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風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『かもめ食堂』

2007-05-11 02:06:25 | 映画



ミドリ「どうしてこちらで?」
サチエ「いや、何が何でも日本でやる必要はないかなって思って」

・・・・・・

ミドリ「シャイだけど優しくていつものーんびりリラックスして。それが私のフィンランド人のイメージでした。でもやっぱり、悲しい人は悲しいんですね...」
サチエ「そりゃあそうですよ。どこにいたって悲しい人は悲しいし、寂しい人は寂しいんじゃないですか?」
ミドリ「世界の終わりのときは絶対に招待してくださいね」
サチエ「今から予約いれておきます」

・・・・・・

サチエ「ずっと同じではいられないものですよね。人はみんな変わっていくものですから」
ミドリ「いい感じに変わっていくといいですね」
サチエ「大丈夫!たぶん」

(『かもめ食堂
』)


原作は未読ですが、大好きだったドラマ『すいか』と同じ俳優陣だったので観てみました。
わぉ。雰囲気も『すいか』と似てる。うれしい~。
この独特のマイペースで繊細な空気が、すきなんですよ~。

「何が何でも日本でやる必要はないかなって思って」フィンランドで食堂を開いたサチエ。言葉に出さないところに大切なものを持ってるような女性なのでこの理由も真実かどうかはわかりませんが、こういうのいいなぁって思う。
海外へ出れば何かが変わるんじゃないか、という理由で海外へ出る人は多い。それはそれでいいと思う。よく「海外へ出たからといって自分の人生を変えられると思ったら大間違い。自分が変わらなければ何も変わらない」と安易に海外へいく人達に対して批判的な意見を言う人もいるけれど、私はそんなことはないと思う。
今までどっぷり浸っていた文化から抜け出してみて刺激を受けることは、自分を成長させたい、変わりたいって思ってる人にとってとても良いきっかけになるだろう。
でももうちょっと力を抜いて、サチエのように「日本にいても海外にいても同じ。それなら海外でもいいのではないかな」という感じもすごくいい。どこに行ったって同じ地球、同じ人間。それなら、確かにずっと死ぬまで日本にいる必要もないんだよね。

一方、ミドリがフィンランドへ来た理由は、目を瞑って地球議を指さし、たまたまさした国だったから。「来てやらないわけにはいかなかった」のだという。

そして、マサコ。父親のオムツを替えているときにテレビでフィンランドのエアギター選手権を見て、「こういうくだらないことに夢中になれる国っていいなぁ」と思い、両親が亡くなったのを機に旅行に来た。
けれど、航空会社の手違いでトランクが行方不明になってしまう。
サチエが「大事な荷物が早く届くといいですね!」と言うと、はたと「....大事なもの。何か入っていたかしら...」と呟くマサコ。なかなか届かない荷物を待ちつつ、彼女はのんびりしたフィンランドの空気を吸い込みに森へいきキノコ狩りをするのだけれど、「どこかでキノコを落としてしまった」という。その後トランクが見つかり、そろそろ日本へ帰る時期なのかとかもめ食堂で挨拶をしホテルへ戻った彼女がトランクを開けてみると、そこには落としたはずのキノコがぎっしりつまってる。
航空会社への電話で、「私の荷物、ちょっと違うみたいなんです。確かに私の荷物には間違いないみたいなんですけど、なんだか、違うんです」と言うときの嬉しそうな笑顔がいい。

3人とも、日本で重い荷物を背負って生きてきた。
サチエは両親とも亡くしているし、マサコは20年間介護をした両親を亡くしたばかり。ミドリも、詳しくは語らないけれどサチエとの会話中に突然泣き出してしまうところをみると、辛い思い出があるのでしょう。

それでもサチエは言う。
「大丈夫!たぶん」って。
たぶんっていうのが、いいんだよねー。
ここにサチエの人生の重みを感じます。
大丈夫!って言い切られるよりも、大丈夫な気になるからフシギ。

オススメの映画です。

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『プリシラ』

2007-05-10 01:09:55 | 映画

 

Aren't we fabulous?
あたしたちは最高!
(『プリシラ』)


生きてると辛くて過酷なことが山ほどあるけれど、それでも世界は決して彼らを拒んでばかりじゃない。
道は自分で切り拓け。
どんな生き方だろうと、人からどんな風に見られようと、他人に迷惑さえかけなければ、自分の人生を楽しんだ者勝ち!
そんな風に思える映画。

特筆すべきは、映像の美しさと音楽の素晴らしさ。
真っ暗な砂漠の真ん中で焚き火を前に躍り、そして夜が明けていくシーンは最も好きなシーン。

ゲイか否かに関係なく、人として生きていくうえで大切なものをおしえてくれる作品です。

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京極夏彦 『前巷説百物語』

2007-05-04 19:57:20 | 



「お前等が何でもねえように、侍だって百姓だって何でもねェんだよ。町人だってだってだって何でもねェやい。そりゃ枠はある。枠ゥとっ払いたくなるこたァある。枠ン中あ不自由だし、おまけにピンキリだ。下の者は苦しいし上の者は辛ェんだ。人はみんな哀しいんだよ。それをな、枠の外から斜に見て、小馬鹿にするようなこと語るんじゃねェぞこら。お前らだけが虐げられてる訳じゃねェわい。そう思ってンなら、そりゃ侍が百姓見下げる心持ちと変わりねェじゃねェか。違うかよッ」
(京極夏彦『前巷説百物語』p687)

巷説世界から戻ってまだひと月もたっていないのに、『前巷説~』の発売によりまた京極彼岸へ旅立っておりました。
面白かったです!

付録の巷説年表&人物相関図もたいへん役立ちました。百介&おぎんさんの年齢の謎はあいかわらず解けなかったけど・・・。
百介といえば、『前巷説~』では登場しないんだろうなぁと諦めていたので、ちょっぴりでも登場してくれたのは嬉しかった♪シーンも可愛かったし。

一番の読みどころは、やはり稲荷坂に関する書き下ろしの「旧鼠」でしょう。面白かった!!
ただちょっと残念だったのは、「狐者異」と読み比べると、内容に微妙にズレがあったことかな。先に「狐者異」を書いて、後から辻褄を合わせながら「旧鼠」を書いたのかしら。

とはいえこのシリーズはほんと良い。
京極先生は魅力的なキャラを作り出す天才ですな。
山崎さん、恰好イイ!
若又さん、青くて可愛い!

※写真:
鎌倉の名越切通し~巡礼古道の途中にあったお稲荷様。花瓶に白いお花が活けてありました。有名な仏像もいいけれど、古道沿いに散らばるこうした無名の石像や遺跡も親しみやすくて好きです。

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