風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

イーヴォ・ポゴレリッチ ピアノ・リサイタル @サントリーホール(1月11日)

2023-01-13 15:23:27 | クラシック音楽




8日の読響に続いて、ポゴレリッチのリサイタル@サントリーホールに行ってきました。
新年仕様?のロビーが華やかで新鮮。
開演前の英語アナウンスは、前回(もう3年前なのか…)と同じくポゴさんから。耐震構造の案内に続いて「公演は5分後に始まります。please enjoy!」と。休憩時間のアナウンスも。
会場は6~7割程度の入りだったでしょうか。リスト/シューマンプログラムのときほどではないけれど、ポゴレリッチのオールショパンプログラムでこの客入りの悪さは正直驚きました。私は3年前のショパンを聴いて以来、めちゃくちゃ楽しみにしていた公演だったので。

ポロネーズ第7番 変イ長調 Op. 61「幻想ポロネーズ」
ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op. 58
(20分間の休憩)
幻想曲 ヘ短調 Op. 49
子守歌 変ニ長調 Op. 57
舟歌 嬰ヘ長調 Op. 60
*****
ショパン:前奏曲 嬰ハ短調 Op. 45(アンコール)
ショパン:夜想曲 第18番 ホ長調 Op. 62-2(アンコール)

通常のリサイタルではラストに演奏されることが多いピアノソナタ三番が前半になっていたので「プログラムの記載順を間違えてる…?」と思ったら、合っていた。
まあポゴさんの舟歌は物凄くいいので、ラストが舟歌なのはアリだと私も思う。

演奏は、幻想ポロネーズから思いきりtheポゴさん。
そのスローテンポに少なくとも私の周囲の人達は集中力がどんどん下がっていくのがはっきりと感じられ、ピアノソナタの頃には我慢大会の様相に
私はというと、演奏にではなく(それは今更驚かない)、いつもと違うピアノの響きが気になり、少々集中できず。
籠ったような音の分離の悪さが気になってしまったのだけれど。
これは休憩後には少し改善されていたような気がする・・・けど私の耳が慣れただけかも。

それでもピアノソナタ3番の3楽章の半ばあたり(例のノイマイヤーの椿姫のメロディが二回目に登場するあたり)のポゴさんの弾き方が物凄く美しくて・・・、うっとりと惹き込まれ、そのまま4楽章へ。4楽章、すごかった。予習で聴いていたからわかってはいたけど、ポゴさんのあの低音であの4楽章を聴けるのは至福ですね。いやあ、かっこよかった。終盤へ向けての追い込みも、怒涛の音の洪水でしっかり熱はあるのに、決して勢いだけで聴かせるのではなく、丁寧。自分に酔うことも、酔わせることもしない。
この曲を聴くのはフレイレ、ツィメルマンに続いて3回目だけど、別の曲かというくらい三者三様で、3人とも本当に素晴らしい。

(20分間の休憩)

休憩後は更に研ぎ澄まされて、今夜も彼岸が見えました。
幻想曲の切なさ・・・。
子守歌の優しさ・・・。
舟歌は今回も溢れる愛を感じさせて、でもそれだけでなく、なんだろうね、あのポゴさんの音色の透明な寂寥感・・・。
フレイレは最後にどういう気持ちでこの曲を弾いたのだろう、どうしてこの曲だったのだろう、と思わずにはいられませんでした。

舟歌演奏後に踏めくりの女性に譜面についての指示を出していたので、「アンコールをしてくれるのかな?」と思ったら、やっぱりしてくれた。
2曲ともポゴさんは一度も舞台袖に引っ込むことなく、それぞれ自ら曲名を言って演奏。
前奏曲op.45はポゴレリッチの個性にピッタリですね!!と思ったらこれ、前回本プロで舟歌の後に聴いていたことを帰宅してから知った。毎回新鮮に感動している私
そして、夜想曲op.62-2。この曲のポゴさんの演奏をもう一度聴きたいと強く願っていたので、今回聴くことができてとても嬉しかった。
ショパンが書いた最後のノクターン。ジョルジュ・サンドとの関係が破綻へ向かい、健康も悪化の一途を辿っていた中で書かれた曲が、どうしてこれほど優しく、美しいのだろう…。
op.62-2の最後の一音のような音。本人が意識せず、知らずに頬を伝ってポトリと静かに静かに落ちる涙のような音。
この音をポゴレリッチ以上に胸に迫る音で弾くピアニストを他に知りません。
ポゴさんの演奏って通常は弱音で演奏されるところなのにどうして大きめに演奏するのだろう?と感じることが時々あるのだけど、あれはきっとその後の”この音”を効果的に響かせるためなのだな、と今回の演奏を聴いていて感じました。
演奏後は、ポゴさんは鍵盤を押さえたまま。最後の一音の響きが完全に空間に溶けきるまで、長い長い長い静寂(客席えらい)。
あの空気は、言葉ではとても表せないのです。

そんなop.62-2だけど、楽譜を握っていたときに折れ目がついてしまったようで譜面台に置くのに四苦八苦し、演奏中も楽譜の置き方について細かく(でも優しく)踏めくりさんに指示していました笑。それであんな演奏を聴かせてくれちゃうのだものなあ。。。

ポゴレリッチからしか聴けない唯一無二の音。これがあるから彼の演奏会通いをやめられないのだよなあ、と今夜も改めて実感しました。
今日の客席は曲と曲の間の拍手もなく、マナーよし。
13日の浜離宮公演も伺います。

なお今回も、例の鍵盤ぶっ叩きは一度もありませんでした。ポゴさん、きっといい変化をしているのだろうな。

「ジョルジュ・サンドの住んでいた館の近くで、石鹸と本を買いました。その石鹸は、フレンチ・ラベンダーの石鹸で、サンドの館の庭から採った植物から作られています。彼女は亡くなる前、薔薇の木を自分の窓の前に植えてほしいと言いました。その薔薇の木は大きく茂り、今でも元気に生きていて、小さな薔薇の花からは強い香りが漂っていました。実際に館の中も見せていただき、ショパンが作曲したと言われている部屋も見ました。あのすばらしい曲が、この小さな部屋で書かれたのかということにとても驚いています。

ノアンにあるサンドの館は、フランス中央部にあり、大西洋と地中海との間に位置しています。ドライブしていると、昔のおとぎ話の国のような美しい森がありました。当時の人々は、そこを馬車で旅していたわけです。いまでは車になってしまいましたが、森の風景は今も昔も変わらないと思います。その美しい森は、サンドの住んでいた地域一面を覆っています。フランス、またヨーロッパのなかでも特別に美しい地域です。その土地の感覚や雰囲気は、私にはとてもよくわかります」

ポゴレリッチ、ショパンを語る(kajimoto))






Ivo Pogorelich - Chopin - Prelude in C-sharp minor, Op 45


Ivo Pogorelich, Chopin Nokturne in E major Op. 62 No. 2
2021年のライブだそうです。

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