風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

歌舞伎座新開場こけら落 九月花形歌舞伎 昼の部(9月8日) 

2013-09-09 00:38:18 | 歌舞伎




3階B席中央。


【新薄雪物語】
貸切の日ではないのに客席は色々な団体客でいっぱいで、「さぁさぁさぁ」で笑いが起きたのは久しぶりでございました・・・。そんなですから、合腹の場は推して知るべし・・・。
今回に限っては、悪いのは役者じゃなく完全に客ですよ。全然面白い場面じゃないのに口調や仕草がほんの少し変わってるというだけで声を上げて笑う感覚が、私には理解不能です。何がそんなに面白いのか・・・。それとも「面白そうな場面でちゃんと笑わないと、歌舞伎を理解してないと思われる」という強迫観念でもあるのだろうか・・・。

さて、だからというわけでは全くありませんが(歌舞伎のこの手の客にはとうに慣れました・・・)、この昼の部、私の感想は、期待以上でも以下でもなく・・・でした。ツイッターなどの評判がとてもよかったので、残念・・・。
ていうか「合腹」の場、他の新薄雪を観たことがないのでわかりませんが、テンポがゆったりすぎていて、観ているこちらの緊張が先に切れてしまった・・・。最初の伊賀守の出から三人笑の最後まで、緊張を要する場面がずっと続くのだもの。テンポと演技でぐいぐい引っ張ってもらえないと、緊張の糸を保ち続けるのはキツイ・・・。
ただ、三人笑の菊之助(梅の方)は涙を流しての熱演で、4月の『熊谷陣屋』より母性も感じられましたし、なにより客のバカ笑いをその迫真の演技で抑え込んだのは菊ちゃんのお手柄です。染五郎(園部兵衛)切ない表情がとてもよかった。そして松緑(伊賀守)の一番最後の大笑いは、ぞくっと来ました。
だから、決して演技が下手だったわけではないのですよ・・・。
せめて三人笑をあの半分くらいの時間でやってくれたら、もっと感動できたと思う・・・。とくに菊ちゃん。
そういえば菊之助は、7月の四谷怪談の薬を飲むまでの間も少々ひっぱりすぎのように感じたものだった。

海老蔵は、「花見」の大膳は国崩しの凄みが殆ど感じられませんでしたが(海老蔵は悪役が似合わないと思う)、「詮議」の葛城は美しく見栄えしていて悪くなかったです。もっとも国行の死体を検分する演技はイマイチに感じましたけど。ちらっと一見しただけで、とても表面的な演技に見えた。

七之助の籬は、ぽや~んとした梅枝に対して「年の近い、綺麗でしっかりしたお姉さん」という感じで良かったです。腰元の雰囲気もちゃんと出ていたと思いますよ。

そうそう、「詮議」の場で染五郎と勘九郎の二人並んだ姿が、不思議なことにちゃんと親子に見えました。この場面の染五郎、表情はあまり動かさないのに、胸の内で息子を心配する想いが伝わってきて、切なかった。。

あと、愛之助の妻平がとても良かったように思いました。適度に色気も情も落ち着きもあって、カッコよかった。ただそんな愛之助でも、「花見」の立ち回り場面は長すぎて飽きました・・・。

作品自体は好みだったので(詮議からラストまでのあのなんとも表現し難い雰囲気がよいです)、評判のいい吉右衛門さんの伊賀守もものすごく観てみたいと思いました。やってくれないかなぁ。。。


【吉原雀】
二人のセリからの出がカッコイイ
そして、勘九郎。彼の踊りの良さが、今回はじめてわかった気がします。ひとつひとつの動きが歯切れよく、緩急の流れも見事で、観ていて実に気持ちがよかった。
はじめて勘九郎に色気も感じられたよ。舞台セットは『鞘当』と同じなのに、こんなに受ける印象って変わるものなんですねぇ。
先月の『鏡獅子』を観に行かなかったことが、今更ながら悔やまれます。
七之助との組み合わせも、二人の間に漂うベタベタしていないのに不思議と濃密な空気がたまらない。
こんな大人な魅力の中村兄弟を見られるとは予想外でした。

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