
妻を亡きものにして,自分が後釜になることを狙っての犯行と思われたらしい.
あいにく,薔子には犯行日のアリバイがなかった.
しかし,逆に決定的な証拠もないので,家には帰してもらえたが...
ここまでは,単なる男女の痴話物語の範疇だが,自分の無実を晴らそうと動き出した薔子の前に,次々と奇妙な事実が明らかになる.
薔子より先に調査を始めていたという自称「探偵」,殺されたマンションの別の部屋に住む「おたく」青年.
娘を殺された気の毒な過去を持つ,そのマンションの管理人も何かを知っていそう.
登場する刑事よりも,探偵の数の方が多いくらい.
そうこうするうちに,主婦殺害事件の前に,同じ横浜市磯子区の中で3件の類似の殺人が起こっていることや,被害者がいずれもコンビニの親会社から派遣される指導員であったことなど,あれれ?いったい?という事実が明らかになる.
精密にはられた伏線,不倫相手の男性との微妙な関係,薔子と「探偵」,薔子と「おたく」との不思議な関係,読者を次々に「?」の世界に連れて行く.
第42回江戸川乱歩賞受賞作.
この賞の受賞作は,外さないね.
安心して読める.
ミステリーの王道を行く小説.
殺された主婦が血で絨毯に書いた「みぎ手」というダイイングメッセージ.
しかし,小説のタイトルは「左手に告げるなかれ」
最初の十数ページで,ミステリ好きの血を沸かせる謎がてんこ盛り.
八木薔子(しょうこ)は,警備会社に勤め,主にスーパーマーケットなどで万引きを監視し,捕獲する保安員をしている.
ある日,突然刑事の訪問を受け,彼女に殺人の嫌疑がかかっていることを知る.
薔子が以前不倫をした相手の男性の妻が殺された事件だった.
妻を亡きものにして,自分が後釜になることを狙っての犯行と思われたらしい.
あいにく,薔子には犯行日のアリバイがなかった.
しかし,逆に決定的な証拠もないので,家には帰してもらえたが...
ここまでは,単なる男女の痴話物語の範疇だが,自分の無実を晴らそうと動き出した薔子の前に,次々と奇妙な事実が明らかになる.
薔子より先に調査を始めていたという自称「探偵」,殺されたマンションの別の部屋に住む「おたく」青年.
娘を殺された気の毒な過去を持つ,そのマンションの管理人も何かを知っていそう.
登場する刑事よりも,探偵の数の方が多いくらい.
そうこうするうちに,主婦殺害事件の前に,同じ横浜市磯子区の中で3件の類似の殺人が起こっていることや,被害者がいずれもコンビニの親会社から派遣される指導員であったことなど,あれれ?いったい?という事実が明らかになる.
精密にはられた伏線,不倫相手の男性との微妙な関係,薔子と「探偵」,薔子と「おたく」との不思議な関係,読者を次々に「?」の世界に連れて行く.
第42回江戸川乱歩賞受賞作.
この賞の受賞作は,外さないね.
安心して読める.
「ロスジェネの逆襲」池井戸潤
ご存知、半沢直樹シリーズの第3弾。
テレビドラマの半沢直樹は2作分をまとめたものだったので、この小説が、そのままテレビの続きになっている。
東京セントラル証券に出向を命じられた半沢の活躍を描いたものだ。
ここでは、半沢は直接の担当者として奔走するのではなく、参謀あるいはブレーンとして動くので、前2作と比較すると,かなり落ち着いた役柄に見える。
血眼になって走り回るのは、東京セントラル証券のプロパー社員、森山クンだ。
この森山クン、バブルがはじけた後の、就職氷河期経験者だ。
大手を何十社も落とされ、ようやく中堅の東京セントラル証券に入った、いわゆるロスジェネ世代。
彼は、バブル世代には、強烈な反感を抱いている。
バブル世代は、能力もないのに、売り手市場だというだけで、一流企業に入り、一流企業にいるという理由だけで、中小企業を馬鹿にすると思っている。
半沢は、そんな森山を不憫に思うと同時に、森山の潜在能力の高さも買っており、なんとか彼を一人前に育てたいと考える。
そんな折、東京セントラル証券がコンサルティング契約を結ぼうとしていた顧客企業を、親会社の東京中央銀行の証券部門が横取りするという事件が起きる。
半沢としては,これはまさに「倍返し」の材料.
あまり表には出ず,森山君をうまく指導しつつ,東京中央銀行の傍若無人ぶりに対して,胸のすく意趣返しをしてくれる,というお話.
また,M&A(企業買収)の様々なテクニックがご披露されるので,その意味でも勉強にもなる.
ただ,前2作のように,半沢自身が強烈にいじめられるシーンはほとんど無いので,最後の意趣返しのカタルシス感が今ひとつという,「M」の読者がいるかもしれない.
しかし,それにしても面白いですね.
池井戸潤さん.
私としては,下町ロケット,空飛ぶタイヤに続き,3作目です.
前2作分の「半沢直樹」つまり,「オレたちバブル入行組」と「オレたち花のバブル組」は読んでません.ドラマで見ただけです.念のため.
ご存知、半沢直樹シリーズの第3弾。
テレビドラマの半沢直樹は2作分をまとめたものだったので、この小説が、そのままテレビの続きになっている。
東京セントラル証券に出向を命じられた半沢の活躍を描いたものだ。
ここでは、半沢は直接の担当者として奔走するのではなく、参謀あるいはブレーンとして動くので、前2作と比較すると,かなり落ち着いた役柄に見える。
血眼になって走り回るのは、東京セントラル証券のプロパー社員、森山クンだ。
この森山クン、バブルがはじけた後の、就職氷河期経験者だ。
大手を何十社も落とされ、ようやく中堅の東京セントラル証券に入った、いわゆるロスジェネ世代。
彼は、バブル世代には、強烈な反感を抱いている。
バブル世代は、能力もないのに、売り手市場だというだけで、一流企業に入り、一流企業にいるという理由だけで、中小企業を馬鹿にすると思っている。
半沢は、そんな森山を不憫に思うと同時に、森山の潜在能力の高さも買っており、なんとか彼を一人前に育てたいと考える。
そんな折、東京セントラル証券がコンサルティング契約を結ぼうとしていた顧客企業を、親会社の東京中央銀行の証券部門が横取りするという事件が起きる。
半沢としては,これはまさに「倍返し」の材料.
あまり表には出ず,森山君をうまく指導しつつ,東京中央銀行の傍若無人ぶりに対して,胸のすく意趣返しをしてくれる,というお話.
また,M&A(企業買収)の様々なテクニックがご披露されるので,その意味でも勉強にもなる.
ただ,前2作のように,半沢自身が強烈にいじめられるシーンはほとんど無いので,最後の意趣返しのカタルシス感が今ひとつという,「M」の読者がいるかもしれない.
しかし,それにしても面白いですね.
池井戸潤さん.
私としては,下町ロケット,空飛ぶタイヤに続き,3作目です.
前2作分の「半沢直樹」つまり,「オレたちバブル入行組」と「オレたち花のバブル組」は読んでません.ドラマで見ただけです.念のため.
「ノックス・マシン」法月綸太郎
この本は評価が分かれそう.
推理小説とSF小説の両方が好きという人は高く評価するだろうし,一方は好きだけど,他方はあまり...という人は詰まらないと思うだろうね.
互いに関係する4本の短編集になっている.
1.ノックス・マシン
2.引き立て役探偵倶楽部の陰謀
3.バベルの牢獄
4.論理蒸発(ノックスマシン2)
このうち,推理小説と言えるのは2.の「引き立て役探偵倶楽部」だけ.
ワトソンやヘイスティングス等,名探偵を補佐し,引き立てる役どころの面々が登場します.
アガサクリスティが,従来の探偵小説のいろいろなルールを破ったことは皆さんご存知だと思うけど,それを糾弾し,彼女をなき者にしょうとする倶楽部の面々のお話.
この小説だけ独立した短編として読めば,ミステリ好きの多くの読者は喝采を送るに違いない.
ヴァンダインがかなりの悪役で出てくるので,ヴァンダインファンの人は要注意!
1.と4.は密接に絡み合っている.
ノックスとは,「ノックスの十戒」を指す.
気になる人はWikiで検索してください.
要は,探偵が犯人であってはいけないとか,超能力を用いてはいけないとか,読者をだますようなトリックはダメよ,というルール集です.
これと,マシン,つまりコンピュータネットワークを融合させた,人工知能がノックスマシン,と,ここからがSFになっちゃうわけ.
でも,まあ,SFとはいえ,一応筋道の通ったお話ではある.
ハチャメチャではあるが,まあ,面白いと言えば面白いかな.
3.はもう,かなりシュールな「純」SF.
理系人間の私でも,マジに読み通すのはつらかった.
特に「鏡文字」の記述は「物理的に」読むのに苦労する.
てなわけで,その道の愛好家じゃないと,「なんじゃこりゃ!」と言われそうな小説集でした.
まあ,参考までにご紹介したということで.
あ,でも,これ2014年の「このミス大賞」1位受賞作なんだよね.
これには納得できないなあ.
第2位の「教場」は面白かったけどね.
どう見ても,「教場」の方が上でしょう.
というか,2位~10位はどれも面白そうなのに,1位だけが,ここにいるのがおかしい本です.って言いきっちゃっていいのかな?
この本は評価が分かれそう.
推理小説とSF小説の両方が好きという人は高く評価するだろうし,一方は好きだけど,他方はあまり...という人は詰まらないと思うだろうね.
互いに関係する4本の短編集になっている.
1.ノックス・マシン
2.引き立て役探偵倶楽部の陰謀
3.バベルの牢獄
4.論理蒸発(ノックスマシン2)
このうち,推理小説と言えるのは2.の「引き立て役探偵倶楽部」だけ.
ワトソンやヘイスティングス等,名探偵を補佐し,引き立てる役どころの面々が登場します.
アガサクリスティが,従来の探偵小説のいろいろなルールを破ったことは皆さんご存知だと思うけど,それを糾弾し,彼女をなき者にしょうとする倶楽部の面々のお話.
この小説だけ独立した短編として読めば,ミステリ好きの多くの読者は喝采を送るに違いない.
ヴァンダインがかなりの悪役で出てくるので,ヴァンダインファンの人は要注意!
1.と4.は密接に絡み合っている.
ノックスとは,「ノックスの十戒」を指す.
気になる人はWikiで検索してください.
要は,探偵が犯人であってはいけないとか,超能力を用いてはいけないとか,読者をだますようなトリックはダメよ,というルール集です.
これと,マシン,つまりコンピュータネットワークを融合させた,人工知能がノックスマシン,と,ここからがSFになっちゃうわけ.
でも,まあ,SFとはいえ,一応筋道の通ったお話ではある.
ハチャメチャではあるが,まあ,面白いと言えば面白いかな.
3.はもう,かなりシュールな「純」SF.
理系人間の私でも,マジに読み通すのはつらかった.
特に「鏡文字」の記述は「物理的に」読むのに苦労する.
てなわけで,その道の愛好家じゃないと,「なんじゃこりゃ!」と言われそうな小説集でした.
まあ,参考までにご紹介したということで.
あ,でも,これ2014年の「このミス大賞」1位受賞作なんだよね.
これには納得できないなあ.
第2位の「教場」は面白かったけどね.
どう見ても,「教場」の方が上でしょう.
というか,2位~10位はどれも面白そうなのに,1位だけが,ここにいるのがおかしい本です.って言いきっちゃっていいのかな?